2013年度のPMstyleの重点テーマは、「プロジェクトの活用」です。
日本では、2000年くらいから「プロジェクトマネジメント」のブームがやってきました。目の前にある「プロジェクト」を失敗せずに行うために多くの企業が着目したのがリスクマネジメントで、徹底的にリスクマネジメントを行い、リスクを回避することにより、失敗率の減少とそれに伴う収益率の向上いう素晴らしい成果を上げることができました。
一方で、そこで忘れてきたものがあります。それが、「どんな仕事がプロジェクトとしてやる価値があるのか」という問いに対する答えです。
プロジェクトには開発や生産といった非定型の定常業務を行うオペレーション型のプロジェクトと、創出や変革を行うイノベーション型のプロジェクトがあります。
オペレーション型のプロジェクトではどうやるか(How)が問題になります。これまで、プロジェクトマネジメントを使って、Howをうまく考え、収益性を向上させてきました。
これに対して、イノベーション型のプロジェクトでは何をやるか(What)が問題になります。もう少し正確にいえば、イノベーション型のプロジェクトでは、企業の戦略やビジョンの実現を前提にして、何をやるかが問題になります。その結果、企業は成長をしていきます。今までこの部分をあまり考えてきませんでした。
今、イノベーションは競争力の源泉というよりは、企業は変わり続けないと生きていけない時代だと言われています。まさにイノベーションの時代です。イノベーションの時代には、Whatを決め、プロジェクトして実施する中で、これまで培ってきたプロジェクトマネジメントの技術を使って成功させていくことが求められます。
2013年度は、PMstyle はじまって以来の最大の変化の年になります。変化の方向性は
プロジェクトマネジメントからマネジメントへ
です。
プロジェクトマネジメントをやめようということではなく、プロジェクトが普通の業務形態になってきた現状を踏まえて、如何にプロジェクトを成功させるかをプロジェクトマネジメントよりももっと広い視点、つまり、マネジメントという視点から考えていくという方向性を目指します。
この方向性で、
・プロジェクトの活用講座
・コンセプチュアルスキル講座
・イノベーション講座
・リーダシップ講座
・不確実な状況におけるプロジェクトマネジメント手法
・プロジェクトマネジメント技術
という6つのカテゴリーを設定しました。ここでは各カテゴリーについて概要を紹介し、各講座の紹介については別途紹介したいと思います。
概念化スキルという言葉があります。日経BPの谷島宣之さんに言わせると、「概念」と「化」で引いてしまう人が多い言葉だそうです。
概念は日本語では「コンセプト」という言います。ところがコンセプトは少し違った意味で使われています。53話「プロジェクトのコンセプトとデザイン」でも述べましたが、
新製品開発プロセスやプロジェクトにおいて、創出されたアイデアをだれにどのようなベネフィットを与えるものかを明確かつ詳細な言葉に落とし込んだもの
という意味で使います。
浦 正樹「「実行」に効く計画の技術」、翔泳社(2013)
計画は作っても有効に使われていないケースが多い。よい計画を作るには時間がかかるが、使わないものに時間をかけるのは無駄だと考えてしまうという悪循環が起こっている。この問題に一矢を報いる書籍が登場した。外資系の企業で、コンサルタントやスペシャリストとしてプロジェクトや事業の計画に関わってきた浦正樹さんが「計画」を技術として体系化したこの本だ。計画に関する本というのはありそうで、これだけ体系化された本はなく、注目の一冊。