優秀なリーダーはどのように行動するのか
ブライアン・トレーシー(日暮雅通訳)『ブライアン・トレーシーの「ベストリーダーの極意」』、朝日新聞社(2011)
お奨め度:★★★★★
ブライアン・トレーシーのリーダーシップ原論。リーダーに課せられた責務を7つに整理し、7つの特性が必要だと説く。さらに、リーダーのとるべき行動について、9つの視点から述べている。
最初にタイトルを見たときに、「えっ」となった。「ベストリーダーの極意」という意味が理解できなかった。原題をみると、「How The Best Leaders Lead」である。なるほど、よく考えられたタイトルだ。
まず、7つの責務とは
(1)事業の目標を定めて達成する
(2)革新し、売り込む
(3)問題を打開し、決断を下す
(4)優先順位を決め、重要な仕事の集中する
(5)人の手本になる
(6)部下に希望を与え、やる気を起こさせる
(7)実践し、結果を出す
の7つである。非常に難しいことが並んでいるのだが、これが全部できて初めてリーダーだといわれれば、たいていの人は反論できないくらい、基本的なことばかりだ。リーダーの行動規範だといってもよいだろう。
これに対して、リーダーには7つの特性が求められると指摘する。
1.将来展望
2.勇気
3.誠実さ
4.謙虚さ
5.先見の明
6.選択と集中
7.協調
重要なことは、これはすべて努力すれば、身につけることができる特性だということだ。
これらの特性を実現し、責務を果たすためには、以下のような行動(リーダーシップ)が求められる。
・己を知る
・戦略的に行動する
・マネジメントをする
・最高の人材を雇い、維持する
・やる気のある人間を集め、高度の遂行能力を持つチームを作る
・問題を解決する
・人とうまくコミュニケーションを図る
・自分の関わるビジネスのあらゆる面を深いところまで理解する
さらに、より多くの成功を手にするためには、
・重要性の高いことをする時間を増やす
・したいことに制限を設けない
・ゼロベース思考を実践する
・あらゆる行動に優先順位をつける
・計画における6つのPを忘れない
・できるだけ多くのことを人に任せる
・始めた仕事は一気に仕上げる
・人生の満足感は人間関係から生まれることを忘れない
・健康には特に留意する
・毎日ひとりの時間を持つ
といったことを実践すればよい。
ブライアン・トレーシーの本を読むたびに思うのは、言葉が一人歩きすることを念頭においた書き方をしているということだ。章の表題から、フレーズの見出しまで、どの言葉が独り歩きしてもインパクトがある。表現に無駄がない。もちろん、内容にも隙がない。明確な体系というわけではないので、一見、思いつくままに並べてあるように見える。しかし、そこに新たな知見を継ぎ足すのは至難の業だ。おおよそ、思いつかない。
これは、52か国、1000社以上の企業でのコンサルタント経験に基づく書だということを証明するものだろう。いろいろな経験をKJ法のようにまとめていくとこうなるのだと思う。
最近、出た本と比較するなら、ミンツバーグの「マネジャーの実像」と重複する指摘が多いのは興味深い。ミンツバーグはトレーシーとは対照的に数十の事例を深く分析している。それが同じ結論にたどりついている。これは述べられていることが、いかに本質を抉っているかを証明するものだろう。
特に、リーダーのマネジメントに関する記述の中では、ミンツバーグの主張をベースに説明しているくらいだ。
ミンツバーグの書籍は冗長だと感じる人もいる。そのような人には、この本をお勧めしたい。
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