ビジネスとマネジメントのセンスの素(ファンが選ぶビジネス書2)
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中島 孝志「「経営」についてこれだけは知っておいて欲しいこと」、メトロポリタンプレス(2011)
お奨め度:★★★★★
ビジネスプロデューサー・中島孝志さんの「経営思想」の原理原則を説く一冊。事例やエピソードを中心にエッセイ風に書かれているので、気軽に読みながら、本質を知ることができる。また、構成は他書に類をみない。0、1、2、3、4という数字に着目して、経営の原理原則が書かれており、この手の本をたくさん読んでいる人でもおそらく先が読めないので、興味をそそられながら、読み進んでいける。この発想はすごい。
◆4Pは、なぜ、4Pなのか
一昔前は、コンサルタントなど、専門家しか使っていなかったフレームワークを一般のビジネスマンが思考ツールとして使うようになってきた。たとえば、3Cとか、4P、PPMなどは広く知られ、活用されるようになっている。
一方で、では、どうして3Cは3つですか、4Pは4つなのですかと聞かれると答えに困る人は多いと思う。3Cや4Pはジャストアイデアではなく、3つだったり、4つだったりする理由がある。
この本は以下のような構成になっている。
・「0」をつかめば経営のすべてがわかる
・「1」が教える生き残る経営
・潰れない経営をするには「2」を用意する
・「3」という数字を理解すれば危機に強くなる
・「4つのマトリクス」で経営問題はすべて解決する
本屋でこの本を手にしたときに、そう来たかと思ったが、各章とも予想を超える内容になっている。
◆ゼロベース
まず、「0」は、多くの人が想像するように、ゼロベースがテーマである。
・視点ではなく、「視座」を変えること
・改善ではなく、イノベーション
・現状分析のときに、先入観を持たないこと
・実績にこだわらない人材抜擢
・ブルーオーシャン
などについて具体的に述べている。
◆プライオリティ
次に「1」。プライオリティを付けることの重要性をテーマとしている。その中で、
・重要なことだけを押さえる
・一点突破
・ナンバーワンと逆の位置に立つ
・1位だけが、低価格戦略で勝てる
・少ない方が付加価値である
・ブレークスルーを生み出す方法
・人生をかけることのできる仕事に出会う方法
などについて述べられている。
◆オルタナティブ
次に、「2」。これも多くの人が想像するとおりで、オルタナティブの重要性がテーマである。
・ワンパターンには賞味期限がある
・勝てなければマネをする
・セカンドライン
などについて述べている。
◆3はマネジメントのマジックナンバー
次に「3」。僕はこの一番面白かった。テーマは多様性(ダイバーシティ)である。
・虫の目、魚の目、鳥の目
・仕事は3分割してから取り掛かる
・経営にはつねに3つの正解がある
・シナリオはいつも3つ作る
・3つの無駄を省く
・3とおりのマーケティングを行う
・真の顧客の見極め
・ロングテール
・1日を三等分する
など。マネジメントでは、「3」という数字を使う人が多いが、はやり、3には意味があることを再認識させられる内容だ。
◆複眼化
最後は「4」。テーマは複眼化、あるいは立体化である。
・マトリクスによりプライオリティが導かれる
・どんな仕事も4つに分けることができる
・GEのマトリクス経営
・プロダクトライフサイクルの4つのフェーズ
・ムーアのマーケティング
・マーケティングミックス
・SWOT
などについて触れている。
◆センスを身につける
一見、とりとめのないビジネスエッセイであるが、数字を軸にしたことによって、いろいろと連想が膨らんでいくし、数字に着目して現象を見ること自体が、モノの見方を変えるノウハウでもある。
ビジネス「センス」、マネジメント「センス」など、センスという言葉が使われることが多い。知識の習得はいつでもできる。しかし、センスの習得は若いうちにしかできない。たとえば、35歳で課長になるとして、課長になってからマネジメントのセンスを身につけるのは非常に難しい。
若いときから、マネジメントやビジネスの知識を習得する必要はない。実務と結びつかないとピンとこないし、単なる知識に過ぎない。
しかし、センスの習得は意味がある。
逆に、経営管理、営業やマーケティングはもちろんのこと、エンジニアや研究者などの理系職種にとっても、マネジメントのセンスは、身を助けることがある。
センスを身につけるために、読んでみてほしい本だ。
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