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2009年9月20日 (日)

勝てるルールに変える!ゲーム理論指南書

4806134708 川西 諭「ゲーム理論の思考法」中経出版(2009)

お奨め度:★★★★★

※この本を3名の方にプレゼントします。応募要領は本記事の最後をご覧ください。

ゲーム理論は、交渉プロフェッショナルなど、一部のビジネスマンには大いに役立つが、それは解説の方法でそのように思い込んでしまっているということを思い知らせてくれる本。ビジネスの場面で出てくる問題解決を思考フレームワーク化し、そのフレームワークの中でゲーム理論を使うという解説方法をとっているので、実務でも大いに役立つ本になっている。その意味で、タイトル通り、ゲーム理論の説明にとどまらず、ゲーム理論を使ってどのように思考をしていくかという内容になっている。その意味で、画期的な一冊。

この本で提唱している思考フレームワークは

(1)状況を俯瞰的に「把握」する
(2)起こりうる未来を「予測」する
(3)問題を根本から「解決」する

という問題発見、問題解決のフレームワークである。ゲーム理論が戦略構築における問題解決に活用できることは間違いないのだが、意外とどのように問題解決に使っていくかを述べている本は多くない。一方で、ゲーム理論自体は「頭の体操」としてはおもしろく、ゲーム理論の本を読む、あるいはゲーム理論を学ぶこと自体を目的としていたが、この本では、このフレームを意識しながらゲーム理論の説明している。

解説の流れは、まず、ゲーム理論のイメージ把握の基礎である「囚人のジレンマ」から始まる。囚人のジレンマとは以下のようなゲームである。

ある夫婦が覚醒剤の使用の容疑で逮捕された。二人は、別々の留置所に拘留されている。取り調べたが、口は堅い。状況証拠としては十分だが、決定的な証拠の発見に至らず、当局は2人に取引を持ちかけた。夫には

「もし妻の罪を証言(自白)すれば、妻は3年の刑とするかわりに、お前は無罪してやる」
「もしお前が黙秘して、妻が自白したらお前は3年の刑とする」
「もし2人とも自白した場合には二人そろって2年の刑にする」
「もし2人とも黙秘した場合には二人そろって1年の刑にする」

という取引を持ちかけた。また、妻にも同じ取引を持ちかけた。

これを見ると明らかなように、夫婦のトータルの刑をもっとも軽くするのは、お互いに黙秘し、そろって1年の刑を受けることである。ところが、現実には2人とも告白し、2人そろって2年の刑を受けることになる。なぜか?残された子供が心配だからではない。

まず、夫はこう考える。
1.妻が「黙秘」を選んだとする。このとき、もし自分が黙秘すれば自分は1年の刑だが、逆に自分が証言すれば無罪になる。だから妻を裏切り、証言したほうが得だ。
2.妻が「証言」を選んだとする。このとき、もし自分が黙秘すれば自分は3年の刑だが、逆に自分が妻を裏切れば2年ですむ。だから妻を裏切り、証言したほうが得だ。

つまり、妻が黙秘しようが、証言しようが、夫は証言するのが最適の戦略である。これがゲームの構造と本書で読んでいるものだ。

だから某容疑者は自白したわけだ(っていうか、そんな論理的な判断ができるなら、覚醒剤など使わないか;笑)

妻の方も同じだ。

ということで、お互いに証言し、夫婦揃って2年の刑を受けるのだ。この行動の秘密を解く鍵は、「ナッシュ均衡」という概念にある。ナッシュ均衡とは

お互いに相手の戦略に対して最良の行動を取り合っている状態

である。

つまり、囚人のジレンマでは、相互に告白するという状態だ。この本では、ナッシュ均衡を機械的に見つける方法を説明したのちに、囚人のジレンマと同じ構造を持つゲーム「合理的なブタ」を使って、ビジネスの現場でこのような考え方がどう活かされるかを説明している。

大企業A社と町工場のB社は、同じような商品を作っている。販売ルートはインターネットがほとんどで、各社のホームページから受注するシステムである。ところがある地域にはインターネットのインフラが整備されていないので、今は商品が売れていない。A社はインターネットを整備する財力があるが、B社にはない。このとき、A社はどのような戦略に出るべきか

という問題を考えている。この答えは、「合理的なブタ」ゲームの応用として考えると、A社がインターネット整備をすることだ(こういう状況にあって気になる人は本を買って読んでください)。

しかし、現実にはもっと別の問題解決の方法がある。たとえば、A社がB社に対してインフラの共同整備を持ちかけることである。これをこの本の著者・川西先生は「ゲームを支配しているルールを変える」と言っているが、ここでゲームの構造をきちんと理解しているかどうかが効いてくる。B社がゲームの構造を理解していれば、ナッシュ均衡がA社が単独の投資をすることにあると分かっているので、出資を断ることもできる。さらに、よりしたたかであれば、それを見越して、インフラ設置後のビジネス展開に有利な条件をつけた上で、投資に応じることもできる。このようにゲームのルールを変える際に、ゲームの構造を把握できていることで有利に交渉を進めることができるので、ゲーム理論を知っておくことが重要だというのがこの川西先生の主張である。

この一連の流れが、冒頭に述べたゲーム理論による、問題の「把握」、「予測」「解決」の流れである。

本書は囚人のジレンマ以外に、

・コーディネーションゲーム
・チキンゲーム
・マッチング・ペニーズ
・ホテリング・ゲーム

など、代表的なゲームについても、構造の把握、ルールを変える際のポイントについて例を使いながら明快に説明している。

さらに、ゲームの中に時間要素が入った「ダイナミックゲーム」についても1章を割いて同じパターンで解説をしている。ダイナミックゲームでは、チェスのような展開型ゲームを中心に解説されているが、この中で、仕組み作りにゲーム理論をうまく応用する方法が述べられているのが、大変、参考になった。

最後の章では、でも、人間はゲームだけでは動かないという話をされている。

ちょっと脱線するが、このブログで2007年のアワードに選んだ「影響力の法則」という本がある。この本を最初に読んだときに、興味深かったのが、構造と感情を整理してあったことだ。この本では、カレンシー(貨幣)交換という基本コンセプトを使って、対人関係をゲーム理論的に捉え、メリット、デメリットの中に感情を入れている。これはおもしろいと思ったのだが、本書の最終章の、「人間は非合理的に動く」というのはまさに、この点についてもっと複雑な状況を説明していて、大変、興味深かった。

結局、対人関係をうまく構築していくというのは、こういう発想が必要なのだと思う。構造の部分を無視して対人関係を築いていくとあまり良い関係にははならない。たとえば、この自民党(族議員)と官僚の関係はまさにその典型ではないかと思う。まず、構造をきちんと理解し、その上で、感情的な配慮をしていく必要があり、そのためには、ゲーム理論をきちんと学ぶというのは一定の価値があるように思う。

ぜひ、この本を手にとって、まずは身近な問題を考えながら考えてみてほしい。

◆プレゼントへの応募方法。(締切2009年10月7日)

本書を3名の方にプレゼントします。希望の方はこちらからご応募ください。

第63回 PMstyle 書籍プレゼント

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