松岡正剛と物語編集
「遊」の時代から松岡正剛氏のファンである。とんでもない編集人である。どんな著作を読んでもうっとりするような物語を楽しむことができる。
2000年に自らの方法論を伝えるイシス編集学校を設立された。いつか参加したいと思っているのだが、知人で何人か参加している人の話を聞くにつけ、深みにはまりそうな気がして、躊躇している。
そうこうしているうちに、この学校で教えていると思われる編集の本質を垣間見せる本が出てしまった。この本だ。
松岡正剛「物語編集力」、ダイヤモンド社(2008)
この本は、物語の5大構成要素としている
ワールドモデル(世界構造)
キャラクター(登場人物)
シーン(場面)
ストーリー(スクリプト・プロット)
ナレーター(語り手)
の5つを各章とし、[破]師範(番匠)と講評をするととにも、学衆がつくりあげた27篇の物語エチュードが紹介する作りになっている。物語エチュードは、アリスとテレス賞(コンテスト)入賞作のなから選び抜かれた作品だそうだ。
12人の師範は、
今井歴矢/奥野博 /太田眞千代/森美樹/林十全 /野嶋真帆/小池純代/高柳康代/田中俊明/古野伸治/倉田慎一/赤羽卓美
の12名。すごいメンバーである。
ちなみに、[破]というのは[守]の後の応用コース。詳しくはこちらを参照してほしい。
物語、ストリーテリングの有用性について書いた本は少なくない。たとえば、このブログでも紹介したことがあるが、
田坂 広志「企画力 「共感の物語」を伝える技術と心得」、ダイヤモンド社(2004)
平野日出木「「物語力」で人を動かせ!―ビジネスを必ず成功に導く画期的な手法」、三笠書房(2006)4837921795
など、とてもわかりやすく、印象深い本である。また、最近、翻訳された本で、
ジョン・ブラウン(高橋正泰、高井俊次訳)「ストーリーテリングが経営を変える―組織変革の新しい鍵」、同文館出版(2007)4495376012
はかなり、マネジメント手法として突っ込んだ本である。もう物語が有用であることは定着してきたといってよいのかもしれない。
ただ、これは物語が語れる、書ける、編集できるという前提で有用であるという話であって、物語を語ることは非常に難しい。経験があってもケースを作るのは難しいが、これも同じ難しさだ。
実際にコンサルティングの中で物語を入れてみると、効果があることに驚かれると同時に、うまく物語を使うことが難しいことを痛感する。
僕がイシス編集学校に行きたいと思っているのは、この壁を感じているからだ。
この分野の本がかけるのは、ひょっとして日本で松岡正剛しかいないのかもしれないが、今回の物語編集力はその一端を垣間見せてくれる。こんな本がもっと出ないかなと思う。
それから、松岡正剛ファンの人は、この本を読んだ後で、比較的明確で、広範なテーマについて書いた本、たとえば、
松岡 正剛「花鳥風月の科学」、中央公論新社(2004)
松岡 正剛「ルナティックス - 月を遊学する」、中央公論新社(2005)
などを合わせ読むと、編集という概念がすっきりとするのではないかと思う。お薦め!
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