ソフトウエアエンジニアリング Feed

2007年3月25日 (日)

ITスキル標準はITエンジニアを幸せにするか?

4798111821_01__aa240_sclzzzzzzz_ 高橋秀典「ITエンジニアのための【ITSS V2】がわかる本」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★1/2

ITスキル標準について日本でもっともよく知っているスキルスタンダード研究所の高橋代表の著書。

ITスキル標準自体はその名のとおり標準であり、どのように活かすかは顧客側に任されており、さまざまな活用方法が考えられる。製品開発のグルである東京大学の藤本隆宏先生の言葉を借りると、非常に多義性の高い標準である。多義性の話に興味がある方は、ぜひ、こちらの本を読んでみてほしい。

453231139x_09__aa240_sclzzzzzzz_ 藤本隆宏「日本のもの造り哲学」、日本経済新聞社(2004)

ITスキル標準のひとつの顧客であるIT系の企業や、情報システムオーナー企業はこの多義性を背景に、自社に如何に適用するかを一生懸命考えている。相応なリソースを使って研究し、構築をしている。

ところがITスキル標準には、もうひとつの重要な顧客がある。IT業界で働くエンジニア、コンサルタント、インストラクター、営業マンなどである。こちらの顧客に対しては、派遣業などが若干、自社の事業の枠組みの中で支援をしているが、それ以外には、あまり、手当てがされていないのが現状である。

そのような状況の中で、企業にとっての活用だけではなく、個人にとっての活用方法お、本という個人にとって利用しやすい形で、非常に見識のある人が書いた本としてこの本は評価できる。どうすれば、ITスキル標準を有益に使えるかという視点から書かれた唯一の本だといってもよいだろう。

ただ、残念ながら、本書では、組織の議論と個人の議論の接点や統合があまり明確になっていない。藤本先生のいわれる多義性の解消ができない限り、個人も幸せにならないし、とくにSIのような知識労働集約型のビジネスをやっている企業の業績はよくならないだろう。

IT業界というのはCSとESがばらばらの施策として行われている企業が多く、そのため、キャリアにおける組織の利益と個人の利益の現実的な統合がなかなか、見えてこないのだと思うが、ぜひ、この点をぜひ明確にしてほしいと思う。

さらには、3番目の顧客である顧客のビジネスオーナーに対する考察もほしい。この2点が加われば、さらに意義深い本になるだろう。

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2006年6月20日 (火)

ソフトウエアメトリクスを学ぼう

482228242201 ローレンス・H・パトナム「初めて学ぶソフトウエアメトリクス~プロジェクト見積もりのためのデータの導き方」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★

ソフトウエアメトリクスの入門書。しかし、本格的。

「プログラム規模」「時間」「工数」「信頼性」「生産性」の5つのメトリクスに注目し、その相関関係を分析している。そして、メトリクスをソフトウエア開発プロジェクトの見積にどのように使うかを議論している。難易度はそんなに高くないので、ソフトウエアエンジニアリングの知識がなくても読める。

一方で、6300件のプロジェクトのデータを分析しており、実践的である。これからメトリクスの勉強をする人にはお奨めの一冊である。

ソフトウエアメトリクスに関しては古くから、米国で名著が多い。古典的な名著といえば、なんといっても、

432009722x09 ケーパー・ジョーンズ「ソフトウェア開発の定量化手法」、構造計画研究所(1998)

である。初版が1993年に出版され、始めて、ファンクションポイント(FP)法を解説した本として注目を浴びたが、FPだけではなくソフトウエアメトリクス全般に非常に示唆にとんだ本である。その後、1998年に改版されている。このバージョンの翻訳がこの本。

この分野では、2000年以降、CMMIの普及やWeb環境の普及など、従来のメインフレーム系、オープン系とは事情が変わってきたが、今、読んでもいろいろな示唆がある。

ISO/IEC15939とCMMIを前提にしたメトリクスをまとめた本としては、

432009741609 John McGarry「実践的ソフトウェア測定」、構造計画研究所(2004)

がある。この本は、ISO/IEC15939ソフトウェア測定プロセス規格の制定に直接関わってきた実務レベルの業界リーダ達が書き下ろしたソフトウェアの測定とプロセスおよびプロダクト改善の実践ガイドブックである。メトリクス本では、これが最もお奨めである。

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2006年6月14日 (水)

デスマーチ

4901280376 エドワード・ヨードン(松原友夫、山浦恒央)「デスマーチ──なぜソフトウエア・プロジェクトは混乱するのか」、シイエム・シイ(2001)

お奨め度:★★★★1/2

ソフトウエアプロジェクトがなぜ、失敗するのかを、プロジェクトをシステムとして捉えて、悪循環の構造について分析した名著。デスマーチという言葉は非常にインパクトがあり、流行語にもなった。

この本ではデスマーチプロジェクトとして、

 ・与えられた期間が、常識的な期間の半分以下である
 ・エンジニアが通常必要な半分以下である
 ・予算やその他のリソースが必要分に対して半分である
 ・機能や性能などの要求が倍以上である

といったことがあげられており、そのようなプロジェクトへの対処方法が述べられている。心当たりがある人は、とりあえず、読んでみよう!

なお、2006年に第2版が同じ著者、同じ訳者で、日経BP社から出版されている。ただ、第2版であるが、違う本ではないかと思うくらい違う。僕は第1版の方が価値があるのではないかと思う。

482228271601

デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか」、日経BP社(2006)

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2005年6月 2日 (木)

日本のソフトウエアエンジニアリグの夜明けはくるか

4822207951 情報処理推進機構ソフトウェア・エンジニアリング・センター、日経コンピュータ「ソフトウェア開発データ白書―IT企業1000プロジェクトの定量データを徹底分析」、日経BP社 (2005)

お奨め度:★★★★

米国ではソフトウエア開発の実態を定量的分析した本は、何冊もあるし、名著もあるが、日本ではおそらく、初めての本。

その米国では、ソフトウエアエンジニアリングでは、CMMで有名なカーネギーメロン大学のSEI(Software Engineering Institute)が頂点にある。ビジネススクールでいえば、ハーバードみたいな存在。

ちなみに、中国で、ソフトウエア産業が歴史が浅い割には、やたらとCMMで高レベルの企業が多いのは、ここに留学して帰国したエンジニアの力が大きいといわれている。

日本でも、昨年、日本版SEIを目指すIPAのソフトウェア・エンジニアリング研究機関「ソフトウェア・エンジニアリング・センター」(SEC)ができた。まだまだ、未知数だが、期待されている。

そのSECが中心になり、10社を超えるシステム・インテグレータから、およそ1000プロジェクト分のソフトウェア開発に関する定量的なデータを収集。そのデータを工期、生産性、品質に関して徹底分析し、「工期と生産性・品質の関係」、「適切な工期とは何か」、「品質と外注率の関係」など分析するとともに、課題を提起している。

分析はともかく、データとしては非常に面白いし、ソフトウエア以外の分野でも参考になる部分がある。

日本のソフトエンジニアリングの夜明けがくるか、、、きてほしいなあ!

とりあえず、期待をこめて、今月の1冊は、この本にする。

2005年5月30日 (月)

ソフトウェア開発の持つべき文化

4798108715 カール・E・ウィーガーズ(滝沢徹、牧野裕子訳)「ソフトウェア開発の持つべき文化」、翔泳社(2005)

お奨め度:★★★1/2

米国のソフトウエアエンジニアのバイブルの一冊。

ソフトウェア開発の上流工程から下流工程に至るまで明瞭かつ独自のスタイルで、事例をふんだんに使って解説。その中での慣行を「文化を生かすもの」と「文化を殺すもの」に分類している。

英語版がお奨め。原書はこちら

0932633331

Creating a Software Engineering Culture

Software people(Vol.6)

4774123048 Software people―ソフトウェア開発を成功に導くための情報誌 (Vol.6)、技術評論社

ソフトウエアエンジニアに好評の Software Peopleの第6巻はPMBOKの入門記事。

常識程度にはPMBOKをかじっておきたい、言葉くらいは知っておきたいというソフトウエアエンジニアはこれで十分だろう。

ちなみに、PM Magazine第2巻にも同じような記事があるが、ソフトウエアエンジニアにはSoftware Peopleの方が分かりやすいので、こちらがお奨め。4798107697

PM magazine vol.002、翔泳社

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