解くことで価値が生まれる問題を創るには世界観が不可欠だ
山口 周、水野 学「世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術」、朝日新聞出版(2020)
(Kindle)https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B085ZTZG9B/opc-22/ref=nosim
(紙の本)https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022516739/opc-22/ref=nosim
お薦め度:★★★★1/2
クリエーティブディレクターの水野学さんと著述家の山口周さんの「世界観」をテーマにした対談。お二人の本は、だいたい読んでいるのでそれぞれの言っていることより、どのように化学反応するかに興味を持って読んだが、期待通りだった。
まず、なぜ世界観なのかという問題が提起されている。この本自体は世界観についての対談として企画されたものではなく、水野さんと山口さんが対話する中で出てきた概念らしい。必要な理由は簡単にいえば、
「問題をつくるため」
だとのこと。本書の中ではお互いに同じことを表現を変えて言っているので山口さんの言葉で紹介すると、今の時代はソリューション過剰に陥る反面で、アジェンダ(問題)が希少化していっているからだ。
山口さんは、人類はこの500年ほど「深くて広い問題」から順に解いてきた。この背景にはビジネスをやるならできるだけ市場規模の大きな領域を狙いたいという市場原理があるからだという指摘から始まる。
この結果、現在の世の中には、「深いけれども狭い問題」と「広いければも浅い問題」しか残っていない。このため、「その問題を解くことによって大きな価値が生まれる」問題を発見することが難しくなっている。このような状況では、問題を解ける人よりは、問題を提起できる人の方が貴重になっている。
では、どのようにすれば問題を発見し、提起できるかという問題になる。そこで問題になるのが「構想力」である。言い換えると、ありたい世界を明確に描ける力である。
ところが社会や組織が新しい世界を構想する力を失っているので問題が希少化しているだ。そのように考えると、世界観を構想することが重要で、日々の仕事の世界観を持って勤しむことできているかどうかを問うている。つまり、どういう世界がやってきたらよいかという自分なりのビジョンを持って仕事に取り組んむ仕事力が必要になる。
ここで、世界観を構想するに当たっては、アートやデザインが強力なツールになる。これが、クリエーティブディレクターの水野さんとの対話を経て、世界観の議論が出てきた理由である。
基本的には山口さんが以上のような考えのもとに、話を進めていき、水野さんがそれをさらに突っ込むという展開を取っている。
その対話によって得られた結論は、世界観は物語と未来を提示する力であるというものであり、その力を持つには知性と感性をつなげ、新しい価値を生み出すために
・意味をつくる
・物語をつくる
・未来をつくる
という3つの視点から、それぞれの経験的な多くの見識を述べている。
対談としては、山口さんの話は概念的な内容を簡単な例え話でかみ砕いているのに対して、それを水野さんが自分の経験を引き当て、山口さんのいうことを具体化しているような感じで進む対話は、どのような分野の人でも読んでいて楽しいし、分かりやすい。
最終的に、世界観という言葉の意味がじわっと理解でき、自分の仕事のスタイルに当てはめてみると気づきがあるだろう。
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