キャリアステージのあるべき姿とその実践
新 将命「伝説の外資トップが説く リーダーの教科書」、ランダムハウス講談社(2008)
お薦め度:★★★★★
100%共感できるリーダー論。リーダーは何をすべきかというよりも、どうあるべきかを中心にして、その実践が具体的に述べられている。今年読んだリーダーものでは間違いなくベスト1。また、これまでに読んだリーダー論の中でも間違いなくベスト3に入る本。
書籍の構成もよい。キャリアステージにあわせて
これからリーダーになる人
リーダーとして歩き始めた人
リーダーシップをさらに磨きたい人
選ばれたリーダーをめざす人
という4つのステージを設定し、それぞれに独自のレッスンを準備している。
たとえば、これからリーダーになる人に向けての言葉は
Lesson1 「サラリーマン」ではなく「ビジネスマン」になれ
Lesson2 うまくいかないことのほうが多い、と心得よ
Lesson3 伸びるのは逆境のとき
Lesson4 「付加価値」を意識せよ
Lesson5 願望で成功した人はいない
Lesson6 実力は、こっそりアップするもの
Lesson7 「これでいい」は「これでおしまい」
Lesson8 社内価値より社外価値を
Lesson9 上司には「人気」などいらない
Lesson10 「できる人」と「できた人」
Lesson11 「自責」の人になるか、「他責」の人になるか
Lesson12 ダメな人の七つの特徴
Lesson13 好きを選ぶか、上手を選ぶか
Lesson14 経営者になれる人、専門家で終わる人
とある。これに対して、すでにリーダーになった人には、たとえば
Lesson3 疲労感、疲弊感、閉塞感の「3H」はなぜ起こるか
さらに、リーダーシップを磨きたい人には、たとえば
Lesson10 優れた人間は自分の強みと弱みを知っている
最後の選ばれたリーダーになりたい人には、たとえば
Lesson6 リーダーに必要なスキル3「人間関係能力・コミュニケーション能力」
といったレッスンが用意されている。この本を読んでいてなるほどなあと思ったのは、特に大企業では、レッスン3とか、4はトレーニングをしているし、できている人が多い。しかし、新さんのようなリーダーとしての迫力に欠けるし、何か物足りない人が少なくない。
そのような人を観察して、なぜかと考えてみると、最初のステージで書かれていることがまったくといってよいくらいできていないのだ。
米国にリーダーシップ研修の総本山であるLLCという機関があるが、そこの人が書いた本に
モーガン・マッコール(金井 壽宏、リクルートワークス研究所訳)「ハイ・フライヤー―次世代リーダーの育成法」、プレジデント社(2002)
という本がある。この本は、リーダーは見つけるのではなく、育てるものだということをメインテーマにした本だが、LLCのリーダー育成の考え方として、リーダーに必要な資質の多くは、リーダーになる以前に構築されるということが書いてある(組織的な意味合い、僕自身はリーダーというのはなるものではないと立場)。
そのように考えると新さんの本は非常に的を得ており、最初のステージをきちんとクリアできていない人が、いくらリーダーのステージでそれなりのスキルを身につけてもよいリーダーにはなれないことを意味している(もちろん、何もやらないよりはマシだ!)。
その意味で、この本は、ぜひ、リーダーになる前の人に読んでいただきたい。また、すでにリーダーとして活動している人には、1章を読んでみてできていないことがあればそれを正す機会として使っていただきたい。
そうすれば、どんなキャリアの人にも大変、有意義な本になると思う。
【目次】
はじめに
第1章 これからリーダーになる人へ――上司の心得
第2章 リーダーとして歩き始めた人へ――上司としての認識
第3章 リーダーシップをさらに磨きたい人へ――上司のスキル
第4章 選ばれたリーダーをめざす人へ――上司の役割
おわりに
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