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2008年12月10日 (水)

「一休さん」の思考法

453404478x 山下 貴史「3分でわかるラテラル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2008)

お薦め度:★★★★★

「考える」というと論理思考をする人が多い。では、次のような場合にどう考えるだろうか?

「昔、商人が金貸しから借金をし、返せなくなった。借金を返さなければ監獄行きという時代の話だ。金貸しは、商人の美しい娘を狙って取引を申し出た。「空の財布に白と黒の石を1個ずつ入れる。娘に選ばせ、白なら借金を帳消しにしよう。黒なら娘を妻にほしい」という取引だ。娘が取引を拒めば父は監獄行きだなので、同意した。金貸しは庭の小道から石を2つ拾ってきて財布にいれたが、2つとも黒だった。それを目ざとく娘は見つけた。」

このあと娘はどうしたかという問題である。

これはラテラル・シンキングの発案者であるエドワード・デボノ博士が書いた本の冒頭に書かれている問題(本書に引用)を要約したものである。

さて、本書であるが、ロジックの限界を示し、それに代わる思考方法として「ラテラル・シンキング」の方法をかなり具体的に説明した本である。3分で分かるというタイトルは内容をうまく細分化し、体系化してあるので3分ずつを繰り返しながら読み進んでいけるということだと思うが、結構、読み応えがある。

上の問題であるが、ロジックで考えると

・選ぶのを拒否する
・財布の中をあけて、2つの黒い石を示して、金貸しの欺瞞を暴く
・黒い石を選んで、父親を監獄送りから救うために自分を犠牲にする

の3つの可能性があるが、これでは娘にとって役に立たないと指摘する。それがロジックの限界というわけだ。デボノ博士の答えは、

財布に手を入れて石を一個取り出す。そして、白黒を確かめずに庭の小道に落とす。そして、財布の中の石を確かめれば何色を取り出したか分かると主張する

というものだ。「一休さん」に出てきそうな「頓智」だが、これがラテラル・シンキングで、日本語では「水平思考」という名称が一般的である。

この本では、ラテラル・シンキングを、ロジカルシンキングと同じように体系的に行う方法を説明している。

まず、最初は思考を支配している要素を取り除くというテーマで、思い込み、記憶、固定観念、気分、暗黙のルール、集団の常識、人々の行動、フレーム、非言語的な手段、ボディランゲージなどの要素が思考を支配している(ヒューリスティック)とし、それぞれの要素からどのように解放されればよいかを例を挙げながら説明している。

次に、「視点を変える」ということで、

・鳥の目、蟻の目、魚の目
・自分の立ち位置を変える

の2つ、さらに「思考パターンを変える」ということで、

・男脳と女脳
・MBTI

に触れている。次に、これがこの本のもっともすばらしい部分だと思うが、「前提」に着目し、

・前提を疑う
・前提を変える

について具体的な方法を提案している。さらには、マーケティング分野の定番のラテラル・シンキングであるコトラーのマーケティング思考について触れている。

最後に、よく使うオズボーンのチェックリストなど、ボブ・イバールの「スキャンパー」、ブレーンストーミング、シックスハットなどラテラル・シンキングのツールを紹介している。

ロジックに頼りすぎて、問題解決能力が落ちていると感じている人、上司や顧客が法外の要求するので困っている人など、限界を感じている人は目を通してほしい。

本書は解説書であるので、ラテラル・シンキングのスキルを身に付けるためにはトレーニングが必要である。こちらは結構あるが、やはり、定番は

ポール・スローンのウミガメのスープ―水平思考推理ゲーム

である。これについてはこちらの記事を読んでほしい。

アイディアを実行に移す思考法(2007年8月22日)

ほかの思考法も併せて学びたいという向きには、こちらの本もお奨め。

ジョン・ケイドー(花塚恵訳、勝間和代監修)「ブレイン・ティーザー ビジネス頭を創る100の難問」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)

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