先日、ダニエル・ピンクの「ハイ・コンセプト」が話題になって、読み直してみました。
ダニエル・ピンクは「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」(原書は「A Whole New Mind」)の中で、
「知識時代」から、「コンセプチュアル時代(Conceptual Age)」
へのシフトを指摘しています。
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抽象的とか、概念的という言葉を辞書で調べてみると、
「いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考えるさま」
という本来の意味と同時に、
「頭の中だけで考えていて、具体性に欠けるさま」
という説明がのっています。何冊か辞書を調べてみましたが、二番目の説明は必ず乗っいます。これだとまだ、客観的な表現だといえなくもないですが、インターネット辞書には、「事物を観念によって一面的にとらえ、実際の有り様から遠ざかっているさま」といった説明をしているものもありました。この表現は明らかに好ましくないと言っていますね。
観念というのは一般には(具体的)事実に基づかないことを意味しますし、一面的という言葉も抽象的であることとは無関係な言葉です。従って、説明としてもおかしいわけですが、日本人は、概念的であることを好ましくないこととしてとらえます。企業でキャリアの浅い人たちと話をしていると、一番目の意味より、二番目の意味の方が浸透しているのではないかと思うことすらあります。
「PMstyleプロデュースブログ」では2回目になる書籍プレゼントです。ビジネス書の杜との共同企画です。
今回のプレゼントは、浦正樹さんの「「実行」に効く計画の技術」で、ご本人のご厚意によるプレゼントです。読んだ人からの評価は非常に高い本です。たとえば、某ITベンダーでプロジェクトマネジャーをされている方は、
「サクッと読めてストンと腹に落ちてパッと実行に適用できる,良書です.」
という評価をくださいました。
この本のプロデュースをしたのは、翔泳社で「イノベーションのジレンマ」を手がけられたり、PMマガジンを創刊された僕の尊敬する編集者ですが、彼はこの本をバーバラ・ミントの名著「考える技術・書く技術」の類書として企画されたそうです。彼がいうには、考える技術や書く技術があるように、計画する技術もあるだろうということで、そのコンセプトに応えて浦さんが書かれた本です。ぜひ、本書を読んで、計画する技術を習得してください。
プレゼントの応募はこちらからできます。
なお、PMstyleでは、7月10日に本書をテキストとしたセミナーを開催します。講師はもちろん、著者の浦さんです。さらに計画の技術を高めたい人は、ぜひ、ご参加ください。
2013年度のPMstyleのコンセプトです。
ロン アドナー(清水 勝彦訳)「ワイドレンズ: 成功できなかったイノベーションの死角」東洋経済新報社(2013)
久しぶりにイノベーションマネジメントで興奮する本を読んだ。本書は、画期的な製品開発が成功しないケースのある理由として、エコシステム(生態 系)を無視していることにあるとし、その回避のためのツール「ワイドレンズ」を示している。この本で説明されているいくつかのケースは、クリステンセン博 士の「イノベーションのジレンマ」に出てくるハードディスクのケースくらいのインパクトがあった。
日本が誇るサービスの一つに宅急便があります。宅急便の歴史は、昭和の名経営者の一人だった小倉昌男氏が構想したものです。
高速道路の整備に伴う長距離運送事業へ乗り遅れた大和運輸の小倉社長は、「集荷・配達に手間がかかる小口荷物より、大口の荷物を一度に運ぶ方が合理的で収益が大きい」という業界の常識を疑い、単価の高い小口荷物にビジネスチャンスを見出そうとします。そして、1975年に「宅急便開発要項」を社内にうちだし、若手を中心にして宅急便プロジェクトを発足させます。
当時、小口荷物を扱っているのは郵便小包(6Kgまで)と、国鉄(30Kg)まで、郵便小包は宅配だったものの、送るときには郵便局に持っていく必要がありました。また、国鉄は駅まで取りにいく必要がありました。
「電話1本で集荷・1個でも家庭へ集荷・翌日配達・運賃は安くて明瞭・荷造りが簡単」
というサービスを構想します。そして、この構想を大変苦労しながらも徐々に実現し、宅急便は日本になくてはならないインフラになっていくわけです。
さて、ここで質問です。宅急便は他の国でもできるのでしょうか?
ビジネスのニュースでイノベーションという言葉を聞かない日はないくらい、イノベーションに対する関心が高まっています。
企業にいって話をしてみると、やはり関心の高さは感じますが、一方で誰と話しても「他人事」です。簡単にいえば、イノベーションは必要だが、自分の役割ではないというのがもっとも多い態度なのです。イノベーション担当を決めている企業もまれにありますが、決まっていない限り、自分の問題としてとらえている人は非常にまれです。
しかし、現実には企業の中のあらゆる仕事において、イノベーションが必要な事柄があります。このギャップを埋めることが必要ですが、そのカギを握っているのは、リーダーとマネジャーです。あらゆる業務でリーダーとマネジャーの立場にある人は、自分たちの仕事でイノベーションすべきことは何かと真剣に考える時期にあります。
今年度、イノベーション講座をデザインするにあたって、もっとも重視したのはこの点です。講座の基本コンセプトは
「イノベーションは目的である」
です。