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2013年10月22日 (火)

「ガリガリ君」の秘密

4267019533_2遠藤功「言える化 ー「ガリガリ君」の赤城乳業が躍進する秘密」、潮出版社(2013)

お奨め度:★★★★★

「見える化」を広めた遠藤功先生がガリガリ君で躍進する赤城乳業を支える「言える化」の謎を解いた一冊。言える化というのは赤城乳業の造語で、文字通りなんでも言おうということで、赤城の製品開発力を支える一つの柱だが、口で言うほど簡単ではないことは「サラリーマン」ならよく分かるだろう。なぜ、赤城乳業は言える化ができたのかが分かり、とても参考になる。

赤城乳業という会社をご存じない方もいらっしゃるかもしれないので、この本に記されているデータを使って、簡単に紹介しておく。赤城乳業は「ガリガ リ君」というアイスキャンディーを目玉商品にするアイスの会社であり、2012年には「ガリガリ君」だけで4億本を売り、一般のニュースにもなった。この 数字もすごいのだが、特筆すべきは350億円の売り上げを330人でやっていることだ。とんでもない生産性の会社である。
また、最近では「コーンポタージュ」味のガリガリ君が想定を超える売り上げで発売3日で販売休止になり、話題を呼んだ。

そ の赤城乳業がアイスの事業を始めたのは1961年にカップの「赤城しぐれ」というかき氷がヒットしてからだ。その後、順調に業績を伸ばしていくが、オイル ショックで不振に陥る。そこで、社長が新商品開発を号令し、方針を出す。当時30円が商品の主要価格帯だったのに対して、50円で売れる商品を開発すると 打ち出す。そして、その商品の条件として

・思い切って5割増しと大きくすること
・かき氷で作ること
・当たりをつけること
・誰にも真似られない味をつくること
・ネーミングは斬新に

というものだった。この条件のクリアに社員は四苦八苦し、生まれてきたのがガリガリ君だったわけだ。

この社長のビジョンは、創業から守られているいくつかのポリシーを具体化したものになっている。

ひ とつは遊び心だ。当たりをつけるのも遊び心だし、ガリガリ君というネーミングも遊び心いっぱいだ。二つ目は失敗を恐れない大胆な経営。1976年に売り上 げ40億のときに、22億の工場を建設した。そして、2008年には売上240億で、100億以上かけた新工場の建設をしている。

これは経営レベルの話だけではなく、一商品失敗すると億単位の損失があるにも関わらず、若い人にチャレンジをさせている。

こ のようなチャレンジの基盤になっているのが、本のタイトルにもなっている「言える化」である。言える化は見える化と違って、どうしても人間の本能に抵触す る部分がある。もちろん、見える化も隠したがる人間の本能に逆らっているといえばそうなのだが、例えば、都合の悪い情報を出すことと、常務、あなたは間 違っていますということでは明らかにレベルが違う。

難しさを克服するために赤城乳業が行っているのは、場を作り、仕組みでドライブすることだ。場はプロジェクトや委員会だ。現在、5S委員会など11の委員会と、5つのプロジェクトがある。5つのプロジェクトは

・ガリガリ君
・ガツン、とみかん
・濃厚旨ミルク
・ドルチェ Time
・他社とのコラボ

である。注目すべきはいずれも基幹商品であることだ。さらに委員会やプロジェクトのリーダーは若手である。新商品はみんなで考えると言う文化がそこにある。

ただ、場をつくればうまくいくかというとそんなことはない。プロジェクトでも、委員会でも、ホールシステムのような場でも作っただけでは何も起こらないことが多い。

赤城乳業には、これらの場に加えて、言える化を推進する仕組みがある。仕組みには

・失敗にめげない評価の仕組み
・部下が上司を評価する仕組み
・「学習する組織」へ脱皮する仕組み
・帰属意識を高める仕組み

が ある。これはある経営者から聞いたことだが、場と仕組みを両方作るのは難しいことだそうだ。両方作ると歯止めがかからなくなる。どちかを残しておき、そこ を乗り越えた人だけを支援するというのがいいという。確かにこの経営者のいうことはよく分かるし、現実問題として両方をやっている企業が少ない。多いのは 場を作るが、評価は変えないというのが多いように思う。

赤城はそこを乗り越えてやっている。

赤城乳業のインパクトという のは、みんなが素晴らしいと考えるような経営により、成果を上げ続け、成長を続けていることにあると思う。この本の冒頭に紹介されているコーンポタージュ 味のガリガリ君はアイデアコンペで選ばれた、入社3年目と5年目のコンビである。そのアイデアがゲートをくぐり、特殊な商品ゆえに、試作に本番のラインを 止めて試作をすることになる。

赤城乳業は仮説検証を繰り返して、成長してきた会社である。このエピソードを読むと、計画が組織で共有された仮説になっており、自立的に組織ができている。恐るべき、コミットメントの高さである。だからこそ、言える化ができるのだろう。

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