仕組み作りの本質が分かる
ショーエンK「「ぼうず丸もうけ」のカラクリ」、ダイヤモンド社(2009)
お奨め度:★★★★★
大学で経営学を学び、就職後も「隠れボウズ」として会計事務所に勤務し、税理士の資格を取ったという一風変わったお坊さん ショーエンKさんが書いたお坊さんやお寺のビジネスの実態を書いた本。
ぼうず丸もうけとテーマについてマネジメントリテラシーがある著者が書いているだけに、比較的ベールに包まれた宗教ビジネスの暴露を楽しみながら、事業戦略、マーケティング、人事、財務、営業、オペレーションマネジメント、税務などに応用できる、レバレッジの聞く仕組み(カラクリ)が満載。
2~3年前から、仕組み作りの本が相次いで出版され、レバレッジという考え方が定着してきた感がある。ビジネス書に対して、影響力で一二を争う「404 Blog Not Found」の運営者で、ビジネス書のニーズを熟知されている小飼弾さんが、自ら、仕組み作りの本を書かれているのも、やはり、この分野のニーズが高いということだと思う。
小飼弾「小飼弾の 「仕組み」進化論」、日本実業出版(2009)
仕組みという概念は今に始まったことではない。30年前からある概念である。30年前の仕組みは、失敗しないことを目的におかれて作られてきた。それが、情報技術の発達とともに、情報システムを使って合理化を行うような仕組み作りが中心になってきた。今、起こっている仕組み作りは、レバレッジということで、付加価値に焦点がおかれ、個人が自分自身の生産性や付加価値を上げるところに焦点が当たっている。
そもそも、仕組みというのは合理性を、論理的に説明できる類のものではないように思う。
確かに、発案者にはそれなりのロジックがある。特に、今、注目されているような個人ベースの仕組み作りの場合は少なくとも考えた人にはそれなりのロジックと合理性がある。
ところが、では、ある人が考えた人がその仕組みをまねをすると、そのままうまく行くのかというと、そうとも言い切れない。ものの考え方が違うので、自分なりに咀嚼して、自分のロジックにしないとなかなか、うまく使えない。
勝間流に言えば、「まねる」力ということになるが、ベンチマーキングが必要である。つまり、仕組みに対して、なぜ、その人や組織がその仕組みで成功しているのかを分析し、その「本質」を「ベストプラクティス」として自分の中に取り入れようとする活動が必要である。
仕組みの本が多い中で、仕組みの本質と、そのインプリメントの方法をバランスよく書いているのが、本田直之さんのレバレッジシリーズだろう。
また、最近ではこれでは飽き足らなくなってきて、「行動分析学」にそのロジックを求めようとする考えをする人も増えてきた。お奨めは
中島 克也「変革を定着させる行動原理のマネジメント―人と組織の慣性をいかに打破するか」、ダイヤモンド社(2008)
である。
前置きが長くなってしまったが、ソフト化した経済の中で、ベストプラクティスとして学ぶべきことが多い一つの分野は、間違いなく、伝統のある宗教だろう。あえて伝統があると書いたのは、教祖という、ある意味のカリスマがいなくなっても、その教えが次がれ、それを支えていく仕組みが出来ているからだ。
この本を読んでいると、たとえば、お布施という仕組みは非常に奥が深いことが分かる。単に、檀家という制度は、できた経緯は寺請制度という宗教弾圧であるが、その後、民主社会の中でたどり着いた形がおそらく今のお寺と檀家の関係だろう。それは、単にお寺と信者の1対1の関係を超えて、お寺を中心とするコミュニティを維持するために工夫がされていることがこの本を読むとよく分かる。
もちろん、お寺の仕組みそのものは、宗教法人であることに拠っているのだが、税制という特別な部分を除くと、考え方は工夫をすればビジネスでも同じことができそうなことが多いし、宗教というのは一番、人間の本質的な部分がストレートに出てきていると思われるので、その意味で仕組みの本質も想像できる。
アイディア勝負のような仕組み本を読んでみて、うまくできない経験を持つ人には、仕組み本としてこの本を読むことをお薦めしたい。
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