PMstyle 2025年9月~12月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

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2006年3月24日 (金)

プロジェクトを手の内に入れる(2)

◆プロジェクトを手の内に入れる3つの条件

プロジェクトを手の内にいれるには、まず、プロジェクトがどのような特性を持っているか、そして、どのような状態にあるかをよく知る必要がある。そして、うまく変えられる必要がある。この3点である。

◆プロジェクトの特性を知る

プロジェクトの特性を十分知るにはプロジェクトの分析が必要である。プロジェクトの特性とは

・戦略的な重要性
・市場的な重要性
・技術的な新規性
・プロジェクトリスク、あるいはビジネスリスクの大きさ
・期間の長さ

といったものを指す。プロジェクトマネジャーからみれば、これらは既にそのプロジェクトを任された時点で決まっていることの方が多い。しかし、仮に決まっていたとしてもプロジェクト憲章などのドキュメントを分析し、自らの認識を作っておく必要がある。

重要なことはこの点も踏まえて、プロジェクトの収益構造をよく理解しておくことである。最も単純な話は、そのプロジェクトのROI (return on investment) である。請負プロジェクトの場合には収益そのものになる。ROIを踏まえて、プロジェクトに許可された予算の意味を理解することが重要である。ROIを理解していてはじめて、計画から逸脱した場合に適切な判断を行うことが可能になる。

◆プロジェクトの状態を知る

第2は、プロジェクトがどのような状態にあるかを知ることだ。プロジェクトの状態を知るには、しっかりとした計画があり、計画に対してどのような状態にあるかをきちんと計測できる必要がある。プロジェクトの状態として把握しておきたいものはいくつかある。一つはQCDであり、二つ目はスコープである。そして、3つ目はリスクである。いずれも、計画に対してどうだという視点で現在の状態を理解できる。

◆プロジェクトのダイナミックスを知る

3つ目はうまく変えられることである。つまり、計画変更を適切に行うことだ。そのためには、前に述べた2つの点がきちんとできていることが条件になる。つまり、プロジェクトの特性を知り、状態を知っていること。

その上で、プロジェクトのダイナミックスをよく理解しておくことが必要である。例えば、スケジュールを例にとれば、スケジュールが徐々に遅れている場合と、いきなり遅れ始めた場合には、当然、原因的なものが違うし、対処(変え方)も変わってくる。例えば、PMBOK概念に是正という概念があるが、是正をするかしないか、あるいは計画変更をするかは、単に閾値を超えたかどうかというような視点だけでは判断できない。上に述べたようなダイナミックスをきちんと把握した上で判断し行動できてはじめて手の内にいれているといえよう。

このように考えてみると、プロジェクトを手の内にいれる、つまり、適切にコントロールしようと思えば、そのプロジェクトに本気にコミットメントしないと難しいことが分かる。プロジェクトに限らず、自分の仕事に対して、このような対処ができることはプロフェッショナルとしては当たり前のことかもしれない。

◆プロジェクトを手のうちに入れるには

製品開発プロジェクトをフォーカスし、プロジェクトを手の内に入れるというテーマのセミナーを行います。

 売れる商品を作るプロジェクトマネジメントとは
  http://www.pmstyle.biz/smn/20060227.htm

2006年1月21日 (土)

プロジェクトを手の内に入れる(1)

◆キーワードは「手の内に入れる」

PMBOKのプロセスの中にControlというプロセスがある。日本語版では管理・統制と訳している。プロジェクトをコントロールするというのと、統制するというのは日本語とはちょっとニュアンスが異なっているように感じている。

プロジェクトがきちんとコントロールできているとは、日本語でいえば、「手の内に入る」というの表現が適切だと思う。手の内に入るというのはどういうことか?

手の内に入れるという言葉はいろいろな局面で使われる。もっともよく使うのは、競馬の世界かもしれない。競馬の世界では「馬」を手の内に入れるということが言われる。これは

馬の性格や脚質を熟知し、自由自在に御すことが出来るようになること

である。馬が道具だというと、競馬ファンはけしからんということになると思うが、道具を手の内に入れるというのもよく使われる。たとえば、センサーを手の内に入れるという言い方をすることもよくある。センサーの特性を熟知し、精度の高い計測を可能にすることだ。もう少し、規模の大きいところでは、自動車やプラントを手の内に入れるとかいう言い方をする。これもやはり、馬やセンサーと同じ意味合いである。ほかにもチームを手の内に入れるという使い方をすることもある。これはチームビルディングを意味していることが多い。

また、生殺与奪を手の内に入れるという表現もあるし、人を手の内に入れるという言い方をする人もいる。さらにいえば、企業の経営を手の内に入れている経営者もいる。

◆熟知し、自由自在に御する

このように対象は何であれ、対象を熟知し、自由自在に御すことができることを手の内に入れるという。ここで注意してほしいのは、馬にしても、センサーにしても、デジタルには動かない部分があることだ。その意味での不確実性を持っており、その不確実性を熟知し、自由自在に御すことができるようになることを手の内に入れると表現している。コントロールするとはそういうイメージである。

プロジェクトマネジメントでコントロールという言葉が真っ先に出てくるのは、リスクである。リスクをコントロールするとはどういうことか。以前、戦略ノートでも書いたことがあるが、アイスバーンの上を車をスリップを御しながら運転する。これがリスクをコントロールするという意味だ。つまり、リスクをコントロールするとは、さまざまな「リスク事象」について熟知し、自由自在に御すことであるといえる。

◆プロジェクトを手のうちに入れるとは

「プロジェクトをコントロールする」ことも同じように捉えることができる。プロジェクトについて熟知し、自由自在に御すことである。さて、これはどう解釈すればよいのだろうか?いくつかの側面があるだろう。

まずは、自由自在に納期やコストの設定を自由自在に行えることである。もちろん、トレードオフバランスの範囲内であるが、これは理屈の上では容易であるが、結構、難しい。たとえば、チームやメンバーの特性を把握していないとこんなことはまずできないし、パフォーマンスのマネジメントがうまくできないとやはりできない。

たとえば、こんなことを考えてみてほしい。あなたの担当する製品開発に対して、設計作業に入った後で、競合の動向がわかり、予算を50%増しするので、製品発売時期を3ヶ月前倒しにしてくれという指示があったとしよう。もし、50%と2ヶ月のバランスが取れているなら、このような要求に確信を持って応えられるだろうかという課題である。

プロジェクトマネジャーとしては、ぜひとも、プロジェクトを手の内に入れることができるだけのスキルを身につけていきたいものだ。

では、プロジェクトを手の内に入れるにはどうすればよいか?

(2)に続く。

by 好川哲人

◆関連セミナー

 製品開発プロジェクトマネジメントセミナー
  ~売れる製品を作るプロジェクトマネジメントとは~

    http://www.pmstyle.biz/smn/20060227.htm

2005年10月17日 (月)

プロジェクトマネージャーのミッションを明確に!

◆プロジェクトマネージャーのミッションは意思決定

今年の秋は、例年にも増して多くのプロジェクトマネジメントのイベントが開催されています。企業の中でも、スコープだとか、WBSだとか、一昔前では聞かなかったような用語が普通に使われるようになってきており、いよいよ、プロジェクトマネジメントが普及をしてきた感があります。同時に、優秀なプロジェクトマネージャーの育成が急務になっています。

しかし、ここで考えてみたいことがあります。それは、本当にプロジェクトマネジメントはプロジェクトマネージャーだけでうまく行くのかという点です。プロジェクトの規模や性格、業界によっても違いますので、一概に言えない部分がありますが、一つだけいえることがプロジェクトマネージャーの本来の仕事は意思決定をコミュニケーションであるということです。

逆にいえば、組織としてはプロジェクトマネージャーが意思決定を行うことを支援する、あるいは、行った意思決定を支援するという部分を抜きにしてはプロジェクトマネジメントはうまく行きません。

日本の組織には昔から、若い人が実務をし、マネージャーは雑用をするという慣わしがあります。その文脈の中でコミュニケーションの重要性も語られてきました。人間関係の構築を主目的としたコミュニケーションであり、プロジェクトマネジメントでいう信頼関係構築を主目的としたコミュニケーションとは微妙に違います。このことの是非は議論しませんが、レールが引かれた上を歩いてきた高度成長期にできた慣わしであり、このような混沌とした時代には通用しません。ましてや、プロジェクトのように不確実性が大きい仕事では通用しない考え方です。

そこで、上に述べたようなプロジェクトマネージャーのミッションが出てきますし、また、その職務を全うして貰うための支援が必要になるわけです。

◆どのような支援が必要か?

プロジェクトがどれだけの成果を上げることができるかは、プロジェクトマネージャーの働きにかかっています。つまり、プロジェクトマネージャーがどれだけ適切な判断をし、どれだけコミュニケーションをできるかで、プロジェクトの成果は変わってくるのです。

では、プロジェクトマネージャーにできるだけよい仕事をして貰うためにはどうするか?組織としての支援が欠かせません。組織が支援する形態はいろいろあります。

プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)がある組織であれば、ある部分はPMOが支援し、ある部分はラインが支援するというスタイルがあります。また、PMOがなければラインが中心になって支援することになると思います。また、大規模プロジェクトによく見られるように、プロジェクトの中にプロジェクトマネジメントチームを作ってそのチームでプロジェクトマネージャー(複数の場合もある)の支援を行うというケースもあります。

このように形態は異なりますが、いずれにしても、プロジェクトマネージャー、あるいはプロジェクトに対して行うべき支援は比較的共通性があります。それを機能としてみると、「プロジェクトマネジメントオフィス機能」ということになります。

by 好川哲人

◆関連セミナー

 事例にみるプロジェクトマネジメントオフィスの役割と機能 

     http://www.pmstyle.biz/smn/pmo2.htm

2005年10月16日 (日)

事例にみるプロジェクトマネジメントオフィスの役割と機能

このセミナーでは、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の役割、基本的な機能について解説するとともに、その設計について事例に基づいて解説します。

このセミナーではまず、PMOに考えられる機能にはどのようなものがあるかを総ざらいし、5つのカテゴリ、20の機能に整理します。

その上で、

1)実際のPMOはその中のどのような機能を実現しているか
2)それぞれの機能は現実にはどのように実現されているか

の2点について、9社の事例を用いて説明していきます。
また、いくつかのポイントについては、簡単な演習を通じて、自社においてどのように実現すべきかを考えていただく時間もつくります。
PMOの構築に従事されている方、PMOの改善に従事されている方に、お奨めのセミナーです。

◆セミナーURL

事例にみるプロジェクトマネジメントオフィスの役割と機能

http://www.pmstyle.biz/smn/pmo2.htm

by:プロジェクトマネジメントオフィス

2005年9月 5日 (月)

あなたはPMコンピテンシーを意識していますか?

今、現実にプロジェクトマネージャーをやっている人に、これからもプロジェクトマネージャーをやりたいですかと尋ねると、10人に6~7人はやりたいという返事が返ってきます。その理由として圧倒的に多いのが、「やりがい」です。

あまり意識している人はいませんが、ソフトウエア業・情報処理サービス業では、資本金3億円以下または従業員300人以下の企業を中小企業といいます。ですから、中小企業を経営するのに匹敵するようなプロジェクトマネジメントというのも決して珍しくないわけです。その意味でも、やりがいを感じるというのは納得できます。

好川の知人で、企業でプロジェクトマネジメントの修行を積んだ後に、親の跡をついで企業の経営をやり、あっという間に会社を数倍にした人を2名ほど知っています。彼らのやったことはプロジェクトマネジメントのやり方で企業を経営するということでした。このような事例を見ても、企業経営とプロジェクトマネジメントは通じるところがあることは明らかです。特に、ベンチャービジネスのように短時間で成否が決まってしまうような企業ではプロジェクトマネジメントは必須かもしれません。

さて、プロジェクトマネージャーとして成長していくには何が必要なのでしょうか?われわれは、

 スキル(ハードスキル、ソフトスキル)
 コンピテンシー
 マインド

の3つの資質が必要だと考えています。

ハードスキルはいわゆる知識、ソフトスキルはヒューマンスキルや思考法です。コンピテンシーはスキルを持っている人が状況に応じてスキルを発揮することができる「行動力」です。そして、3つ目のマインドは、必ず、目的を達成するという「意志力」です。

このうち、ハードスキルについては、PMBOKなどの勉強をすれば身につけることができますが、それ以外はプロジェクトマネージャーとして活動していく中で経験により身につけたり、また、必要に応じた学習により身につけたりしていかなくてはなりません。

さらに、プロジェクトマネジメントに必要なマインドを身につけるためには、「ゆとり」を確保し、考える時間を持つことが不可欠です。

プロジェクトマネージャーとして成長していくには、プロジェクトマネージャーとしてやっていく覚悟を決め、その上で、継続的に上に述べたような行動力や意志力の向上に努めていかなくてはなりません。

それは長い道のりですので、まず、自分の中でゴールを決め、そのゴールにたどり着くためのマップをつくり、そして歩き出すことが必要です。

pmstyleでは、このようなニーズにお応えするセミナーを実施しています。それが、PMスタイル発見ワークショップとして行っている

プロジェクトを成功させるリーダーのマインドとスキルを知る

です。

このセミナーでは最初に、弊社が開発し、多くの企業で適用されているPMコンピテンシーチェックとPMスキルチェックを受けていただきます。これを午前中にやっていただき、お昼休みの間に判定し、午後の最初にお返しします。

そして、自分の立ち位置を意識していただいた上で、上に述べた3つの要素についてポートフォリオを提示し、そのポートフォリオによって、自分の成長戦略を決めるという作業をしていただきます。

このセミナーはこれからプロジェクトマネージャーになろうという方にお奨めですが、4~5年、プロジェクトマネジメントを経験して、この辺でもう一度たな卸しをして、スケールアップを図ろうという方にもお奨めできます。同じセミナーの中で、初心者の方とは異なる知見が得られると思います。

このセミナーは弊社としても戦略的位置づけをしており、このセミナーを受けて、自身の育成計画を作っていただき、その後、弊社の提供するセミナーを受けて戴ければと思っています。このため、1日のセミナーで1万5千円(税別)という価格で提供しています。この価格で、コンピテンシーのチェックも含まれていますので、大変、お得なセミナーです。

どうぞ、お気軽にご受講ください。

2005年8月25日 (木)

ゆとりをもって仕事をしよう(3)

好川がプロジェクトマネジメントの必要性を語るときによく使う例で

 スケジュールが遅れる
  → あせる
    → ミスが重なる
      → ますます、スケジュールが遅れる

 スケジュールが遅れる
  → あせる
    → 残業をする
      → 疲れ、生産性が下がる
       → ますます、スケジュールが遅れる

 予想外の技術的問題がでてくる
   → あせる
    → 冷静に問題解決ができなくなる
     → 解決できる問題も解決できなくなる

といった例があります。いずれも(悪)循環の例なのですが、プロジェクトマネジメントの本質は、悪循環を起こさないようにプロジェクトを粛々と進めること、あるいは、もう少しシニアなプロジェクトマネジメントであれば、個人やチームの中に好循環を引き起こすことだと言えます。

実は悪循環と好循環は紙一重で、その間にあるのが「ゆとり」です。例えば、スケジュールが遅れているときにでも

 ゆとりを持っている<くさび>
  → 冷静に対処方法を考えられる
   → リカバリーの方法を見つける
    → スケジュールを是正できる

となるわけです。つまり、あまり、好ましくない状況で<くさび>となり、状況を反転するのが「ゆとり」です。

ゆとりというと「物理的な時間」だと考えている人が多いようで、そんなのは無理だということになってしまいます。しかし、決してそんなことはありません。例えば、こんな経験をしたことはありませんか?

あるお客さまと業務契約をしたが、初期の計画策定の対応がいろいろな社内調整で遅れ、お客さまから催促をされてやっと約束の期限に間に合った。その後は、ずっとお客さまのペースで、進んで、スコープの確認作業などでイニシャティブをとられ、結果として、スコープクリークが興り、まったくゆとりのないプロジェクトになってしまった

このケースのように、「ゆとりがない」という症状は精神的なものから始まり、それが物理的な症状を生み出すケースが多いのです。ところが精神的にゆとりがない段階では実害がないのであまり真剣に対応しません。忙しいと文句を言いながら、なんとかこなしていきます。

ところがそのうちに本当に物理的な問題が発生して、時間的にゆとりがなくなってしまいます。時間的な問題になる前に、原因を断ち切って精神的なゆとりを持っておく必要があります。これをうまくやれば、好循環に持ち込むことができます。

by 好川哲人

◆関連セミナー

 プロジェクトにゆとりをもたらす5つの法則 

 http://www.pmos.jp/juku/regular/pmp-slack.htm

2005年8月19日 (金)

ゆとりをもって仕事をしよう(2)

弊社ではコンサルティングの中に、エスノグラフィーに取り入れている。エスノグラフィーについては、こちらを参考にしてほしい。

ある年に、CADを開発している企業(部門)で、5ヶ月をかけて延べ18日間のエスノグラフィーを 行ったことがある。テーマはプロジェクトマネージャーの仕事とコンピテンシー。書いたものは門外不出なのだが、非常に多くのことが分かった。まさに、百聞 は一見にしかず。

この仕事では、CADのカスタマイズをする、ほぼ、同条件の2つのプロジェクトのエスノグラフィー。観察対象はプロジェクトAとプロジェクトB。双方とも期間は3ヶ月。要員数は両方とも6~7名。

プロジェクトAはほとんど計画通りに進んだ。プロジェクトBは2ヶ月目の要件を確定する時期にすでに10%のスケジュール遅れが生じた。最終的に、Bは5ヶ月の期間を要した。

この2つのプロジェクトを見ていると面白いことに気づいた。メンバーのスキル、プロジェクトマネージャーの力量はほとんど変わらない。申請している 残業時間、実態の残業時間もほとんど変わらない。つまり、両方とも、同じくらいの忙しさで仕事をしていたことになる。お客さんは直接の観察の対象にできな かったためはっきりしないが、インタビューをする限りでは、お客さんもそんなに変わらない。ところが、成果に差が出た。

顕著に違った点が1点。この会社では朝、朝礼をすることがルールになっている。プロジェクトAは朝礼を非常に丁寧にやっていた。プロジェクトBは形 式的に5分程度で週に1回進捗会議をやっていた。プロジェクト期間が3ヶ月目に入ることにそれぞれのメンバーに対して、プロジェクトの内容に関するインタ ビューを試みた。Aは各メンバーがそれなりに何をやっているかを知っており、プロジェクトマネージャーの思惑やプロジェクトの目的もよく理解していた。B は1名を除くとほとんどできていない。

見た目に、Aのメンバーは余裕を持って仕事をしている。朝礼で時間がかかる場合でもしっかりとした議論をしている。他のメンバーの予定に変更があってもほとんど手待ちをすることなく、自分のスケジュールの修正をしている。

ところがBの方は、バタバタ。何か変更があろうものなら、みんなが走り回る状態になる。普段もまったく余裕がない。追い詰められたような雰囲気で仕事をしている。

この2つの差はどこにあるのだろうか?はっきりしているのは、Aプロジェクトはそれぞれのメンバーに全体の動きが見えている。その上で、自分の判断で毎日どのように行動すべきかを決定している。自立するとはそういうことだ。

Bはメンバーに全体の動きが見えていない。したがって、すべての変化は突然やってくるので、その対処に追われる。

結果として現れるのは大きな違いであるが、実はこの違いはそんなに大きな違いではない。プロジェクトマネジメントの概念に「プロアクティブ」という概念がある。日本語でいえば、先手必勝。最初の手が自分から打てるかどうかの違いである。

プロジェクトAのプロジェクトマネージャーはメンバーの先手必勝をうまく演出している。プロジェクトBのプロジェクトマネージャーはそれがあまりう まくできていない。その違いだ。先手必勝によりゆとりが生まれる。ゆとりはゆとりを生み出す。その原資となるゆとりを如何に生み出すかがプロジェクトマ ネージャーのスキルである。

このような議論をするときにメンバーの資質を問題にする人が必ずいる。つまり、誰でも同じように先手必勝で動けるわけではないという議論だ。それはそのとおりだと思う。

しかし、もうひとつ忘れてはならないことがある。それは、「ゆとりがゆとりを生む」というのは個人の話にとどまらない。チームの話でもある。すなわ ち、チームのあるメンバーのゆとりは、別のメンバーにもゆとりを生み出す。経験的に、非常に優れた人材がメンバーにいるチームはモチベーションのコント ロールさえうまくできていれば、他のメンバーの生産性があがる傾向がある。優れたメンバーに過度に依存するのは、モチベーションがうまくコントロールでき ないためである。これもまた、プロジェクトマネージャーの仕事であろう。

by 好川哲人

◆関連セミナー

 プロジェクトにゆとりをもたらす5つの法則 

 http://www.pmos.jp/juku/regular/pmp-slack.htm

ゆとりをもって仕事をしよう(1)

個人で言えばスキルアップ、キャリアデザイン、プロジェクトチームで言えば、チーム育成、組織でいえばプロセス改善と、さまざまなレベルでのパフォーマンス改善に強い関心が払われるようになってきた。

しかし、どれをとってみてもうまく行っている企業や組織はまれである。

その原因を考えてみたときに、行き着くのが「忙しい症候群」である。誰もが忙しい。よって、そんな先のことを考えている暇はない!

しかし、忙しいといって逃げ回っている限り、より忙しくなることはあっても、忙しさが改善されることはない。ハムスターの「まわし車」のごとく、そこから降りない限り、回り続けなくてはならない。

そこで、あなたに考えてほしいことは、ゆとりを取り戻す工夫である。

あなたがラインのマネージャーであれば、部下のゆとりを取り戻し、部下の成長の第一歩を提供しよう。

あなたがプロジェクトマネージャーやチームリーダーであれば、メンバーのゆとりを取り戻し、チームのパフォーマンス向上の第一歩を踏み出そう。

あなたがプロジェクトのメンバーであれば、自分自身の成長のために、立ち止まり、振り返る時間を作る工夫をしよう。

セミナー「プロジェクトにゆとりをもたらす5つの法則」

プロジェクトといえば、短期決戦としてテンションを上げ、数多くの難題を乗り切っていくというイメージが強い。プロジェクトXなどは、まさにこのイメージである。このようなプロジェクトの進め方は、日常業務がプロジェクトの連続であるようなケースには適さない。

一方で、プロジェクトXにならないためにプロジェクトマネジメントがあるのだと主張するプロジェクトマネジメント信奉者も多くの場合、問題を管理するためにプロジェクトマネジメントを使っているが、問題解決の部分は厳しい環境の中でメンバーにゆだねられることが多く、結果としてうまく行かないケースが多い。

このように考えてみると、問題の本質に「ゆとり(Slack)」のなさがあるように思える。

この問題提起に対して、多くの人は、そもそも、納期を考えても、コストを考えても、プロジェクトに余裕という言葉など考えられないという。しかし、結果としてみれば、多くのプロジェクトは「ムダ」な時間を使っている。手戻り、スコープ変更など、いろいろである。

プロジェクトで「仮に」といっても後の祭りだが、仮にこれらの時間をプロジェクトの作業の改善に当てていれば、納期遅れを起こさなかっただろういう話はプロジェクト終了後の振り返りに中で実によく出てくるのだ。

そして、それができない大きな理由に「ゆとりのなさ」がある。

ゆとりが作れない理由はさまざまであるが、いろいろなケースのひとつだけ共通していえることは「悪循環」を起こしているということだ。それが、どんなプロジェクトであり、一旦、悪循環を起こすと、問題解決が新たな問題を生み、どんどん、ゆとりがなくなってくる。

セミナーでは、この悪循環を断ち切るための5つの法則とその法則の実践例(プラクティス)を紹介する。紹介する5つの法則とは以下のようなものである。

1.リアリティのある計画を作る
2.プロジェクトの余裕時間をチームの共有財産とする
3.合理的にプレッシャーをかける
4.チームビルディングに十分な時間をかける
5.リスクを適切に管理する

この5つの法則を適用すれば、あなたのプロジェクトにもゆとりが生まれることは間違いない。しかし、この法則の適用そのものがゆとりのない状態では難しい。セミナーでは、そのようなジレンマの中で、第1歩を踏み出すにはどうすればよいかについても解説する

◆セミナーURL

プロジェクトにゆとりをもたらす5つの法則

http://www.pmos.jp/juku/regular/pmp-slack.htm

by:プロジェクトマネジメントオフィス

2005年8月 3日 (水)

セミナー「メンバーとしてのリスク管理」

プロジェクトを計画するのはプロジェクトマネージャーやチームリーダーのプロジェクトマネジメントチームですが、その計画を実行するのはメンバーです。

プロジェクトの成功には、メンバーがプロジェクト計画を理解し、確実にプロジェクト計画を実行する力「メンバーシップ力」が必要です。

本セミナーでは、確実にプロジェクト作業を実行し成果を上げることができるように、リスクに対する考え方であるリスクマインドを身につけることを目標としています。
メンバーはプロジェクトの最前線で作業を行っています。つまり、プロジェクトに対して影響を与えるリスクというものを最も身近に感じることができるはずです。そのリスクの発生をどれだけ早くキャッチできるかによって、プロジェクトの成否は大きく変わります。

もちろん、メンバーはバラバラなことを考えてバラバラなことを行うのでは、プロジェクト全体としての成果は出ませんので、プロジェクト計画にしたがって、同じ方向を向いて計画を実行していきます。その中で、自分の作業について、リスクの観点からもう一歩進んで、考えて見ませんか。
メンバーシップ力を向上させたい方のご参加をお待ちしています!!

◆セミナーURL

メンバーとしてのリスク管理

http://www.pmos.jp/juku/membership/pmm-risk.htm