フレームワークを使いこなすにはこの本!
手塚 貞治「戦略フレームワークの思考法」、日本実業出版社(2008)
お奨め度:★★★★★
この1年くらい、やたらとフレームワークの辞書のような本が目につく。さしあたって、このような流れを作ったのは、また、勝間和代さんではないかと思われるので、すごい影響力だ。
勝間和代「勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)
数ある勝間本の中では、僕はこの本がもっともよい本だと思うが、フレームワーク本としては、もっとお奨めなのがこの手塚さんの本だ。
この本では、フレームワークを「ものごとを認知して思考するための枠組み、切り口」だと定義し、フレームワークを使う目的は、漏れのない思考をすることだと断言している。また、フレームワークを使うことが目的であったり、あるいは、フレームワーク自体が解であると勘違いしないように戒めている。
その上で、この本では、フレームワークを
・並列化
・時系列化
・二次元化
・並列化+二次元化
の4つのカテゴリーに分類し、その使い方を説明している。各カテゴリで説明されているフレームワークは以下の通り。
・並列化
3C、4P、7S、PEST、VRIO、プロフィットツリー、戦略の5P、4つの競争地位、5つの競争要因
・時系列化
バリューチェーン、AIDMA、AISAS、PDS、PDCA、TOC、発達8段階、商品ライフサイクル、S字カーブの雁行化、イノベーションのジレンマ、小売りの輪
・二次元化
SWOT、PPM、3×3のマトリクス、アンゾフマトリクス、業績指標マトリクス、経験曲線、V字カーブ効果
・並列化+二次元化
SWOT/ TOWSマトリクス
結構、使える本なのだが、フレームワークを使うことに否定的な人たちもいる。かつて、コンピュータソフトウエアのパッケージを導入するのをいやがったように、フレームワークを使うことに抵抗をする人がいる。これは興味深い現象である。
なぜ、そう考えるのだろうかと推理してみると、結局、フレームワークで答えが決まってしまうという錯覚に陥るのだろうと思い当たる。この本で、勘違いしてはならないという勘違いに陥って、フレームワークはダメだという論理になってしまっているのだ。
それはもっともな部分もある。例えば、3C分析をマーケティングの作業の中で使うフレームワークだという風に考えてしまうからだ。ところが、この本はそういう捉え方をしていない。これがすばらしい点。
例えば3C分析だと、「内外要因」を統合するフレームワークだとし、いくつものビジネス場面で使えるような解説がされている。その意味で、この本と、それぞれの専門分野の本でフレームワークの説明をされているのは全く違う。さらにこの本では、それぞれのカテゴリにおけるフレームワークの作り方を述べることによって、よく知られているフレームワークを典型的なアプリケーションから切り離し、思考のツールにすることに成功している。すばらしい本である。
著者の手塚です。このたびは取り上げていただき、誠にありがとうございました。
私が伝えたかった真意を鋭く汲み取っていただいており、感謝申し上げます。
また今後ともよろしくお願い申し上げます。
投稿: 手塚貞治 | 2009年4月 2日 (木) 10:20