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2011年4月21日 (木)

パワーポイントによる死を防げ!

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 ガー・レイノルズ(日経ビジネスアソシエ編)「シンプルプレゼン」、日経BP社(2011)

お奨め度:★★★★☆

プレゼンテーションZenの提唱者であるガー・レイノルズのDVDつきの解説書。ビジュアルな作りとシンプルな表現、そして80分に渡るDVDの解説と、プレゼンテーションZenの世界がすべてわかる一冊。プレゼンテーションZenではピンとこないという感想を持つ人も少なくなかったように思うが、この本は、まさにプレゼンテーションZenの体現したもので、すべての人が腑に落ちるだろう。

◆プレゼンテーションZenのステップとコンセプト

プレゼンテーションZenの中で、一番印象に残ったのは、日本の駅弁の話と、「パワーポイントによる死」という話だった。パワーポイントによる死とは、箇条書きを多用した複雑なスライドを用いたプレゼンのことだ。本書もまた、この話から始まる。プレゼンテーションZenの3ステップ

(1)準備:企画を練り、スライドの構成を考える
(2)デザイン:ビジュアルやデザインを決めて、スライドを作る
(3)デリバリー:練習をし、聴衆の前で実施する

に対して、3つのコンセプト

(1)抑制
(2)シンプル
(3)自然体

を適用していく。準備では抑制、デザインではシンプル、デリバリーでは自然体がもっとも重要な基本コンセプトになる。日本にはこれらのコンセプトを具現したものがある。抑制については腹八分という食習慣の考え方が適用できる。また、シンプルはデザインだけではなく、全体にかかわるキーワードで、「駅弁」という素晴らしい手本がある。


◆準備

準備においては、まず、慌しい気持ちを落ち着かせることが重要である。そのためには、パソコンを開かず、アナログで作業を行うのがよい。著者は4コマノートを使ってプレゼンを構成しているそうだ。たとえば、モレスキンのMoleskine Storyboard Notebookなどがいいのだろう。

ここで重要なことは、メッセージや要素を十分に絞り込むこと。腹八分、枯山水の世界だ。だが、難しい。「念のために」と思ってしまう。そんな人には、「だから何?」を考えるとよい。また、絞り込むときに役立つのは、記憶に残り易い要素に分解することだ。「アイデアの力」のチップ・ハースとダン・ハースは、記憶に残るメッセージの6要素を示している。


・単純明快である(Simple)
・意外性がある(Unexpected)
・具体的である(Concrete)
・信頼性がある(Credible)
・感情に訴える(Emotional)
・物語性(Story)

である。

レイノルズは中でもストーリーが大切だという。そして、ストーリーの根源は「現状」と「期待」のギャップから生まれる衝突だという。ビジネスであれば、衝突は解決すべき問題や課題であり、ストーリーはそれを解決するプロセスになる。

そして、ストーリーが聴衆の感情に訴えるためには、3つのC

・コンフリクト
・コントラクト
・チェンジ

の要素が重要である。


◆デザイン

次にデザイン。デザインのキーワードはシンプルである。デザインは変化を起こすためのツールであり、デザインマインドを高めるためには、童心にかえり、新たな視点でものごとをみることが重要だ。

また、デザインでは、共感が大切である。共感を得るためには、相手の立場に立って物事を考えることも重要になる。ビジネスの世界で活躍するデザイナーは、常にエンドユーザを意識し、問題を解決するための最適な方法をユーザの視点から考えている。

シンプルはこの文脈の中で考えられる。シンプルと似たような言葉に単純というのがある。この二つは似て非なるものである。

単純化は自分が楽をしたり、出抜きしたりするために行うことで、絶対にやってはならない。一方でシンプルは、エンドユーザや聴衆のために余計な要素をそぎ落とすことである。レイノルズは、

単純化:Easy for us
シンプル:Easy for them

と呼んでいる。シンプルなすライトを作るには、

・絞り込んで強調する
・大事な数字を強調する
・不用意な装飾はできるだけ排除する

の3つのテクニックが有効である。


◆デリバリー

次にデリバリー(プレゼン実施)である。聴衆が求めるキーワードは2つある。

・エモーション(感情)
・コネクト(つながり)

であり、これらに対応していく。その際の話し方のキーワードは「自然体」である。プレゼン実施のポイントを開始直後、中盤前半、中盤後半、終了の4つの時期に分けて示している。

(1)開始直後「コネクト」
・パンチ
・パーソナル
・サプライズ
・ノーブル
・チャレンジ
・ユーモア
・プレゼンス
・プロジェクション
(2)中盤前半「エンゲージ」
・パッション
・プロキシミティ(近接性)
・プレイ
(3)中盤後半「サステイン」
・ペース
・パーティシペーション(参加)
(4)終了「パワフル」


◆プレゼンの際に準備する資料

プレゼンの際に準備すべき資料は

①聴衆に見せるスライド
②話す際に見るメモ
③聴衆に渡す配布資料

の3つであり、①と③を一つで済ませようとすると、箇条書きで埋め尽くされたスライドになる。これをレイノルズは「スライディメント」と呼んでいるが、これがパワーポイントによる死を招くと指摘する。配布資料は文書でなくてはならないという。

自分の行うセミナーも含めて、これまで多くの人のセミナーを企画してきたが、これまで、配布資料をパワーポイントの配布資料ではなく、ドキュメントとして提供した人を一人しか知らない。そのくらい、難しいことだと思うのだが、でも、やってみようかと思う気にさせる一冊だ。

 

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