【PMスタイル考】第88話:問題の存在に気づいても解決しないのはなぜか?
◆問題解決の範囲と時間
プロジェクトなり、現場なりで、問題の存在に気づいてもなかなか解決しないことがよくあります。これはプロジェクトと組織の問題解決の役割分担に原因があります。今回のPMスタイル考は問題解決における組織とプロジェクトの連携について考えてみたいと思います。
組織における問題の取り扱いには2つの視点が必要です。一つは範囲の視点、もう一つは時間の視点です。この2つの視点からこの問題を考えてみたいと思います。
◆問題解決の範囲と時間
プロジェクトなり、現場なりで、問題の存在に気づいてもなかなか解決しないことがよくあります。これはプロジェクトと組織の問題解決の役割分担に原因があります。今回のPMスタイル考は問題解決における組織とプロジェクトの連携について考えてみたいと思います。
組織における問題の取り扱いには2つの視点が必要です。一つは範囲の視点、もう一つは時間の視点です。この2つの視点からこの問題を考えてみたいと思います。
◆はじめに
2009年から書いているPMスタイル考で逃げてきたテーマがあります。それが学習です。非常に広いテーマで、切り口も多様ですので、PMスタイル考で原則としている1回読み切りで書けるテーマではないから避けてきたという事情があります。
ただ、この数年日本でも急に学習への関心が高まっており、そろそろ、書いてみようかと思ったわけですが、書くにあたって1回読み切りという原則を止めることにしました。
◆ピーター・センゲの「学習する組織」
ビジネスの場で学習すべきなのは、人と組織です。
ビジネスの場に学習という言葉を持ち込んだのは、組織学習協会(SoL)創設者のピーター・センゲです。ピーター・センゲは「学習する組織」という概念を提唱しました。
これは
目的に向けて効果的に行動するために集団としての気づきと能力を継続的に高める組織
と定義される組織です。センゲが学習する組織を提唱したのは、1994年に出版された「The Fifth Discipline」という本で、日本でも1995年に
「最強組織の法則」(徳間書店)
として出版されています。この本で説かれているのは、システム思考を基盤としながら、個人とチームが効果的に変化を創り出す力を伸ばしていく方法です。そのためには5つの原則(ディシプリン)が必要だといっています(原題が、「The Fifth Discipline」となっているのはそういう意味です)。
1.自己マスタリー
2.メンタルモデル
3.共有ビジョン
4.チーム学習
5.システム思考
の5つです。それぞれがどういうものかは、別の機会に紹介します。
センゲの定義から分かるように、学習は目的に向けての行動が対象となります。つまり、組織学習の基本単位は目的を達成するためのチームです。日本では当時はチームという考え方があまりなく、学習する組織に対する注目も低かったように思います。
というよりも、むしろ、目的を明確にして仕事をするという習慣があまりなかったのかもしれません。
◆変化の常態化
「変革」、「変化」という言葉が氾濫しています。オバマ氏が大統領になったころ、チェンジというと新鮮さを感じたものですが、今は、あまり新鮮に感じなくなってきました。変化が常態になってきたのとともに、何でも変革が必要だと言っていれば済むような雰囲気もあります。
よく考えてみると、変化が常態化するというのはすごい話です。これまでのやり方のほとんどが通用しなくなります。
たとえば、仕事の仕方を考えてみてください。これまではどのような仕事かを考えて、その仕事をする人を決めて、チームを作って仕事をしてきました。
ビルを建てるといった仕事では計画を作って、チームで計画通りに進めていきます。不確実要因は天候とか経済情勢くらいですので、それらのリスクも計画し、計画に従って進めていけるわけです。
ITのように相手のある仕事となると、相手の(ビジネスの)都合がありますので、計画を作っても計画通りとはいきませんが、それでも計画を作って変更を管理しながら進めていきます。
これがイノベーションになるとどうでしょうか?計画すらできません。なぜか?どうすればよいかわからないからです。分からないことは学んでいくしかありません。そこで仮説検証と呼ばれるような活動をして、いろいろなことを学習しながら、仕事を進めていきます。

◆意思決定はタイミングで内容が変わる
前回は、マネジャーの時間管理はPDCAよりはPDRの方が有効であることを述べた。ただ、この中で触れなかった問題が、「タイミング」の問題である。
意思決定や行動の中である意味で内容よりは重要なのがタイミングである。たとえば、製品開発を行うときに、目玉になる機能に拘るあまり、発売時期を逸し、機能的に劣る競合の新製品に負け、失敗に終わるケースは珍しくない。
もう少し細かなところでいえば、仕事(業務)にもタイミングがある。
プロジェクトマネジメントが行われるようになってから、計画が重視されるようになってきたが、そこで行われていることは時間の計画が中心でタイミングの計画までは行われていないことが多い。
理由を聞くと、メンバーがフルタイムでプロジェクトに参加することが多いので、作業のタイミングは大きな問題ではない(たとえば1日に一度同期すれば十分)という意見と、タイミングは業務プロセス標準である程度考えられているので大丈夫だという意見が多い。
ある程度理解できるのだが、厳密にいえばプロセスは節目になるところの同期しかタイミングを含んでいないことが多いし、メンバーがフルタイムで参加していても意思決定のタイミングの重要性がなくなるわけではない。1日に一度、作業を同期しているので無駄が出てくるのは1日というわけではない。実はここがタイミングという話のみそだ。
たとえば、製品開発でいえば、製品の仕様を決めるタイミングが早すぎると、その後、競合の動向をみて仕様を変えざるを得ないことがあったりする。あるいは、著者が経験した例だと、業界標準の策定が遅れ、仕様を決めるタイミングが遅れ、利益損失が起こるようなこともある。
◆マネジャーの時間管理は難しい

このコラムは割と概念的なことを書いているのですが、今回は少し、趣を変えてみたいと思います。今回取り上げたいテーマは、時間管理です。
時間管理は多くのビジネスマンにとって悩みの種になっています。スケジュールを作ってスケジュール通りにやろうとしても、なかなかうまくできません。
予想外の割り込みの仕事があるからです。特に、今はいろいろなことが目まぐるしく変わりますので、その対処に会議が非常の増えており、定期開催以外の会議が割り込み要因になることが多いようです。このことの是非はいろいろな意見があると思います。
プロジェクトは本来はこのような状態から解放し、集中して仕事をするためにするのですが、やはり会議による割り込みの問題は無視できない問題です。
この問題は職位が高くなればなるほど、顕著になってきます。プロジェクトマネジャーであれば時間の6~7割は会議に使っていると言われますし、管理職(マネジャー)になるとほとんど何かに邪魔されずに仕事をすることはないといわれます。
そのような中で、時間を有効に使おうと時間管理に悩むわけです。たとえば、マネジャーで自分のしなくてはならない仕事をする時間を先にとってしまい、そこには仕事を入れないという時間管理をしている人がいます。しかし、現実はなかなかうまくはいかないようです。
◆組織を動かす3つの方法
今回のPMスタイルは「組織を動かす」について考えてみたい。組織と言っているのは、企業全体から、事業部、部門、プロジェクトまで大小さまざまな組織。動かすと言っているのは大きくは、決定し、実行し、成果を出すことである。
組織を動かす方法にはいくつかの方法がある。
・権限(権力)
・仕組み
・対話(組織的コミュニケーション)
まず、誰もが考えるのは権限である。決めたとおりにやれという権限を持つことによって成果を出していく。
これに対して批判的な意見を持つ人は、決めても人は納得しないと動かないという。この意見は当たっている。が敢えて、納得しなくても動かすのが「権力」である。つまり、組織の中でルールとして、このことについてはこの人のいうことを聞けというのが権限だが、ルールだけでは動かない。権限に加えてパワーが必要で、それが権力である。
次に仕組み。決めたことを実行するために守るべきルールに落とす。そして、そのルールを守るように徹底的に管理することによって成果に結び付ける。これが仕組みだ。決め方そのものについても仕組みを作ることが多い。
三つめが対話。決めたことについてその実行の方法や、決め事自体について話し合いを行いながら、実行していく。
◆レジリエンスという考え方
日本でも震災以降、レジリエンスという概念が注目されるようになってきています。PMstyleでもそろそろ、取り組もうと思っているところで、そんなこともあって今回のPMスタイル考はレジリエンスについて考えてみたいと思います。
まず、言葉の定義ですが、この分野でもっとも多くの人に読まれている本といわれる
アンドリュー・ゾッリ+アン・マリー・ヒーリー「レジリエンス 復活力--あらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か」、ダイヤモンド社(2013)
によると、レジリエンスとは
システム、企業、個人が極度の状況変化に直面したときに、基本的な目的と健全性を維持する力
と定義されています。
◆イニシアチブという言葉の意味
今回のPMスタイル考は「プロジェクト・イニシアチブ」について考えてみたいと思います。
イニシアチブという言葉はよく聞くようで、「どういう意味?」と尋ねられると説明しにくい概念です。
日本語では「主導権」という言葉がよくあてられます。
イニシアチブをとる
イニシアチブを握る
という使い方をするときにはこの意味合いが多いようです。この場合の主導は、牽引、率先、自発といったニュアンスが含まれています。もう少し一般的にいえば、「自ら責任を持った行動」というニュアンスが含まれます。
自らの責任という意味でイニシアチブという言葉が使われているのが政治の世界です。
政治の用語としてのイニシアチブは、一定数以上の国民ないしは自治体の住民が立法あるいは法令の改廃に関する提案を行うことができる制度を意味します。
◆ロバート・カッツの3つのスキル
60年近く前にハーバード大学のロバート・カッツ教授はマネジャーが必要とするスキルには、業務を遂行する上で必要な「テクニカルスキル」、人間関係を管理する「ヒューマンスキル」、および、事柄や問題の本質をとらえる「コンセプチュアルスキル」があるし、マネジャーとしてのレベルがだんだん上がってくるにつれて、「コンセプチュアルスキル」の重要性が増してくることを指摘しました。
コンセプチュアルスキルについては、PMスタイル考の第64話をお読みください。
【PMスタイル考】第64話:概念化スキルについて考える
今回はこの話を別の側面から考えてみます。それは、コンセプチュアルスキルがテクニカルスキルやヒューマンスキルにどのような影響を与えるかです。
コンセプチュアルスキルが高くなると、対人関係や、業務遂行がどのように変わってくるのでしょうか?
◆問題解決より、問題のとらえ方が大切な時代
今、いろいろな意味で重要だと考えられているのが「問い」です。いろいろな背景がありますが、我々が直面する問題が複雑化するにつれて、問題解決自体より、どのような問題として捉えるかのほうが重要になってきました。
たとえば、女性活用が求められる中で、長時間労働がネックになって、子供を持つ女性が職場で男性と同じような条件で働くのが難しいという現実があります。この現実においては、問題はいろいろと考えられます。たとえば
・生産性が悪い
・マネジメントができていない
・育児の負担が女性に偏っている
・育児の支援の環境が不十分である
などです。これらはいずれも問題になりうるわけで、現実をどのような問題として捉えるかのセンスが求められます。
そして、現実をどのような問題として捉えるかが「問いを立てる」ことに他なりません。ということで問いを立てることが重要だと考えられるわけです。
どのような分野でも問いを立てることは重要なのですが、中でも重要性が認識されるようになってきたのが「イノベーション」です。イノベーションはもともと問題や課題によって成果が決まる分野だからです。