日本組織の病巣「組織の<重さ>」
沼上 幹、軽部 大、加藤 俊彦、田中一弘、島本実著「組織の〈重さ〉―日本的企業組織の再点検」、日本経済新聞社(2007)
お勧め度:★★★★1/2
日本企業の強さの源泉であると考えられてきた創発戦略の創出と実行が機能不全に陥っている。その原因は、「重い組織」にある。つまり、「重い組織」が経営政策を阻害し非合理的な戦略を創発していることにあるという。
この日本組織の病巣ともいえる仮説を沼上先生らしいフィールドスタディで徹底的に調査している価値のある一冊。
研究論文に基づいて書かれた本のようで、問題提起にとどまっているが、この本を読んで連想したのが、柴田昌治氏のこの本。
「なぜ社員はやる気をなくしているのか~働きがいを生むスポンサーシップ」、日本経済新聞社(2007)
柴田氏がこの本で指摘していることを、膨大な調査で裏付けたような形になっている。ということは、この問題の解決策のひとつが柴田氏が必要だと指摘するスポンサーシップであることは間違いない。
日本組織がどのように変わってきているかということを考えてみたときに、はやり、スポンサーシップ(とは昔は言わなかったが)の欠如に行き着くように思う。その原因は柴田氏も指摘しているように業績主義にある。沼上先生の言われる重さは、業績主義と環境づくりのバランスの悪さゆえに出てきているように思う。
一方で、もう、おそらく昔に戻ることはできない。そう考えると、今すべきことは、重さの解消を仕組みとして実現していくことだ。そのひとつがスポンサーシップであることは間違いない。
目次
第1章 日本企業の組織問題
1.日本企業の強さの源泉とその劣化
2.組織構造研究の停滞
3.組織の〈重さ〉研究プロジェクトの概要
4.まとめと本書の展望
第2章 組織の〈重さ〉指標の作成
1.組織の〈重さ〉の操作化
2.因子分析
3.達成感・成長機会・利益率と〈重さ〉の相関
4.まとめ
第3章 調整比率と組織の〈重さ〉
1.各種活動の遂行に必要な日数と調整比率
2.調整比率と日数の相関
3.調整比率・経営成果と組織の〈重さ〉の相関
4.まとめ
第4章 計画・標準化・ルール
1.はじめに
2.計画と標準化
3.社会化・複雑怪奇化(難解性)と組織の〈重さ〉
4.まとめ
第5章 ヒエラルキーと組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.BU長までの情報伝達経路の長さと命令の背後の理由説明
3.上下の情報流
4.ルート距離と上下の情報流と組織の〈重さ〉
5.まとめ
第6章 パワー分布と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.コントロール・グラフと組織の〈重さ〉
3.職能部門間の水平的パワー分布
4.職能部門間での水平パワー分布の変化
5.パワーと組織の〈重さ〉
6.まとめ
第7章 水平関係と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.フォーマルな水平関係
3.社内ネットワークの記述統計
4.社内ネットワークと組織の〈重さ〉
5.知人・説得対象者・支援者の相互関係
6.まとめ
第8章 組織プロセス変数と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.BU長のリーダーシップとパワーベース
3.リーダーシップおよびパワーベースと組織の〈重さ〉
4.リーダーシップと対外影響力,パワーベース
5.コンフリクト解消法と組織の〈重さ〉
6.組織プロセス変数と組織の〈重さ〉の因果的連関
7.まとめ
第9章 組織の〈重さ〉の克服に向かって
1.全体の構造的理解
2.リーダーシップによる変革
3.リーダーシップに対する構造的な制約
4.BU長の認識
5.まとめと残された課題
終章 日本型組織の再活性化に向けて
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