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2010年6月10日 (木)

史上最強!人づきあいのTIPS集

4781603890 アドルフ・クニッゲ(服部 千佳子訳)「人間交際術」、イースト・プレス(2010)

お奨め度:★★★★★

人を知り、幸福に生きる。100年以上、ヨーロッパで読み継がれてきた名著。

がキャッチフレーズの本。この本を語るのに、これ以上は必要ないかもしれない。諸般は1788年に出版され、これを現代版に編纂したのが、この本だとのこと。それが100年以上読み継がれてきたということだ。今読んでも深い感銘を受ける。

本書は5つの章からなる。

第1章 人づきあいが楽になる智恵
第2章 自分も周りも愉快になる会話
第3章 一歩抜きん出る人づきあいの秘訣
第4章 どんな人ともうまくつきあえるコツ
第5章 友人や家族、隣人、異性とのつきあい方

それぞれについて、見開き2ページで、右ページがタイトル、左ページがその説明という構成で、151の知恵が並ぶ。

151の中でもっとも感銘を受けたのは、これ。

「自分自身が好ましい伴侶になる」
自分自身にとって、好ましい伴侶になりなさい。ずっとほったらかしではいけませんが、頭の中に蓄積した知識に頼ってばかりいるのもよくありません。つねに書物や人から新しい知識を仕入れましょう。気に入った考えばかり巡っていると、自分に対しても他人に対しても、きわめて退屈な人間になってしまいます。そして、自分がいつも考えていることと異なる意見を拒絶することに、あっというまに慣れてしまうのです。

章としてこれはと思ったのは、上の格言も含まれる第3章。以下のようなアドバイスが並ぶ。

・なじみのない雰囲気に自分を合わせる才を持つ
・過大な自尊心は捨てる
・中心にいようとせず、期待を少なくする
・服装は身分相応のものを
・「もった会いたい」と思われるように
・他人との間に距離をおく
・どんな会話からでも学ぶ
・自分より賢明な人とよく話す
・手紙を送る
・手紙を受け取る
・他人による他人の評価はあてにならない
・人は行動によって判断する
・自分自身と対話する
・自分自身を大切にする
・自分自身に誠実であれ
・心と体の健康に気を配る
・自分自身を尊敬する
・自分自身の長所を自覚する
・自分自身が好ましい伴侶になる
・自分に対して厳しくなる
・他人と自分を比べない

どうだろうか?すざましく多様な視点である。そして、一見、矛盾をしているように感じるものもあるが、それはよく考えるとまったく矛盾なく、ひとつの方向を示している。

今風にいえば、人付き合いのTIPSである。頭に叩き込んでおき、状況でふと思い出す類のことだと思う。ひとつひとつについて、小難しいことが書いてあるわけではない。シンプルであり、かつ、深い。

普通に考えて、100年という時間はきわめて重い。いま、いろいろな自己啓発の本が出版されている。10年前に出版された本を読んで、感銘を受けることはほとんどない。古臭いを感じる。20年前であれば、入手することすらままならない。このことだけを考えてみても、100年以上たった本に感銘を受けるというのは、すごいことだ。

100年読まれるということは、それだけ本質的であることを意味する。100年前と今では比べるのも難しいくらい、環境は変わっている。この本は、調整はしているとはいえ、今、現在でも人間関係の本質を射抜いているように思える。

この151のアドバイスを守ることができれば、コミュニケーションはもちろんのこと、あらゆる分野の自己啓発の本はいらないのではないかと思う。人が生きているというのは人間と交際をしているということであり、関係をしているからだ。

一冊手元におき、バイブルとして使ってほしい。そのために手ごろなサイズであり、また、装丁である。

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