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2010年5月28日 (金)

【PMスタイル考】第2話:経営からのプロジェクトの眺め

◆経営と計画

Style 今回は、プロジェクトは経営からどのように見えているかをお話をしたいと思いますが、念のために、まずは経営の言葉の説明しておきましょう。

各期の事業の計画を作るには、まず、経営ビジョンを創ります。これは企業としてのあるべき姿、つまり、経営理念、事業領域、経営目標、事業構成、組織風土などから創り出される企業の将来の姿を示すことが目的で創るものです。

次に、経営戦略を創ります。経営戦略とは、経営ビジョンに示すあるべき姿に企業を近づけるための方策(シナリオ)のことです。経営ビジョンを示し、経営戦略を策定するまでに一連の流れを経営計画と呼ぶこともあります。

戦略が策定されると、戦略実行の段取りをします。ここで、戦略策定までは、ある程度長期、あるいは中期の話であることに注意をしておいてください。戦略実行の段取りも、まずは中期的な視野で行います。例えば、

・中期の経営目標
・事業展開の方向、重点、課題
・機能別革新方向、課題

を明確にし、経営の方向性を明確にするといった感じです。これらを中期計画ガイドラインと呼ぶこともあります。

計画ガイドラインができると、

・販売計画
・研究開発計画
・設備計画
・人員計画
・利益計画
・資金計画
・全社中長期計画書

などの中期計画をつくります。

その上で、やっと、単年度の事業計画(予算)を行えるわけです。単年度の事業計画は中長期事業計画を単年度に置き直し、具体的な目標を定めます。さらに部門別、製品別、期間別に落とし込んで、具体的な目標を定めていきます。

事業計画の方法はさまざまです。現場に影響のある損益予算でみれば、例えば、

○損益予算
+販売予算
-売上高予算
-売上原価予算
-販売費予算
+製造予算
-製造高予算
-製造費予算
-購買予算
+本部管理予算
+研究開発予算

といったメトリクスを使うことが多いと思われます。

このようにして、経営ビジョンからブレークダウンされた目標を達成するために業務(オペレーション)を行うわけです。

目標達成の方法は、目標達成のための業務の性格に依存します。代表的には、反復性が高い業務である場合には定常業務として機能組織(ライン組織)で行い、反復性が低い場合にはプロジェクト業務としてプロジェクトチームを組織して行うことが多くなります。



◆プロジェクト業務と予算制度

前置きが長くなりましたが、まず、認識しなくてならないのは、プロジェクトというのは、オペレーションレベルの活動だということです。その上で、特殊性を考える必要があります。

定常業務は、予算として設定された目標をトータルでクリアできればよいと考えるのが一般的です。プロジェクト業務も基本的には同じですが、個別の業務や製品と戦略との結びつきが定常業務より強いといえます。

プロジェクトにもいろいろですが、不確実性や新規性の高いプロジェクトの場合、事業計画(予算)だけではうまくできないことが多くなります。もちろん、そのプロジェクトに見込む予算はあるわけですが、それだけで統制をしようとするとうまくいきません。例えば、商品開発プロジェクトで、研究開発予算だけでスコープを決めて良いかという議論になってくるわけです。あるいは、SIのプロジェクトで販売予算だけを見て、進めていってよいかということにもなります。

答えはノーです。それは、上で説明した単年度事業計画の策定プロセスを見ればよく分かります。経営戦略あるは、中期計画ガイドラインがきれいにオペレーションまで落ちるといえるのは、業務の定常性があるものに限定されます。

定常性の小さいプロジェクトは、事業計画(予算)だけを見ると、戦略的なポジションを確保できなかったり、顧客の満足を実現できないといった戦略レベルの不整合を生み出す可能性が大きくなります。つまり、目先のリスクを避けて、事業や企業としてより大きなリスクを負うことになります。


◆業務の質を上げるだけではプロジェクトガバナンスは強化できない

それは、マーケティングや要求マネジメントの問題だろうと考える人もいらっしゃるでしょう。そうかもしれませんが、現実を考えるとあまりうまくいってはいません。

例えば、SIの企業では要件を精緻に分析した結果、限られた予算の中では入らず、戦略性のない交渉をして、顧客の顰蹙を買うどころか、訴訟沙汰になっているプロジェクトもあるくらいです。あるいは、限られた予算の中で開発した商品が、結果的に販売できないままで終わったというプロジェクトも数多くあるでしょう。

このような例は極論だが、プロジェクトは事業計画(予算)だけではなく、中期の計画ガイドライン、あるいは、戦略にまで立ち返らなくては成果が出ないというケースも少なくありません。

このような方法を採ることによって、戦略との整合性、いわゆる「プロジェクトガバナンス」を強化していくことが求められます。

そのためには、

・(ミドル・シニア)マネジャーによる「適切な」戦略アラインメント
・(ミドル・シニア)マネジャーによる「適切な」プロジェクト管理
・プロジェクトマネジャーの経営や組織マネジメントに対するリテラシー

が不可欠なのです。

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