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2009年5月22日 (金)

プロジェクトマネジメントの大局観を養う

4883732738 稲垣 哲也、一柳 隆芳「ITプロジェクト実践リカバリーマネジメント」、ソフトリサーチセンター(2009)

お奨め度:★★★★

ITプロジェクトのプロジェクトマネジメントの肝要を、成熟度に合わせたリカバリーという視点から整理した一冊。作りとしては、プロジェクトマネジメントの基本的なことを知っている人が、もう少し、専門的な知識を深めるとともに、自分のプロジェクトマネジメントのやり方を振り返り、考えるためにお奨めしたい。

まず、本書では、プロジェクトマネジメントを4つのレベル

レベル1:とにかく突き進む
レベル2:運がよければゴールにたどり着く
レベル3:最後には燃え尽きる
レベル4:着実にゴールへと向かう

の4つに分け、プロジェクトのリカバリー(是正)の方法をレベルごとに分けて考え、次のレベルに移るには現行レベルでどのようなことができるようになればよいかをかなり、具体的に示している。

それによるとレベル1から2に行くには

・プロジェクトオーナーを探す
・目的の文書化
・成果物定義の文書化
・プロジェクト内での共有

の4つが必要だとしている。この4つについてはかなり詳細な方法が記述されている。

次にレベル2からレベル3に行くには

・差異の洗い出し
・リカバリーの方針決定
・リカバリー方針の共有
・リカバリー計画の立案

の4つが必要であるとされている。また、レベル3から4へ向かっては、

・視点を変える
・正常化準備
・正常化への道

の3つが必要だとしている。さらに、それぞれの場合、リカバリーチーム必要な心構えが書かれている。

次に、レベル4といえども十分ではなく、形式的だけではなく、定着化をさせる必要性が述べられており、そのためのプロジェクト計画書の作成方法、ステークホルダマネジメントのツボを紹介している。

まとめとして、成功するプロジェクトの作り方として

・プロジェクト計画書への理解
・リスク管理計画の利活用
・計画変更の実効性確保
・メンバの育成とプロジェクトでの評価
・プロジェクト活性化への処方箋

という5項目について詳しく説明されている。最後に付録的にプロジェクト計画書の具体的な作り方と例を紹介している。

リカバリーという切り口にしているために多少わかりづらくなっているきらいがあるが、正常なときのプロセスだけではなく、現実に起こりうる問題への対処も含めて、広い意味でのプロジェクトマネジメントの流れがよくわかるようになっている。プロジェクトマネジメントの大局観を得るという意味では大変役立つ本ではないかと思うので、ベテランのプロジェクトマネジャーの方にもぜひ、手にとってもらいたい。

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