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2010年5月 8日 (土)

プレイングマネジャーのコミュニケーションマネジメントの教科書

4478012113 田島 弓子「プレイングマネジャーの教科書―結果を出すためのビジネス・コミュニケーション58の具体策」、ダイヤモンド社(2010)

お奨め度:★★★★

プレイングマネジャーという立場に置かれる人のための、コミュニケーションとコミュニケーションマネジメントを具体的に説明した一冊。「ハブ型マネジャーシップ」と呼ぶマネジメントの考え方に基づき、非常に実践的である。

プレイングマネジャーがコミュニケーションマネジメントを学ぶ本としてお奨めの一冊。

最初に、この本の中でプレイングマネジャーとは何を指しているのかのあまり明確な記述がない。いろいろなところの記述から推測すると

自分自身がバジェットを持ち、かつ、業務チームの一員として、チームリーダーとしての役割を果たすとともに、業務も行う人

というイメージで書かれているように思う。

そのような人たちに勧めているのが、業務の目標を達成するための手段としてのコミュニケーションの仕組み化(コミュニケーションマネジメント)と即効フレーズと呼ぶソフィスティケートされた定石の言葉の活用である。

コミュニケーションの仕組み化の基本は、コミュニケーションそのものを業務の習慣にすることで、そのための以下の3つの仕組み化を提案している

(1)コミュニケーションのスケジューリング
(2)相手の予定も自分の予定にスケジューリング
(3)コミュニケーションの最適化、効率化

(1)のやり方として推奨しているのが、コミュニケーションをタスク化し、進捗管理をしていくことだ。(2)のやり方としては、自分のスケジューラに依頼した業務のスケジュールを書き込み、管理していくこと。(3)は、すきま時間を有効に使う、場所やタイミングをうまく選べるようにすることだ。

即効フレーズは

(1)モチベーションアップ
(2)業務の円滑化を目指す
(3)情報の流通を促す

の3つの目的として使われる。いずれのフレーズも、間接的にはすべての目的が含まれるのではないかと思う。なかなか、スグレモノが多く、

・おはよう!
・良い話、悪い話?
・先生~
・どうしたの、あなたらしくもない

といったものである。これだけを見ても何も感じないかもしれないが、説明されている使い方を見ると、非常に洗練されているように感じる。

そして、このようなコミュニケーションを可能にするには、4つのツールが必要だとしている。

(1)話しかけられ上手→引き出し上手
(2)観察力
(3)ハブ力
(4)根回し+場回し

の4つだ。

マネジャーとして部下とどうコミュニケートするかという類書は少なくないが、自分の仕事を抱えることを前提にしたコミュニケーションでは、コミュニケーションスキルだけではなく、コミュニケーションのマネジメントが必要である。この本は、スケジューリングを中心にコミュニケーションマネジメントを説いているが、こういった本は珍しく、同じ立場の人であれば、ぜひ、読んでおくべき本だ。

多少違和感があるのは、プレイングマネジャーの位置づけだ。この本を最初に読んだときには、オペレーションマネジメントの話のような印象を受けた。しかし、よく読んでみるとそうでもなく、上に述べたような前提で書かれているではないかと推測した。

プレイングマネジャーであっても、マネジャーであるので上位組織とのコミュニケーションが部下や同僚、顧客とのコミュニケーションと同じくらい、あるいはそれ以上に重要である。折角、プレイングマネジャーのすばらしい教科書であるのに、上司や経営トップとのコミュニケーションのやり方がほとんど触れられていない。つまり、現場に落ちてきたことをやるためのコミュニケーション術になってしまっているのは、残念だ。

ミドルマネジャーが意識しなくてはならない組織の範囲にもよると思うが、この範疇に入らない組織が多いのではないかと思う。つまり、ミドルに戦略的な意思決定を求める組織だ。もちろん、ミドルはミドルなので、経営と現場に挟まれながらである。この本の言葉を借りると、ミドルマネジャーにインテリジェントハブの機能を求めている組織だ。ただ、そんな組織のプレイングマネジャーの位置づけであっても、この本で書かれている部下や同僚に対するコミュニケーションマネジメントとコミュニケーションの方法は非常に有用なものであると思う。

また、プレイングマネジャーのコミュニケーション以外の側面について学びたいなら、この本をお薦めしておく。

野田 稔+ミドルマネジメント研究会「中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言」、ダイヤモンド社(2008)

プロジェティスタという概念を持ち込み、機動的なプレイングマネジャーのあり方を提言している。あまり具体性のある本ではないので、プロジェティスタに必要な能力は別の本で学ぶ必要がある。そのコミュニケーション部分は、この「プレイングマネジャーの教科書」がお奨めである。


 

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