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2012年11月24日 (土)

よい戦略は一貫した行動に直結する

4532318092リチャード・ルメルト(村井 章子訳) 「良い戦略、悪い戦略」、日本経済新聞出版社(2012)

お奨め度:★★★★★

リチャード・ルメルトは言わずと知れた戦略論の大家である。そのルメルトの書いた本で、ぜひ、読んでおかねばと思って手にとった。そんなに期待して読んだわけではないが、読んでいるうちに、どんどん、面白くなって、あっという間に読み終えてしまった。


良い戦略とは驚きであるとルメルトは言う。真っ先にでてきた事例がアップルの再生。スティーブ・ジョブズはアップルに復帰し、再生しようとした際に、ラインナップを整理し、販売系列を整理した。経営のイロハのイであるが、誰も予想しなかった。特に、シェアとか売り上げを言及せず、問題に直接、フォーカスした戦略を取った。これは大きな驚きであり、非常に効果的だったと指摘する。

これに対して、ルメルトは、「ニッチから出ることはできない」と指摘したところ、ジョブズは、「何か次のでかいことを待っている」と言ったそうだ。それが、iPodや、iPhoneという形で実を結び、さらにはiPadの時代になると、パソコンのシェアを大幅に食うようになる。驚くべき戦略である。

ルメルトは、よい戦略とは、十分な基本構造を持ち、一貫した行動に直結するものであるという。良い戦略は

(1)診断:状況を診断し、取り組むべき課題を見極める。良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明確に解きほぐす
(2)基本方針:診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す
(3)行動:基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動のこと

の3つの要素を持っている。まさにジョブズの例がそうだ。

良い戦略を作るにはこの3つの要素を如何に実現していくかが問題になる。本書はいくつかの視点からのその方法を示している。

また、ルメルトは悪い戦略には固有の特徴があるとも述べている。それは

・空疎である
・重大な問題に取り組まない
・目標を戦略と取り違えている
・まちがった戦略目標を掲げている
の4つであり、これらは戦略を作るときのアンチテーゼとなる。

この本の面白さはケーススタディである。戦略についてそれなりの知識があれば、概念的な説明を飲みこむがこともできるが、それでもケーススタディーを読むことにより、新しい発見がある素晴らしい本である。

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