危機の中で結果を出すには
スティーブン・コヴィー、ブレック・イングランド、ロバート・ホイットマン「結果を出すリーダーになる」、キングベアー出版(2010)
お奨め度:★★★★★
不透明で困難な時代にリーダーが行うべきことを、フランクリン・コヴィー社のこれまでのソリューションをベースに考察した一冊。モデルとして、ツール・ド・フランス(世界でもっとも過酷な自転車のロードレース)で、個人で7連覇を遂げたランス・アームストロングを取り上げ、さまざまな考察をしている。そして、アームストロングと敗者の間には
規律ある実行力を備えたチームが勝利を手にし、これに欠けるチームが敗者になる
というルールを見つけた。
この事実を基にどんな条件下でもつねに卓越したパフォーマンスを発揮する組織の条件を論じている。
危機になると、
・実行力の欠如
・信頼の危機
・集中力の低下
・不安の蔓延
の4つの危険要因に直面する。そこで、危機を回避して勝利を手にしようと思ったら、
・完璧に優先課題を実行する
・信頼がもたらすスピードを活用する
・時間と資源を集中する
・不安を和らげる
の4つの原則を実践すればよい。
危機において完璧に優先課題を実行するためには、「シンプルな目標と明確な測定基準を設定し、それを絶えず見直しながら、結果測定などフォローアップを強力に実施する」ことが重要である。
信頼関係が脆弱であると、すべてのことのスピードが落ち、また、コストが増加する。すべての懐疑的になり、疑惑に対処するコストが増加する。信頼レベルが上昇すると、すべてがスピードアップし、コストが減少する。
危機における集中は、より少ない資源でより多くのことをやるだけでは不十分である。「何を」より多くが問題である。そのためには、顧客が真に評価するものを増やし、そうでないものを減らすことが賢明である。
不安についていえば、心理的な不況が、人が自分の身に起こる事柄をコントロールできないという意識に原因があることを理解する必要がある。不安の多くは、方向性が不明確だったり、目的に説得力が不足していたりすることにより生じる。人は自分が信じられる任務を任されると、不安を生むエネルギーを成果の実現へと振り向けるようになる。
以上の方針により、この本ではこの4つの原則について、読者の現状を把握し、改善実践計画を作り、「教えて学ぶ」ポイントを提示している。
本書のベースにあるのは、「プロジェクト」である。本書の中で、Report of the Conference Board 2008.11号の記事の紹介がある。それによると、CEOの懸念の上位2つは
第1位:卓越した実行
第2位:一貫性のある戦略遂行
だそうだ。これが危機時に何が重要かをよく物語っている。危機時に重要なことは、危機を回避する戦略そのものよりも、その戦略を如何に遂行できるかだ。その意味で、この本でコヴィーが述べていることは、広い意味での、危機的状況におけるプロジェクトマネジメントだと言える。
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