ビジネス書の正しい読み方
フィル・ローゼンツワイグ(桃井緑美子訳)「なぜビジネス書は間違うのか~ハロー効果という妄想」、日経BP社(2008)
お薦め度:★★★★1/2
賛否両論はあると思うが、ビジネス書の読者なら、必ず知っておきたい議論。ビジネス書に書かれている事例にはハロー効果があり、現実以上にその有効性が述べられることが多いということを書いた本。
ハローとは、直訳すると「後光」という意味で、ハロー効果とは、ある対象を評価をする時に顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる一種の認知バイアスを言う。
つまり、この本はビジネス書は、業績のよい企業のやり方を取り上げて、ハロー効果を与えているので、いざ、実行してみるとうまくいかないということを主張している。
ビジネス書など読んでもあまり役に立たないと思っている人は、ハロー効果を感じ取っている人が多いのも事実だ。隣の芝生は青いともいえるし、また、これが本という存在が現実以上に重視される理由だともいえよう。
この本では、ビジネス書はそのようなものであることを前提にして、では、どのようなフィルターを使ってビジネス書からプラクティカルな情報を得ればよいかについても述べている。
経営学とは本質的に、発生している現実を客観化する学問である。その意味で、ハロー効果が起こるのは仕方ない。実際に、学問の現場でも、よい論文を書く条件として「注目されている企業」を選ぶべしという指導がされているのは、経営学という学問の分野でもハロー効果が何らかの形でつかわれていることを意味している。
ましてや、商用目的でつくられるビジネス書は、ハロー効果はマーケティング戦略の一つだと言える。実際に、書籍になったり、あるいは、事例に使われている企業はそのような企業である。たとえば、ある主張をするのに、元気な中小企業がやっていることを示してもその手法の妥当性はあまり信用されないだろうが、トヨタがやっていることを示せばいっぺんに信用してしまうだろう。これがハロー効果というものだ。
ビジネス書を読む際には、そのようなものだということを理解して読む必要がある。
【目次】
第一章 わかるのはほんの少し
第二章 シスコ・ストーリー
第三章 ABBの栄光と転落
第四章 ハロー効果のまばゆい光
第五章 企業調査は答えを教えてくれるのか?
第六章 星を探し、ハローを見つける
第七章 積み重ねられる妄想
第八章 ストーリー、科学、多重人格的超大作
第九章 ふたたびビジネスの最大の疑問
第一〇章 エセ科学に惑わされないマネジメント
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