日産のダイバーシティマネジメント
西澤正昭「コーチングが組織(ダイバーシティ)を活かす」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2006)
お奨め度:★★★1/2
日産のゴーン改革の重要な一端をに担った人材育成、組織変革について、担当責任者であった西澤正昭氏がまとめた本。
取り組みの全体像も興味深いが、この本のテーマでもある、その活動の中のポイントになるところで、コーチングがうまく機能しているのが興味深い。猫も杓子もコーチングといった風潮が見られるが、組織としてコーチングを導入するときには、何に使うかが大切であることを実感させられる一冊だ。
日産改革のポイントになったのがダイバーシティマネジメント。その担い手であるリーダーにゴーンが求めたことは
(1)リーダーは戦略を立てること
(2)戦略を誰にでも分かるようにシンプルに伝えること
(3)戦略実行のための組織をつくり、そのメンバーをモチベートしながら最大のアウトプットを出すこと
の3つである(著者によると、このリーダーシップの一番の実行者はゴーン氏自身だとのことだ)
そして、このダイバーシティーリーダーシップを浸透させるためにリーダーにコーチング研修を実施し、組織内に展開していった。これが日産改革を支えたというのがこの本の筋書きであり、その具体的な取り組みが書かれている。
コーチングに関わらず、組織マネジメントに関わる人であれば興味深く読めると思う。ただし、書けないのかもしれないが、取り組みの事実の羅列的な部分があり、どのように変わったかという点がぼんやりしている。その意味で、変革ゴールのイメージを探しているような人にはあまり役に立たないかもしれない。
プロローグ コーチングとの出会い
第1章 日産の改革
1.日産復活までの軌跡
2.日産流マネジメントを理解する4つのファクター
1クロス・ファンクショナル・チームの結成
2全組織をグローバルな三軸マトリックス組織に再編成
3利害対立をポジティブに活かす、ヘルシー・コンフリクトという概念
4危機意識とトランスペアレンシー
第2章 日産のダイバーシティとリーダーシップ
1.日産のダイバーシティ
1人的側面とマネジメントの側面から見た日産のダイバーシティ
2ダイバーシティ組織をどうマネジメントするのか
2.日産流マネジメントプロセス
1リーダーが実行すねき3つのプロセス
2リーダーに求められるコンピテンシ-とマネジメントプロセスの関係
3.日産流リーダーシップの目指すもの
1現場におけるコミュニケーションの変化
2ダイバーシティの本質
第3章 日産の人財開発戦略
1.日産の人財開発戦略
1次世代のリーダーの育成に取り組む
2管理職のマネジメントスキル向上
3一般層の専門性の向上とキャリア開発支援
2.日産のコーチング研修
1コーチング研修導入の背景
2研修開始までのプロセス
3いよいよ研修開始
4コーチング研修への評価ともたらされた効果
第4章 私のコーチング体験
1.第一期 危機からの脱却とビジョン・メイキング
2.第二期 部下の個性と組織能力を引き出すコーチング
3.第三期 プレゼンス・マネジメント
第5章 ラーニングカンパニーを目指して
1.マネジメント・インスティテュートの設立
2.「日産ウェイ」の次世代への伝承
エピローグ
あとがき
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