神の交渉術
竹内一正「スティーブ・ジョブズ神の交渉術―独裁者、裏切り者、傍若無人…と言われ、なぜ全米最強CEOになれたのか」、経済界(2007)
お奨め度:★★★★
松下、アップルなどに在籍した著者が、客観的な目でジョブスの交渉術を分析した一冊。この手の本にしてはジョブス信仰はあまりないようで、どちらかというと日本人の視点からジョブスの行動を評価しているのが非常に興味深い。
日本人は交渉について論理性を求めている。これはたぶん、農耕民族独特の発想だと思う。最初は折り合わなくても、何とかして論理性が生まれる条件の設定を行う。それでも論理性が構築できない場合には、「三方一文の損」という和を重視した裁きになる。
ところが、少なくともジョブスの交渉術は異なる。論理性など最初から求めない。ある意味で、強行的な交渉である。面白いのは、自分の立場が弱くても、そのような交渉をすることだ。例えば、中小企業が大企業を相手に自分たちの主張をすべて飲ませようとするなど、ほとんどありえないだろう(ぱっと思い浮かぶのが、岡野工業だが)。
狩猟民族の交渉とは本質的にこのようなものだと思う。問題は弱い立場で如何にそれをひっくり返す交渉を行うかだ。ここではやはり、カリスマ性とか、プレゼン力などが効いてくる。ジョブスの素晴らしさはここだろう。
いずれにしても、アップル社でビートルズを手玉にとり、ピクサー社でディズニーを手玉にとり、iTuneで大手レーベルを纏め上げた交渉術は一読に値する。
ぜひ、読んでみよう!
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