センゲの5つのプリンシプルがすべてわかる!
熊平美香「チーム・ダーウィン 「学習する組織」だけが生き残る」、英治出版(2008)
お薦め度:★★★★1/2
ビジネス書の杜ブログの開設以来、売れた本ベスト5の第4位は、ピーター・センゲの「最強組織の法則」である。著名な書評ブログほどたくさん本が売れるわけではないが、その中で通算のベスト5はいずれも500冊は超えているので、一過性の大ヒットではなく、読み続けられている本だといえる。
ピーター・センゲ(守部信之訳)「最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か」、徳間書店(1995)
アマゾンでも常に売れ続けているようだ。すごいことだ。このブログの記事を読みたい人はこちら。
ピーター・センゲの本を手に取られた方はよく分かると思うが、「難しい!」。僕はたぶん、10回以上読んでいると思うが、それでも書かれていることを完璧に理解しているかというと怪しい。そのくらい深い本だと思う。その本をこれだけ多くの人が読んでいるというのはある意味で驚きだが、この本が話題となると、システム思考の部分だけを拾い読みしたとか、途中で挫折したという話をよく聞くのも事実。
日本での普及を見ていると最初に普及したのは共有ビジョン。きっかけは柴田昌治さんのこの本。
柴田昌治「なぜ会社は変われないのか―危機突破の企業風土改革」、日本経済新聞社(1998)
次にあまり明確ではないが、システム思考が注目されてきたが、一昨年あたりから「ダイアログ」への関心の塊と当時に、チーム学習への注目も増してきた。あと、パーソナルマスタリーとメンタルモデルが揃えば、必要なピースは揃うことになる。
それにしても15年かけて、5つのプリンシプルのうちの3つしか進んでいないのだから、改めてピーター・センゲの考察の深さに感銘を覚える。
とは言いながら、そろそろ、山頂が見たいなと思う人も増えてきたと思う。実際に、昨年くらいから学習する組織に対する関心は急に高まってきたように思える。
そんな折、たいへん、よい本が登場した。熊平美香さんのチーム・ダーウィンである。
この本は、センゲの学習する組織の全貌を、中堅メーカを舞台にした企業変革の物語として描いたものである。といっても、よくあるリーダーが出てきて孤軍奮闘タイプの物語ではなく、社内の権力抗争の中で、改革チームが成果を上げるという仕立てになっており、物語としても非常に面白く、理論的な背景をまったく感じさせないストーリになっているので、あっというまに読め、学習する組織の全貌が実感として分かる。
最後に、ストーリーの主人公である、松田理子の回想ということで、センゲの理論とストーリーがどのように対応しているかを簡潔に解説されているのも洒落ていて好感が持てる。
洒落ているだけなく、ここに書いてあることが腑に落ちるまで、このストーリを繰り返し読み、その上でピーター・センゲにいくという読み方をお勧めしたい。
やっとピーター・センゲの前に読む本が登場した。これでピーター・センゲの理論がもっと多くの人に読まれるようになると思う。ピーター・センゲが未消化なままに終わっている人もどこに理論が隠れているかを考えながら、いったんこちらの本を読んでみるといいだろう。
また、この本のストーリーのもう一つの注目点はスポンサーシップである。社内の権力抗争の中で、プロジェクトスポンサーの部長やエグゼクティブスポンサーの専務が見事なスポンサーシップを発揮し、改革を成功させるところの下りは非常に説得力を持ってスポンサーシップの重要性を説いている。
【目次】
プロローグ
第1章 星占いは、ほんとうに外れたのか
第2章 意思決定を遅らせたいなら、会議をすればいい
第3章 誰もが洞窟の中にいることに気づかない
第4章 ヒントは、いつも目の前にぶらさがっている
第5章 ばらばらのピースだけが、絵を完成できる
第6章 強く育つ麦は、踏まれることを好む
第7章 すべての道は、どこかでつながっている
エピローグ 理子の回想 ダーウィン・ノート (最強組織のつくり方)
◆コア・チームの作り方
1. スポンサーの存在
2. リーダーの存在
3. コーチの存在
4. チームメンバー
5. チーム要綱
6. チームのアラインメント
◆学習する組織の秘密
7. パーソナルマスタリー
8. チーム学習
9. メンタルモデル
10. システム思考
11. 共有ビジョン
◆対話と会議の心得
12. 意思決定のプロセス
13. 対話・会議の進め方
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