論理を超える思考法と直観
田坂 広志「直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書) 」、講談社 (2020)
(Kindle)https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B084G2CKV8/opc-22/ref=nosim
(紙の本)https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065187958/opc-22/ref=nosim
お薦め度:★★★★★
論理的に考えることは考えるという技法においては、初級過程である。それができなければまともに考えることはできないが、それができたとしても、考えるという意味では入り口に過ぎない。深く考えるには、論理思考を超えた思考法を用いて考えなくてはならない。本書は深く考えることをテーマにした本である。
では、論理思考を超えた思考法とはどのようなものか。まず、対極にあるのが直観を用いた思考法(直観思考)である。この本では、直観思考に関しては、上級過程と位置づけ、身につける具体的で、実践的な方法を示している。
しかし、論理と直観だけでは、深く考えることはできない。
考えが浅いと言われる人が遭遇する7つの場面として、以下のような言葉が投げられる場面だとしている。
「たしかに、理屈ではそうだけれども・・・」
「そう簡単に白黒つかられないだろう・・・」
「それだけが問題ではないだろう・・・」
「それは、視野が狭い物の見方だな・・・」
「まあ、本にはそう書いてあるけどね・・・」
「もっと、相手の立場になって考えられないのか・・・」
「何か、勘が悪いんだな・・・」
「そう簡単に白黒つかられないだろう・・・」
「それだけが問題ではないだろう・・・」
「それは、視野が狭い物の見方だな・・・」
「まあ、本にはそう書いてあるけどね・・・」
「もっと、相手の立場になって考えられないのか・・・」
「何か、勘が悪いんだな・・・」
論理思考を超える思考とはこういう7つの場面での言葉を裏返し、
(1)直線論理だけで考えない
(2)二項対立構造で考えない
(3)個別問題だけを考えない
(4)狭い視野の中で考えない
(5)文献知識だけで考えない
(6)自己視点だけで考えない
(7)直観の力を用いて考える
(2)二項対立構造で考えない
(3)個別問題だけを考えない
(4)狭い視野の中で考えない
(5)文献知識だけで考えない
(6)自己視点だけで考えない
(7)直観の力を用いて考える
という7つの思考態度であるとしている。この7つは論理を初級としたときに、中級、および上級の思考をするための思考法である。
そして、論理と直観を併せて7つの思考法を縦横に活用することで深く考える技法となるとしている。
しかし、イメージは分かりやすいが、実践するのは難しい。そこで、田坂さんは自身がこれまでに見てきた思考のプロフェッショナル像を描き、上の7つの実践するための思考法を
(1)循環論理思考法
(2)対立抑止思考法
(3)課題回帰思考法
(4)水平知性思考法
(5)体験知性思考法
(6)多重人格思考法
(7)自己対話思考法
(2)対立抑止思考法
(3)課題回帰思考法
(4)水平知性思考法
(5)体験知性思考法
(6)多重人格思考法
(7)自己対話思考法
と名付け、それぞれについて、本書で例を交えて、解説している。
これらを見比べれば、思考法が、同じ番号の態度に基づくものかは分かると思うが、読み進めていって最初、違和感があり、なるほどと思ったのが、(7)の関係である。つまり、「直観の力を用いて考える」ための思考法が、自己対話思考法になっていることだ。
ここには田坂さんの独特の「直観」観がある。本書では、直観がひらめく理由について一つの別分野の仮説を紹介している。それは、量子脳理論の「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」というものだ。これは、この宇宙に普遍的に存在する量子真空の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場があり、そこでは宇宙のすべての出来事の情報が記録されるという仮説である。
そして、もし、我々の脳が「ゼロ・ポイント・フィールド」につながることができれば、我々は無限の情報を得ることができる。これを直観と結び付け、フィールドにつながれるもう一人の自分を想定し、対話できれば直観がひらめくとしている。すなわち、自己対話思考で、これは上級過程であると述べている。
もし、ぴんとこなければ、本書では例を挙げて、説明しているので、読んでみてほしい。
そして、本書の後半は自己対話による直観力の向上がテーマになっている。まず、賢明なもう一人の自分との自己対話のための7つの技法をあげている。以下の7つだ。
・まず、一度、自分の考えを「文章」に書き出してみる
・心の奥の「賢明なもう一人の自分」に「問い」を投げかける
・徹底的に考え抜いた後、一度、その「問い」を忘れる
・意図的に「賢明なもう一人の自分」を追い詰める
・ときに「賢明なもう一人の自分」と禅問答をする
・一つの「格言」を、一冊の「本」のように読む
・思索的なエッセイを「視点の転換」に注目して読む
・心の奥の「賢明なもう一人の自分」に「問い」を投げかける
・徹底的に考え抜いた後、一度、その「問い」を忘れる
・意図的に「賢明なもう一人の自分」を追い詰める
・ときに「賢明なもう一人の自分」と禅問答をする
・一つの「格言」を、一冊の「本」のように読む
・思索的なエッセイを「視点の転換」に注目して読む
さらに、賢明なもう一人の自分が現れる技法として以下の7つをあげている。
・呼吸を整え、深い呼吸を行う
・音楽の不思議な力を活用する
;群衆の中の孤独に身を置く
・自然の浄化力の中に身を浸す
・思索のためだけに散策をする
・ 瞑想が自然に起こるのを待つ
・全てを託するという心境で祈る
・音楽の不思議な力を活用する
;群衆の中の孤独に身を置く
・自然の浄化力の中に身を浸す
・思索のためだけに散策をする
・ 瞑想が自然に起こるのを待つ
・全てを託するという心境で祈る
これらが、直観力を高めるための行動ということになる。ぜひ、試してみてほしい。
田坂さんの本はほぼ読んでいるが、だんだん、難しくなってきている。この本も講談社新書であるが、結構、読みとくのに苦労した。ただ、苦労して読む価値がある本だ。
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