イノベーションはさまざまなレベルのものがありますが、画期的だと言われるものはコンセプトレベルでのイノベーションです。
ソニーがウォークマンを開発したときに考えたコンセプトは、歩きながら音楽を聴くというものでした。それまでのオーディオの前に座って音楽を聴くというコンセプトをひっくりかえした大変なコンセプトだったわけです。
その後、メディアがカセットテープからMD、CD、ICメモリと変わり、競合製品は出てきましたが、ウォークマンはiPodが現れるまで独り勝ちを続けてきました。iPodはどうしてウォークマンに勝つことができたか。ICメモリだけでいえば、先に実現したのはウォークマンでした。
iPodが登場するまでは、ソニーも含めて、ソニーがウォークマンで設定したコンセプトで競争がされていました。コンセプトが同じなら、ブランド力がある方が勝ちます。ところが、アップルは音楽を持ち歩くというコンセプトを打ち出しました。技術的にみれば、ICメモリの容量が数十メガか、数十ギガかという違いです。しかし、コンセプトが違い、自分自身が持っている音楽ライブラリを持ち歩き、好きな時に好きな曲を聴くというコンセプトを打ち出しました。そして、あっという間にウォークマンの市場を奪います。
最近、注目されている言葉に「エクスペリエンス」という言葉があります。たとえば、アップルはジョブズの時代から「エクスペリエンス」という言葉を使っていました。最近では、マイクロソフトが、Windows8とか、Office2013で「エクスペリエンス」という言葉を使っており、これで認知度が高まりました。
辞書を引くと「エクスペリエンス(experience)」とは、体験とあります。アップルやマイクロソフトがいう「エクスペリエンス」はどこでもできる単なる体験ではなくて、「特別な体験」、「これまでになかった体験」といった意味でなのでしょう。たとえば、アップルストアにいくと、特別な体験ができる。
さて、「experience」という単語には体験以外に、経験という言葉が当てられることもあります。体験と経験はどう違うのでしょうか?これも辞書で引いてみると
体験とは自分で実際に経験すること
となります(これ英語でどう表現するのでしょうか)。