【PMスタイル考】第4話:プロジェクトマネジメントとプロジェクトマネジャーの混同
ある企業の事業部長が著者にこういいました。
プロジェクトがうまくいかないのはプロジェクトマネジャーの力量に問題があるからだ。
どう思いますか。「PMOは何をしているんだ」、「そんなプロジェクトマネジャーを選んだ組織にも問題がある」といった異論も出てきそうです。
ある企業の事業部長が著者にこういいました。
プロジェクトがうまくいかないのはプロジェクトマネジャーの力量に問題があるからだ。
どう思いますか。「PMOは何をしているんだ」、「そんなプロジェクトマネジャーを選んだ組織にも問題がある」といった異論も出てきそうです。
◆リスクマネジメントの目的はリスクに強くなること
リスクマネジメントは、多くのプロジェクトマネジメント導入企業がもっとも重視しているマネジメント活動です。しかし、最近、よく何のためにリスクマネジメントをやっているのだろうと感じることがあります。
リスクマネジメントは、初期においてはプロジェクトマネジャーだけではなく、体系的な分析のできるPMOや、経験の豊富なステークホルダが一緒にリスクの分析を行うことにより、プロジェクトのリスク対応能力を上げることに目的があります。
そして、このような「経験」を通じて、プロジェクトマネジャーやプロジェクト、ひいては、組織がリスクに強くなることを目指すものです。
◆経営と計画
今回は、プロジェクトは経営からどのように見えているかをお話をしたいと思いますが、念のために、まずは経営の言葉の説明しておきましょう。
各期の事業の計画を作るには、まず、経営ビジョンを創ります。これは企業としてのあるべき姿、つまり、経営理念、事業領域、経営目標、事業構成、組織風土などから創り出される企業の将来の姿を示すことが目的で創るものです。
次に、経営戦略を創ります。経営戦略とは、経営ビジョンに示すあるべき姿に企業を近づけるための方策(シナリオ)のことです。経営ビジョンを示し、経営戦略を策定するまでに一連の流れを経営計画と呼ぶこともあります。
戦略が策定されると、戦略実行の段取りをします。ここで、戦略策定までは、ある程度長期、あるいは中期の話であることに注意をしておいてください。戦略実行の段取りも、まずは中期的な視野で行います。例えば、
・中期の経営目標
・事業展開の方向、重点、課題
・機能別革新方向、課題
を明確にし、経営の方向性を明確にするといった感じです。これらを中期計画ガイドラインと呼ぶこともあります。
計画ガイドラインができると、
・販売計画
・研究開発計画
・設備計画
・人員計画
・利益計画
・資金計画
・全社中長期計画書
などの中期計画をつくります。
その上で、やっと、単年度の事業計画(予算)を行えるわけです。単年度の事業計画は中長期事業計画を単年度に置き直し、具体的な目標を定めます。さらに部門別、製品別、期間別に落とし込んで、具体的な目標を定めていきます。
事業計画の方法はさまざまです。現場に影響のある損益予算でみれば、例えば、
○損益予算
+販売予算
-売上高予算
-売上原価予算
-販売費予算
+製造予算
-製造高予算
-製造費予算
-購買予算
+本部管理予算
+研究開発予算
といったメトリクスを使うことが多いと思われます。
このようにして、経営ビジョンからブレークダウンされた目標を達成するために業務(オペレーション)を行うわけです。
目標達成の方法は、目標達成のための業務の性格に依存します。代表的には、反復性が高い業務である場合には定常業務として機能組織(ライン組織)で行い、反復性が低い場合にはプロジェクト業務としてプロジェクトチームを組織して行うことが多くなります。
◆プロジェクトデザインとは
プロジェクトのデザインというのは耳慣れない言葉かもしれませんが、大切な概念です。プロジェクトのデザインとは
プロジェクトで何を(広い意味での)顧客に提供したいかを明確にし、その方法の概略を決めること
です。簡単にいえば、プロジェクトの土台作りです。
◆演繹と帰納という論理の構造
ロジカルシンキングの基本になるのは論理である。まず、論理の基本を思い出しておこう。中学校で習った話である。
論理的に正しいことを主張する方法として、論理の「基本構造」を発見したのはアリストテレスである。アリストテレスは、論理的に正しい主張をするための方法として、演繹(deduce)と帰納(induce)の2つがあることを示した。演繹は、
演繹:正しい「前提」から「推論」して正しい結論を導く方法
である。帰納は
帰納:「複数の事象」から「結論」を導く方法
である。違う言い方をすれば、
演繹:「一般」から「個別」へ
帰納:「個別」から「一般」へ
という構造を持っている。
アリストテレスが演繹の証明の例にあげたのは「ソクラテスは死ぬ」という命題(メッセージ)だった。ここではよく知られているようにアリストテレスは
人は死ぬ(一般論)→ソクラテスは人間である→ソクラテスは死ぬ(個別論)
という演繹構造により承継した。この構造は、前提が
人は死ぬ(大前提)→ソクラテスは人間である(小前提)→ソクラテスは死ぬ(結論)
という構造になっている。
これに対して、帰納にも構造がある。個別論から、法則を導く構造だ。たとえば、
ギリシア人はみんな死んでいる/ローマ人もみんな死んでいる/カルタゴ人もみんな
死んでいる(個別論)
→人は死ぬ(一般論)
という帰納構造で、共通項を取り出すと、再現性が高く、法則化できる。帰納とは言い換えると、この法則化のプロセスのことである。
論理的に正しいことを言おうとすれば、演繹か、帰納を構成する必要がある。
現場業務の複雑性が増し、プロジェクトマネジャーをはじめとする現場リーダーにも概念的に物事を考えて、業務を進めていくことが不可欠になってきている。以前は、経験して覚えるとか、模倣するとか、事例に学ぶとかできていたが、今はほとんど、そんなやり方で業務をこなしていくことはできない。同じ業務がないからだ。そこで、一度、経験したとしても、それを如何に概念化できるかが、経験を活かせるかどうかのポイントになっている。
このようなことで、過去にはあまり概念的な思考とは縁の遠かった現場リーダーにも、だんだん、コンセプチュアルスキルが求められるようになっており、スキル習得を積極的に行う人も増えてきた。
5月19日にプロジェティスタ研究会主催でPMstyleCafeを行いました。テーマは
仕事をワクワクする
です。
告知時に申し込みが殺到し、調整の結果、60名になったのですが、なんと、58名の方の出席があって、ちょっとびっくりしました。
2010年5月19日(水)に会議室4で、「プロジェクト計画書の作り方・書き方基礎編」のセミナーを開催しました。少数精鋭のセミナーでしたので、通常は、準備したケースシナリオで計画書作成の演習を行うのですが、この日は、皆さん、ご自分のプロジェクトで計画を作成していただきました。
2010年度上期(8月~9月)は以下のセミナーの開催を予定しています。
8/02(月) 「価値」に着目したプロジェクトマネジメント
04(水) 戦略実行を支えるコミュニケーション
23(月) 計画力強化講座
24(火) プログラムとプロジェクトのマネジメント基礎講座
25(水) 管理者のための支援型スポンサーシップ講座
26(木)-27(金) プロジェクトコミュニケーションマネジメント
9/06(月) ファシリテーション・グラフィック
15(水) -16(木) プロジェクトの計画・実行とそのポイント
16(木) プロジェクト意思決定力強化講座
17(金) クリエイティブ・チョイス
17(金) プロジェクトガバナンスの仕組み 入門編
24(金) プロジェティスタの仕事術
2010年5月18日(火)に会議室8で、「小規模プロジェクトのマルチプロジェクトマネジメント」セミナーを開催しました。本セミナーは昨年まで、好評セミナーであった「小規模プロジェクトのプロジェクトマネジメント」が常に時間が不足していたことと、もっとこの部分を詳しく解説してほしいとのご要望が多かったため、三つに分けたセミナーのひとつです。
・IT小規模プロジェクトのプロジェクトマネジメント
・小規模プロジェクトのマルチプロジェクトマネジメント
・小規模プロジェクトのリーダーシップとコミュニケーション(6月8日開催予定です)