リーダーシップにおける「判断」と「決断」
中竹 竜二「判断と決断 ―不完全な僕らがリーダーであるために」、東洋経済新報社 (2011)
お奨め度:★★★★1/2
ラガーマンの書いたリーダーシップの持論。ラグビーファンにとっては、できる部分が多いのではないかと思うが、これからのリーダーシップやマネジメントのあり方として、非常に示唆に富んだ本である。
日本のラグビー界で、プレイにしろ、指導にしろ、理論派というと真っ先に平尾誠二さんの顔が浮かんでくる。プレイぶりや書籍などから受ける印象はカリスマ的である。一方、カリスマ性はまったく感じないのに、平尾誠二さんに勝るとも劣らないキャプテンとしての実績、指導者としての実績を残してきたラガーマンがいる。中竹竜二さんである。
中竹竜二さんは高校時代は福岡県では有名なプレイヤーだったが、福岡大学に入り、その後、ラグビーをやりたくて早稲田に再入学。3年生までは出場機会がなかったにも関わらず、4年生ではキャプテンに選ばれ、見事に大学日本一に導いている。その後、ラグビーを離れ、三菱総合研究所でHRMの仕事をする。そして、再び、早稲田の監督に請われ、就任2年目より二連覇を果たす。
平尾誠二さんと、中竹竜二さんの最大の共通点は、理論的なプレイ、指導である。
中竹竜二さんの早稲田の監督時代の指導の基本方針は、フォロワーシップの重視のリーダーシップである。彼の考えは、一昨年出版された「リーダーシップからフォロワーシップへ」(阪急コミュニケーションズ、2009)などいくつかの本に書かれている。
その中竹竜二さんの新しい著書がつい最近、出版された。フォロワー重視のリーダーシップを判断と決断という視点からわかりやすく書いた本がこの本だ。
判断と決断は違うというのはよく言われる。しかし、どう違うのか、そもそも、判断とか、決断というのは何かというのは意外と整理されていない。この本では、
判断と決断はまず、基準が違う。判断の基準は、正しいか正しくないかであるのに対して、決断の基準は、強いか弱いか、さらには早いか遅いかである。
次に違うのは、時間軸で、判断は過去の事象について評価するが、決断は未来の事象について方向性を打ち出す。
といった説明をしている。
深田和範さんが、「マネジメント信仰が会社を滅ぼす」(新潮新書、2010)の中で、マネジメント信仰シンドロームとして、「意見はあっても意思はない」、「管理はするけど無責任」といった指摘をしている。これは、言葉を変えると、「判断するけど、決断しない」ということになる。
判断だけでもだめ、決断だけでもだめ。バランスと組み合わせが大切なのだ。この議論は、これは、マネジメントとリーダーシップのバランスの議論にも通じるものがあり、非常に示唆に富む。
ビジネスリーダーには、ぜひ、読んでほしい一冊である。
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