ビジネス書キラー 現る
アラン・ウェバー(市川裕康訳)「魂を売らずに成功する-伝説のビジネス誌編集長が選んだ 飛躍のルール52」、英治出版(2010)
お奨め度:★★★★★
ハーバードビジネスレビューでマネジメントやビジネスとアイディアを結びつけることを学び、米国でもっとも早く成長した雑誌といれれる「ファスト・カンパニー」を作り上げ、そして、新しいアイデアや方向性を探索する旅をしたアラン・ウェバーが、キャリアの中から厳選した、新しい52の「新たな経験則」を1ルールを数ページでまとめた一冊。52を選んだスコープは本のタイトルでもある「魂を売らずに成功する」ための経験則だ。
すべての解説には、「So What」がついており、コンセプトだけではなく、具体的なアクションのヒントも手に入れることができるのもすばらしい。
この本の巻末についている、52のルールを、テーマ別に分類したものを掲載して置くので、とりあえず、目を通してほしい。
一つ一つのどれをとっても、おそらく、1冊は自己啓発書、ビジネス書があるテーマである。非常に広範でもある。この本には、
トム・ピーターズ、ジム・コリンズ、ロザンヌ・ハガティ、ビル・ストリックランド、パウロ・エコーリョ、ダニエル・ピンク、ムハマド・ユヌス、セオドア・レビット、ダライ・ラマ14世、ジョン・ドーア
といった面々が出てくる。いずれも、大きな影響力を持つ人物だ。編集者や起業家、活動家として、このような多く人々と出会い、著者がまとめたルールなのだ。つまり、このようなすばらしい面々の経験則を、著者の編集フィルターを通して手に入れることができるのだ。言い換えると、彼らの持論が、著者に統合されている。
読み終えた率直な感想だが、1冊のビジネス書を読んだときに、頭の中に残っているのは、だいたいこの本の1ルールの分量くらいではないかと思う。そう考えると、この52のテーマをそれぞれ1冊の本で読むかわりに、この本を一冊で済んでしまうと真剣に思ってしまった。
こういう本は作れそうで意外とない。たとえば、「ブランド人になれ」、「フリーエージェント社会の到来」、「ビジョナリー・カンパニー」、「アルケミスト」をいった本に書いてあることをまとめてもこの本にはならない。これらで書かれていることが、著者に統合されてはじめて可能になるように思う。その意味で、経験を提供してくれる人たちと直接接触するという経験があってはじめて、経験則になるように思う。
そう思うと、もう二度と出てこない本かもしれない。購入して、ぜひ、座右の書にしてほしい。
【仕事の姿勢】
01 ピンチのときそこ、リラックス
10 「よい答え」より「よい質問」
14 安心できるゾーンに留まらない
20 戦略戦ではスピードがカギを握る
22 自分が「本当に売っているもの」を知れ
23 「朝目覚めさせるもの」と「夜眠れなくするもの」は何か
25 顧客の期待感をひたすら高めよ
31 「自分ブランド」の発信法を知れ
33 演じる自分を自覚する
39 「真剣な遊び」のやり方を知れ
40 ITの真価を考えよ
43 「学歴」と「才能」を混同するな
44 自分の専門が必要だ
45 失敗を讃美せよ
51 仕事に厳しく、ユーモアは忘れずに
52 至る所に学ぶべき先生が溢れている
【リーダーシップ】
18 「知っている」と「やっている」はまるで別物
19 「雑音」を減らし、「信号」を発せよ
26 人への投資がお金を生む
35 忠誠心は「双方向」
39 「真剣な遊び」のやり方を知れ
41 「リーダーの仕事」について真剣に考えよ
46 現実的な理想主義者となれ
49 最後に勝つのは「開かれた人間」
【起業】
03 「目的は何か」を問い続けよ
06 額縁を変えて絵を見よ
07 「システム思考」をせよ
08 新しいカテゴリーをつくれ
09 「出発点はお金」を肝に銘じよ
13 「ノー」の返事は自分への問いである
15 スタート時には「4C」が必要だ
17 「効率よいもの」より「掘り出し物」
24 勝つために、ゲームのルールを変えよ
36 「お金」より「気持ち」のマネジメント
37 「適切な資金」を集めよ
45 失敗を讃美せよ
【変革・イノベーション】
02 有権者の本当の望みを知れ
04 「解決」より「予防」の方が安上がり
05 「現状でのコスト」>「変化に伴うリスク」であれば改革せよ
18 「知っている」と「やっている」はまるで別物
21 「世界の人々を魅了できるか?」と問い続けよ
27 「メーガン・スミスの3つのルール」を知れ
29 正しい言葉を正しい位置に
30 全方位でイノベーションを起こせ
38 目の前の問題からはじめよ
46 現実的な理想主義者となれ
48 「象徴」となるプロジェクトをつくれ
【戦略】
04 「解決」より「予防」の方が安上がり
05 「現状でのコスト」>「変化に伴うリスク」であれば改革せよ
12 情報の「よしあし」はそれを知る時期で決まる
20 戦略戦ではスピードがカギを握る
25 顧客の期待感をひたすら高めよ
27 「メーガン・スミスの3つのルール」を知れ
28 「よいデザイン」より「偉大なデザイン」
30 全方向でイノベーションを起こせ
50 調子のよいときに「強み」を見直せ
【新しい視点】
06 額縁を変えて絵を見よ
07 「システム思考」をせよ
08 新しいカテゴリーをつくれ
14 安心できるゾーンに留まらない
16 ストーリーを語れ
14 安心できるゾーンに留まらない
17 「効率よいもの」より「掘り出し物」
24 勝つために、ゲームのルールを変えよ
28 「よいデザイン」より「偉大なデザイン」
31 「自分ブランド」の発信法を知れ
32 「コンテンツ」より「コンテキスト」
34 迷ったときにはシンプルに
42 自分と違った人間を大切にせよ
47 自分を世界の中心に置け
私も二度と出てこない本かもしれないと思い、購入しては友人にあげています。So What 以下の、で 何なの?の本音が面白いところです。こういう本は、とことん本音が語ってあるのが価値があります。「本」は小さな泉のようで、汲み出す価値を認めれば何千倍もの価値が出て来ます。
投稿: 植村哲也 | 2010年5月25日 (火) 14:11
とても丁寧な書評を頂いたこと、翻訳を担当させて頂いたものとして、深く深く感謝いたします。著者のメッセージが本書を通じて広がり、新しい「会話」・「アイディア」が生まれるきっかけとなれば幸いです。
著者の最後のメッセージとして、読者の方の「53番目のルール」を是非共有してください、というのがあります。ささやかなしかけですが、Twitter、Facebookの場所を作成してみました。書籍をきっかけとしたコミュニティとして利用して頂ければ嬉しいです。
Twitter | http://www.twitter/52rules
Facebook | http://bit.ly/9tvuAo
本当に有難うございました!
市川裕康
投稿: 市川裕康 | 2010年2月23日 (火) 19:08