« ワークショップを極める! | メイン | 勝間和代の頭の中を覗く »

2008年6月20日 (金)

これから求められる思考法と思考ツール

この10年間くらいで、ロジカルシンキングの普及など、静的で(時間の推移を考えない)定性的な思考方法というのはずいぶん、定着してきたように思うが、その限界を感じている人は多い。いくら情報を集めてきても、時間的な視点を入れず、また、抽象化しないのでは、そこから導けることは限られている。

やはり、定量的な思考方法や、数理的な思考方法、あるいは時間の視点を取り入れたダイナミックな思考法というのはビジネスには欠かすことができない。その中でもっとも関心が高いのはおそらく動的な情報を取り扱う思考法としてのシナリオプラニングと、数理的な思考法としてのゲーム理論であろう。これらについては、書籍も結構、出版されてきた。

シナリオプラニングは2年くらい前にこのブログで特集したことがあるが、結構、実践で使える本がたくさん出ている。

シナリオプラニングめったくりガイド

この後も、何冊かよい本がでている。たとえば、この本などはよく売れているらしいし、読みやすいよい本だ。

4903241785生方正也「シナリオ構想力 実践講座」、ファーストプレス(2008)

定量的思考法の分野でもベストセラーが出てきた。この本。

490324153x福澤 英弘「定量分析実践講座―ケースで学ぶ意思決定の手法」、ファーストプレス(2007)

この本が売れているのは画期的だし、大変、意味深いことだと思う。日本の平均像のマネジャーを米国のマネジャーと比較すると一番弱い点だと思うからだ。中高生の国際学力ランキングが示すように、数学力が弱いわけではない。にも関わらず、定量的な思考ができない。このギャップの一番の問題はモデル化の能力だと思うが、この本はそこを補ってくれるたいへん、よい 本である。

さすがにこの本ではハードルの高い人が多いのか、最近では、数字と現実世界の結び付けにフォーカスした本が出てきた。ちょうど、定量的な思考方法と、数理的な思考方法との中間に位置づけられる内容である。

ひとつは、地頭力という言葉を作りだし、フェルミ推定を世の中に知らしめた

細谷功「地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」」、東洋経済新報社(2008)

で、大ヒット本らしい。最近、もうすこし、ハウツー本っぽく書かれた

4479771131細谷 功「いま、すぐはじめる地頭力」、大和書房(2008)

も出版されるくらい、注目されているようだ。また、この分野で、ビジネスに近いところでもう一冊よい本がでてきた。

4887596219小宮 一慶「ビジネスマンのための「数字力」養成講座」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)

この本は、ビジネスの中のいろいろな問題を数字を使って対処していく方法を簡潔にまとめた本。

この2冊に加えて数字に対する感覚を養うだけなら、この本がお薦め。

4004310636畑村 洋太郎 (著) 「数に強くなる」、岩波書店(2007)

地頭力というのはむしろ、こちらかもしれない。

さて、前置きが長くなったが、このようなことで最後まで残っているのが、数理的なアプローチ。どうもここは理系の領域だと思っている人が多いのか、やたらと難しい本が多い。ゲーム理論だけではなく、オペレーションズリサーチを文系の人が読める本がでないかとずっと待っているのだがでてこない。そんな中で、ゲーム理論については、これと思える本が 出てきた。

453404402x 清水武治「もっともわかりやすい ゲーム理論」、日本実業出版社(2008)

出版社の日本実業出版社は日本で一番売れている西村さんのプロジェクトマネジメントの本とか、ORかの本を結構出しているので、ノウハウがあるのだと思うが、この本は編集が素晴らしい。ゲーム理論を事例をうまく使って説明した後で、少し、いろいろな議論をして、問題の本質やなぜ、その理論が必要を理解させ、そして最後に解説をするという手法をとっている。事例と解説は他の本でも読めると思うが、この流れはその前は今までになかった説明だと思う。たとえばナッシュ均衡の章を見ても、これまで読んだ本の中で、もっとも応用がイメージしやすい本になっている。

この本に触発されて、また、よいゲーム理論の本が出てくることを期待したい。

【もっともわかりやすいゲーム理論の目次】

Part1 ゲーム理論への案内
Part2 ゲーム理論の基礎を押さえよう
Part3 ゲーム・モデルをつくる
Part4 ゲームの「支配戦略」を見極める
Part5 支配戦略がないゲームの答えを導く「ナッシュ均衡」
Part6 最適反応だが最大の利得を得られない「囚人のジレンマ」
Part7 共有地の悲劇は「囚人のジレンマ」の社会版
Part8 囚人のジレンマを克服する「繰り返しゲーム」
Part9 フリーライダー問題を解き明かす「合理的なブタ」モデル
Part10 「ゲームの木」で難問を解決する
Part11 「戦略的操作」で相手を意のままに動かす
Part12 自分の選択を狭めて戦略的な価値を高める「コミットメント」
Part13 「約束」を見極めて有利な展開を考える
Part14 戦略的操作の信ぴょう性を検証する
Part15 すべての余剰を取れる「最後通牒」
Part16 余剰が減るスピードが決め手となる多段階交渉
Part17 不確実ならリスクが高い
Part18 情報完備・情報不完備ゲームというキー
Part19 プリンシパルとエージェントの深遠な関係
Part20 ゲーム理論を実戦に生かす

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://bb.lekumo.jp/t/trackback/605869/31150305

これから求められる思考法と思考ツールを参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

PMstyle 2024年4月~7月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

アクセスランキング

カテゴリ

Powered by Six Apart

Powered by Google

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google