現代的なモチベーション理論
小林 英二「マジマネ5 部下の「やる気」を育てる! 」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008)
お奨め度:★★★★★
新任マネジャーやリーダー向けのマネジメントシリーズ「マジマネ」の5巻。内発的動機付けの重要性を語り、動機付けの方法を具体的に説明している。また、内発的動機と外発的動機の使い分けについても、説明している。
これまで、
マジマネ1 できるマネジャーになる!
マジマネ2 伸びるチームをつくる!
マジマネ3 経営戦略の定石を学ぶ!
マジマネ4 職場の法律知識を学ぶ!
など、比較的オーソドックスな内容のタイトルが多かったが、動機付けをテーマにした5巻は、多少、風変わりな内容の本になっている。いや、風変わりではなく、時代が変わり、現代はこのようなモチベーション論が主流にすべきなのかもしれない。
参考図書にデシや、チクセントミハイルという時代を先取りした理論を提唱している人をあげていることからも、察することができる。
エドワード・デシ、リチャード・フラスト(桜井茂男訳)「人を伸ばす力―内発と自律のすすめ」、新曜社(1999)
チクセント・ミハイ(今村浩明訳)「フロー体験 喜びの現象学」、 世界思想社(1996)
さて、著者は内発的動機をPUSH型のモチベーションと呼び、
(1)自律感を与える(主体性をもって仕事をしてもらう)
(2)有能感を育てる(自分は優れているという誇りをもって仕事をしてもらう)
(3)信頼関係をつくる(良い仲間と仕事をしていると感じてもらう)
の3つとして、この3つについて、具体的な動機付けの方法を提案している。
まず、自律感をあたえるということでは、
・仕事の価値に気づかせる
・承認する
・選択権を与える
の3つを条件として、この条件をクリアするための部下との接し方、仕事の与え方について説明している。
また、有能感を育てるためには、
・昇給、昇進、配置転換制度の明確化
・達成への確信の醸成
が必要だとし、達成への確信を育てるポイントとして
・目標達成のための成功イメージが明確
・日常で多くの達成感を味わう
・自分への肯定イメージを持っている
が重要だとし、このポイントを達成するためのサポートアクションを5つ示している。
また、信頼関係をつくるためには、愛し愛される上司になることが重要で、
・部下に貢献を求めるばかりではなく、自分が部下に対して貢献する
・尊敬に値する行動をとり続ける
・チームへの誇りを醸成する
の3つの行動原則を取れ主張し、この3つについて具体的な方法を提案している。
また、最後に、著者がPUSH型モチベーションと呼ぶ外発的動機との使い分けの重要性についても触れている。
この本で書かれていることは、僕は全面的に共感するが、組織の中で共感が得られるかどうかは微妙である。僕もよく感じることだが、感性がまったく違う人はおり、主義主張ではなく、感覚的にこういう話は分からないという人も少なくない。また、動機付けされる側にも当然そのような価値観の人がいる。
そのような人たちをどこまで感化できるかは分からないが、少なくとも内発的な動機が重要という点に共感できるリーダーにとってはこれこそほしかった本!という感じだと思う。この本を力にして、ぜひ、組織の中にこのような価値観を普及させていってほしい。
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