象を見せてくれるチームビルディング本
関島 康雄「チームビルディングの技術―みんなを本気にさせるマネジメントの基本18」、日本経団連事業サービス(2008)
お奨め度:★★★★★
最近、チームビルディングの本が増えてきた。片っ端から読んでみているのだが、チームビルディングは多面性があり、著者の専門的な視点に偏った説明になっていて、どうも、「盲人が象を語っている」ような感じの本ばかりだった。ということで、これというお奨め本が見当たらなかったが、やっと、象を象として説明している本に出会ったような気がしている一冊。
チームビルディングには、単純に考えても、
・ビジョニング
・チーム編成管理
・学習
・人材育成
・プロセスマネジメント
・チームのフェーズマネジメント
・コミュニケーションマネジメント(ファシリテーション、コーチング)
などの要素が含まれる。この本ではこれらの方法を著者のオリジナルの理論も交えながら、もれなく、18の技術として、簡潔に説明されている。
この本でもっとも共有できるのは、チームマネジメントが必要だとしている理由である。チームビルディングの本で、その必要性をあまり明確に書いている本は見当たらない。チームをきちんと作れば何ができるかということはある程度書いているのだが、それがどのような意味があるのかがはっきりしない本が多い。この本では、第1章でなぜ、本格的なチームが必要かを明確にしている。
この本の主張はいままでは、プロジェクトのようなグループ活動では、どう目標を達成するかということは一生懸命考えるのに、目標をどうすればよいかについては考えてこなかった。与えられた目標を達成することは日本人は自然にできるが、目標そのものを作ることには不慣れで、今後うまくできるようになるには、本格的なチームが必要であることを述べている。
そして、著者が社長を勤めた日立総合経営研修所での、オープンデーという年次のイベントでの経験を例として、述べていることを具体的なイメージで示しているので、内容そのものはかなり抽象度が高いにもかかわらず、イメージを持ちながら読んでいける。
その意味でもお奨めできる本で、チームビルディングの解決書の決定版といってよいだろう。
【目次】
はじめに─チームビルディングはだれにも必要な技術
1.なぜ本格的なチームが必要となるのか
複雑な問題の解決にはチームが必要になる
全体目標が明確なら個人目標もすぐ決まる
目標が共有できればだれもが自律的に動く
「チームワーク」は活動でつくるもの
「学習」がなければチームとは呼べない
人が育てられなければチームの意味がない
2.どうすれば本格的なチームがつくれるか
三つの局面を経てチームはでき上がる
メンバー集めは多様性と異質性がカギ
わくわく度の高い目標を掲げよう
チームを動かすには手順の合意が必要
新しい発想を生む行動ルールを定める
「発見」をもとに軌道修正を行なう
3.どうすれば人を育てるチームになるのか
経験と理論をつなぐ仕掛けを考える
活動を振り返ってAh-Haを整理する
おもしろい経験は学習もしやすい
決めつけずに期待して鍛えよう
チームの責任はロールモデルの提供
一皮むける体験の機会をつくる
おわりに─引き継ぐべき遺伝子は「仕事はおもしろい!」
参考文献
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