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2020年6月11日 (木)

AIに勝てる組織の条件

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トム・ピーターズ(久保 美代子訳)「新エクセレント・カンパニー: AIに勝てる組織の条件」、早川書房(2020)

 
 
お薦め度:★★★★★
 
 
 
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◆エクセレントカンパニー1982
 
1982年に「エクセレントカンパニー」が出版されたときには、読んで非常に興奮した。日本語版は翌年1983年に大前研一さんの翻訳で出版された。
 
T・J・ピーターズ、R・H・ウォータマン(大前 研一訳)「エクセレント・カンパニー―超優良企業の条件」、講談社(1983)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062005816/opc-22/ref=nosim
 
その後、2003年に英治出版から復刊された。
 
トム・ピーターズ、ロバート・ウォータマン(大前 研一訳)「エクセレント・カンパニー―超優良企業の条件」、英治出版(2003)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901234331/opc-22/ref=nosim
 
このタイミングで読み直した記憶があるが、そんなに新しさは感じなかった。
 
それから17年後に登場したのが、本書である。エクセレントの定義も含めて、大きな主張はほぼ、変わっていない。変わっている点は一つ。それは、テクノロジーの進化に勝つことが視点に置かれていることだ。
 

◆エクセレントであつための条件分類
 
本書では、エクセレントであるための条件を15の章に分けて書いている。本書では、これらを
 
・実践
・エクセレント
・人びと
・イノベーション
・付加価値
・エクセレントなリーダー
 
の6つのカテゴリーに分けて述べている。
 
まず最初のテーマである「実践」では、プロフェッショナルとして語るロジスティック(人材の配置や動き)について実践されるべき場は最前線の現場であることを述べている。これは、1982年のエクセレントカンパニーでも主張されていることで、エクセレントカンパニーが多くの人に共感を得た理由の一つでもある。
 

◆エクセレントとは
 
そして、次に述べられているテーマが「エクセレントとは何か」である。非常に細かく検討されており、それぞれが印象的であるが、この中で注目されるのは
 
「エクセレントな招いメントは人類の壮大な成果だ」
 
という考え方である。その上で、深く印象に残るのが、
 
「エクセレントはいまから五分間のことである」
 
という項目だ。つまり、エクセレントは、マネジャーが廊下で誰かに出会ったときのふるまいであり、電話の対応や、10行のメール、2行のインスタントメッセージに宿るものだとしている。
 
つまり、エクセレントはその瞬間瞬間の生き方であり、実行しなければ存在しない。この指摘も1982年から続く指摘であり、紹介されている実際のエクセレントカンパニーが共通的に持っている。そして、エクセレントはエクセレントな組織文化によってのみ、維持されると指摘している。
 
また、1982年との違いで興味深いのは、中小企業を重要なトピックスだとしている点だ。ここで取り上げているのは、コネティカット州で、住宅の地下室を居間や寝室に作り替えるビジネスで急成長している企業をあげている。
 

◆エクセレントな顧客体験を提供する
 
次のテーマは人間関係だ。エクセレントな顧客体験を提供するのは人だという考えだ。このテーマは1982年でも中核でもあったが、やはり、今回の本でも中核になっている。そして、1982年より「人がいちばん」がもっと重要になっていると述べている。
 
その理由としてテクノロジー(AI)に言及している。テクノロジーはどんどん進化し、すぐそこまで迫っているが、その役割はエクセレントな顧客体験を提供しようとする労働者を支援することであって、労働者に代わって提供することではないとしている。
 
そして人がこのような役割を果たし続けるためのトレーニングの在り方についても述べている。
次のテーマはイノベーションだ。ここでは2つの法則に限定して説明している。
 
・数打ちゃ当たる法則
・失敗は成功のもと法則
 
だ。今では、この2つの法則はイノベーションに取り組む際には当然のようになっているが、トム・ピーターズが1982年から重要性を唱えていた法則である。
 
5番目のテーマは、効率化とコストの最少化が当たり前になっている中で、重要なのは付加価値で、付加価値を向上させるために最優先で強化すべき戦略を述べている。
 
その中でもっとも重要だとしているのが、デザインへのこだわりである。エクセレントなデザインにおいて重要なのは、美しさだけではなく、感情的あつながりを維持できることだとしている。スターバックスなどを例に挙げているが、このようなデザインに拘ることこそ、付加価値の源泉だと考えている。
最後はエクセレントなリーダーシップだ。ここで取り上げているのは、
 
・聴き上手であること
・組織の集合体としての役割を果たすこと
 
の役割2つ上げ、そのような役割を果たすために、16の戦略を挙げている。
 

◆AIに勝つには瞬間の生き方が重要
 
以上がトム・ピーターズがエクセレントカンパニー2だと言っている本の内容だが、この本の議論の本質は、人はAIに勝てるかどうかという点であろう。
この点において本書で重要なメッセージは、「エクセレントは瞬間の生き方である」というものだ。これは、最近、日本でも注目されるようになってきた直感と深く関係するものでだが、AIに勝つ経営を行うには、瞬間の重視というのがポイントになろのだろう。
 

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