堅い菜根もよくかめば、滋養となって心身は健やかになる
王 福振編集(漆嶋 稔訳)「菜根譚 心を磨く一〇〇の智慧」、日本能率協会マネジメントセンター(2009)
お奨め度:★★★★★
菜根譚は「堅い菜根もよくかめば、滋養となって心身は健やかになる」。そのような意味で、名付けられた処世訓であり、400年にわたって、中国に限らず、日本などでも読み継がれてきた。
菜根譚には2種類ある。ひとつは、明朝末期に書かれた「前集」、「後集」からのなる2巻本。これをもとに、加賀前田藩の儒者である林瑜が刊行したもの。もう一つは、清朝時代に出された1巻本で、「修省」、「応酬」、「評議」、「間適」、および、清朝の菜根譚から抜粋をした「概論」の5部からなる本である。この本は、両者から、内容を厳選して抜粋したものになっている。
ほかの菜根譚(ディスカバーのもの)も読んだことがあるが、この本は非常に読みやすいところがよいと思う。購入して、毎日、一項目づつ読んでみてはどうだろうか?
なお、この本に採録されている100は以下のとおり。
【品格を磨く】
評判を気にしすぎない
不注意な一言に気をつける
賞賛をひとり占めしない
色欲に惑わされない
人の心は移ろいやすいと知る
順境では注意深く、逆境では悩まない
過去の過ちを根にもたない
決断は勢いで行わない
私心にこだわらない
自分こそ正しいと思わない
欲深にならない
貧しくても、落ちぶれない
足るを知る
素朴さを大切にする
余計なことは言わない
動に静を見出し、苦に楽を見出す
幸運は平常心がもたらす
陰口を言わない
倹約は程度を考える
ありのままに生きる
【よりよい人間関係を作る】
一歩譲れば日々楽し
柔よく剛を制す
沈黙は金なりと知る
人を褒める
余地を残す
賢い愚か者になる
敵に逃げ道を与える
偽善こそ悪
友情に損得をもちこまない
友は選ぶ
優しく広い心で接する
中庸の心をもつ
能力をひけらかさない
意固地にならない
秘密をうっかり明かさない
甘えは毒となる
ほどほどに生きる
濃すぎず、淡すぎず
人づきあいは中庸に保つ
飾らずに生きる
人づきあいの極意
人との距離を保つ
危機の芽は摘み取る
小人と争わない
【心に安らぎをもたらす】
些事を軽視しない
怒鳴りつけない
叱り諭す
多くを望まない
力は七割にとどめる
問題を予見する
うろたえない
人の評価は晩節で定まる
肉親を利害で考えない
学んで徳を修める
疑い深くならない
人のためになる
恩恵は徐々に与える
威厳を示す
謙譲もほどほどがよい
【正しい道を歩む】
人生に多くを望まない
有能さをひけらかさない
心の重荷を下ろす
短気を起こさない
正直な心を涵養する
心の声に従う
争わず、しつこくなりすぎず
決断は理性に頼る
心静かに暮らす
他人の言葉に惑わされない
成功をあせらない
自制心を保つ
物欲に縛られない
バランスを保つ
善行を積む
この世はまぼろしと考えてみる
因果応報を知る
無我の境地を感じる
【人生を考える】
急がずにゆっくりと歩く
あまり無理をしない
他人に構わず、自分の道を行く
愚者に学ぶ
幸せは足元にあると知る
自らの善事を知らしめない
相対的に考えてみる
不遇のときこそ平然とする
楽しみながら学ぶ
苦境が人を鍛え上げる
相手を打ち負かそうとしない
主体性をもって安穏から脱する
自分で道を拓く
楽天的に生きる
思いどおりにならずともあきらめない
人情の哀しさを知る
乱世にあっては柔軟に生きる
得意絶頂のときこそいい気にならない
人目のないところで自己を律する
間違いの指摘はやんわりと行う
名誉を欲しがらない
迎合を慎む
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