要件を中心にしたプロジェクトマネジメント
スザンヌ・ロバートソン、ジェームズ・ロバート( 河野正幸訳)「ソフトウエアの要求「発明」学 誰も書かなかった要求仕様の勘違い」、日経BP社(2007)
お奨め度:★★★★1/2
SIプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントの導入が一段落して、開発プロセスの問題がはっきりしてきた。一つは古くて新しい話題である見積もりの問題であり、もう一つが要求分析・要件定義の問題である。
本書は後者に対して、有効な一つのアプローチを解説した本である。この本では、要求はユーザが持っているものをうまく定型化するのはなく、ぼんやりとしかないものを「発明」するものだとしてそのために有用な考え方や手法を紹介している。
また、要求に対して「マネジメントする」という考え方をとり、測定や測定に基づくマネジメントの方法を述べている。
同様のアプローチとして最近注目されているのが、マインドマップを使ったアプローチであるが、マインドマップを使ったアプローチも含めて、本書で示されている枠組みの中で、今までの要求分析の活動を体系化することができるのではないかと思われるし、それは大変意義のあることだろう。
ちなみに、この本の邦訳はソフトウエアがついているが、原題は「Requirements-Led Project Management」である。全般的に書かれていることは、顧客中心プロジェクトマネジメントに近く、基本的にどのような分野のプロジェクトでも使うことができるのではないかと思う。本書でも指摘されているように、この本で主張しているやり方は「iPod」やアマゾンもやっているやり方だとしているように、特に、商品やサービス開発のプロジェクトに取り入れるとよいのではないかと思われる。
その意味で、使われている例にソフトウエア分野でしかわからないものがあるが、他の分野のプロジェクトマネジャーにも読んでほしい一冊だ。特に、コンセプトデザインの仕事に従事している人に読んでほしい。
また、本書に併せて本でほしいのが、この本
エレン・ゴッテスディーナー(成田光彰訳)「要求開発ワークショップの進め方 ユーザー要求を引き出すファシリテーション」、日経BP社(2007)
実際に要求の「発明」をしようとすれば、何らかの機会が必要である。その機会としては従来行われていたような要求分析の方法だけでは十分ではなく、創発的な場が必要だと思われる。その点において、こちらの本に書かれている要求開発ワークショップは現実的な方法だし、書籍そのものもワークショップの進め方を細かな注意点まで含めて実践的に書いている良書だ。発明に役に立つこと間違いなしの一冊である。
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