あたなが仕事の中で行っている「善行」は成果を生んでいるか
ジェイク・ブリーデン(宮本喜一訳)「世界一の企業教育機関がつくった仕事の教科書」、アチーブメント出版(2013)
お奨め度:★★★★★+α
グーグル、スターバックス、マイクロソフト、IBMなどの企業をクライアントにもち、エグゼクティブ教育では世界一だと言われるディーク・コーポレート・エディケーションで教鞭をとる著者が新しい仕事の常識を述べた一冊。もし、これらの企業においてリーダーがこの本にあるような行動をできているのだとすれば、エクセレントカンパニーであることが納得できると思わせる一冊。すべてのリーダーに読んで欲しい。
経営者から新入社員まで、リーダーが「仕事」をするときには固く信じられている美徳(善行)がある。ところが、この美徳が悪い決断の原因(本書で は逆噴射と呼んでいる)になる可能性がある。よかれを思ってやっていることが実はと言う話だ。この本では、このような逆噴射を取り上げ、逆噴射を起こさな いようにするにはその美徳をどのように実行すればよいかを述べている。
その美徳とは以下の7つに関するものだ。
バランス、協働、創造性、卓越性、公平性、情熱、準備
これらにおける逆噴射を起こす原因を排除し、美徳を活かす正しい方向にいかなくてはならない。それは以下のようなものだ。
(1)無難なバランス→大胆なバランス
まず、バランス。バランスは生活や仕事で神聖化された美徳になっている。しかし、無難な妥協をするバランスをとると逆噴射を起こす。これを厳しく大胆なバランスに変えていかなくてはならない。
(2)惰性的な協働→責任のある協働
この本で言っている協働とは組織の中で人と一緒に働くことだが、真摯に意図を考えない惰性に流された協働は逆噴射を起こす。これを責任のある協働に変えていかなくてはならない。
(3)自己陶酔的創造性→役に立つ創造性
創造性も逆噴射になることがある。自己陶酔的に創造性が発揮される場合だ。これを役に立つ創造性に変えていかなくてはならない。
(4)プロセスの卓越性→成果の卓越性
卓越性とは高いクオリティのことであるが、高い基準をプロセスに求めると逆噴射を起こす。これを防ぎ、卓越性を実現するには成果の卓越性を求めなくてはならない。
(5)結果の公平性→プロセスの公平性
卓越性とは逆に、公平性は結果を重視すると逆噴射を起こす。したがって、プロセスの公平性を実現しなくてはならない。
(6)脅迫的な情熱→調和のとれた情熱
情 熱は自分の仕事に対する愛情であるが、度を越した情熱は自分の生活や仕事から他の要素を排除してしまい、他のことを犠牲にして一つのことばかり考える逆噴 射を起こす。これを、仕事に対する情熱が生活の他の部分との調和を保ち、仕事にこだわることで生活にもよい影響がでてくるようにしなくてはならない。
(7)舞台裏の準備→舞台上の準備
準備は自分が仕事をする態勢を整えることだが、準備のし過ぎは成果を生まず、仕事を遅らせることがある。現実には準備と実際の仕事は同時に始まることもあり、舞台上で準備するようにしなくてはならない。
本書はこの7つの美徳に対して、逆噴射を起こさずによい結果を生み出すにはどうすればよいかを事例を紹介したのちに、実践方法について極めて具体的に説明している(これにトレーニングをつければ研修になるくらいの具体性で)。
(1)のバランスの実践方法について紹介してみよう。
大胆なバランスとは
不要な妥協や交換条件を排除し、相反をするような決断を下すようなビジョン
だとし、適切な時機の見極めが鍵だとしている。そして、
・不要な妥協を監視する
・インターバル手法をとる(ひとつずつ順番にこなしていく)
・リーダーとして売りにしたいことにまい進する
・強固な意見を柔軟に主張する
・やめる仕事のリストを作る
・選択肢のポートフォリオを作る
・パラドックスを歓迎する
といったことを実践すればよいとしている。
他の6つについても同様に実践の方法を示しており、使える。
研 修の内容をベースに書籍にしていると思われ、体系的にまとまっており、すっと頭に入ってくる構成になっている。すごい本だと思うのは、具体的でありなが ら、どのような層のリーダーにも実践できるような内容になっていることだ。つまり、経営リーダーでも、新入社員のチームリーダーでもこの内容を活用でき る。簡単なようで、すごいことだ。
ぜひ、読んでみてほしい。
コメント