酒井穣「はじめての課長の教科書」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)
お薦め度:★★★★1/2
この本を本屋でタイトルを見たときに、おっ!と思った。
手にとり、目次を見たら、期待したとおりのものだった。本書は、スキルと問題解決、社内政治とキャリアの4つを軸に、課長の活動のノウハウを書きあげている。
まず、最初の章は課長の定義をしている。経営的意思決定に対する関与、業務にたいする関与、リーダーシップと管理などの観点から課長とはこういうものであることを説明している。そして、日本の企業では組織の原動力だった課長が、成果主義の普及に伴う組織のフラット化の中で存在が薄くなっていき、今日、また、成果主義の揺り戻しの中で再び重要な役割になってきたという経緯を述べている。まさに同感である。
そして、次の章は課長に必要なスキルということで
・部下を守り安心させる
・部下をほめ方向性を明確に伝える
・部下を叱り変化をうながす
・現場を観察し次を予測する
・ストレスを適度な状態に管理する
・部下をコーチングし答えを引き出す
・楽しく没頭できるように仕事をアレンジする
・オスサイト・ミーティングでチームの結束を高める
の8つが必要だとし、これらについてポイントを解説している。
次に、課長が巻き込まれる非合法なゲームということで
・ポストと予算をめぐる社内政治
について述べて述べ、これを切にけて行くにはどうすればよいかを解説している。
そして、次に課長が直面する9つの問題ということで、問題社員への対処、部下のリテンション、部下のメンタルケア、ダイバーシティ、自身へのヘッドハンティングへの対処、海外駐在とその後のキャリアマネジメント、コンプライアンス、部下の人事評価への対処、ベテラン社員への対処といった問題について処方箋を示している。
そして最終章では、自身のキャリアマネジメントとして、自身の弱点を知る、英語力の強化、緩い人的ネットワークの構築、部長を目指す、課長で骨を埋める、社内改革リーダーになる、起業を考える、ビジネス書を読むといった戦略を示している。
これらの4本の柱は適切だと思うし、その内容もいいことがたくさん書いてある。何よりも、こういう形で課長の活動を体系化した点に価値があると思う。特に、スキルにおいては、課長になって身につけるというものではないと思うので、課長にはこんなスキルが必要だと定義したというのは画期的なことではないかと思う。
また、もう一つ、日本ではあまり社内政治を書いた本がないが、そんなに多くの分量ではないが、課長がもっとも悩む社内政治についての1章を設けているのはたいへん、素晴らしいと思う。
ひとつだけ物足りなさがあるのは、キャリアの扱い方である。スキルにしろ、問題解決しろ、社内政治にしろ、課長レベルになると、キャリアを背景に行わざるを得ない。この点があまり明確にかかれておらず、4つの柱の項目間の関連づけがあまり明示されていない。たとえば、どの部下を評価するなどは、自身のキャリアをかけた判断だし、問題解決の多くは係長のように単に答えを出せばよいという立場にはなく、キャリアをかけた答えを出さなくてはならないことがほとんどではないかと思う。
そう考えると、課長のキャリア戦略というのはもっと奥の深いものがあるように思う。企画意義もあり、内容もよくできた本だし、部分的には著者のそのような意識も垣間見れるので、よけいに残念だ。
ちなみに、僕が15年前に神戸大学の金井壽宏先生のMBAコースのゼミでクラスメートと話をしたときに、三分の二くらいの人は中間管理職のマネジメントについて学びたいと話をしていたのをいまでもよく覚えている。当時、ミドルの問題に強い関心を持つ唯一の先生が金井先生だった(今は、先生の教え子をはじめとして多少増えたが、それでもマイナーだな、、、)
ということで、実は昔から非常に関心の高いテーマ。この本を契機にこのようなニーズにこたえる出版がもっとされるとよいなと思う。本書の著者も書いているが、海外では中間管理職などマネジャーの範疇にないので、この分野の本は日本人が書くしかないな。とりあえず、酒井氏の第2作に期待!
最後に、もう、課長の人はこの本を読めばいいと思うが、これから課長を目指す人は、とりあえず、この本を先に読んでみてはどうかと思う。
重松 清「ニッポンの課長」、日経BP社(2008)
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