PMstyle 2025年9月~12月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

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2013年1月17日 (木)

【プロデューサーの本棚】イノベーションを実行する―挑戦的アイデアを実現するマネジメント

475712287Xビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル(吉田 利子訳)「イノベーションを実行する―挑戦的アイデアを実現するマネジメント」、エヌティティ出版(2012)


◆イノベーションのイメージと実態

イノベーションという言葉が頻繁に使われるようになって、どうもイメージに踊らされている感がある。その中で最たるものは、よいアイデアが出てきたらイノベーションは成功したも同然だというイメージだ。

このイメージは違うというのはちょっと考えれば分かる。たとえば、商品を考えてみよう。これまでになかった商品のアイデアが生まれた。この商品がイノベーションになるには、商品を作るための技術開発、生産方法、流通方法など、さまざまなハードルを越えなくてはならない。それらに比べると、商品自体のアイデアを作りだすのはそんなに難しいことではないかもしれない。

言い換えると、よいアイデアというのはイノベーションとして実現され、成功した素のアイデアであり、アイデア自体を絶対的に評価できるものではない。僕は一時、公的機関の目利きの仕事をしていたことがあるが、目利きというのはアイデア自体の評価ではなく、実現方法の評価に近い。

さらにいえば、イノベーションとして成功するには、生産能力が鍵になるかもしれないし、流通能力が鍵になるかもしれない。つまり、あるアイデアを実現できるかどうかが、その組織の基本能力に依存することはよくあることだ。たとえば、ホンダが1994年に、生活創造車という新しいコンセプトで、オデッセイという車を開発した。乗用車ベースのミニバンとして、セダン同等の運動性能を持ち、なおかつセダンよりも広い室内空間を売りにしていたが、ワンボックスカーと比べて特長的である車高の低い形状にしたのは生産ラインの制約があったからだという。オデッセイの場合、組織能力の制約がよい方に作用したわけだが、画期的な商品を開発できても生産できなければイノベーションは起こらない。

この本では、組織既存業務の遂行能力を「パフォーマンスエンジン」と呼んでいるが、パフォーマンスエンジンとどのような関係性を持つかは、イノベーションの成功に大きな影響を与える。

全く新しいコンセプトの商品を開発して、新しい工場とサプライチェーンを作り、新しい流通ネットワークを作っていくということが皆無ではないが、ベンチャーの初期を除けば極めて稀である。

その意味で、イノベーションを既存の事業と切り離して行えるというのは幻想である。この本では、イノベーションを組織の中でどのように行っていけばよいかについて、いくつかの成功事例を分析しながら、体系的にまとめている。

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2013年1月15日 (火)

【PMスタイル考】第60話:与党思考と野党思考

Yoto◆野党とは

選挙も終わりました。3年半の民主党政権で強く印象に残っているのは、最後まで野党だったってことです。消費税アップの決定とか、原発の稼働とか、国民に受けが悪いことをやるときには与党であることを強調していましたが、言動を見ていると最後(選挙戦)まで野党だったように思います。そして、これが国民から評価されるような成果が出せなかった理由ではないかと思います。

辞書を引くと、「野党」とは

政党政治において、政権を担当していない政党

とあります。

政党政治において、政権を担当している政党

とあります。

最近、大和ハウスのCMで、深津絵里さん(妻)とリリーフランキーさん(夫)の扮する夫婦の関係が、野党だ、与党だというCMがありますが、政治だけではなくこの言葉はいろいろな意味で使われています。その一つが、企業です。

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2012年12月20日 (木)

【PMスタイル考】第59話:組織力を高めるプロジェクトマネジメント

Sosiki◆組織力を高めるには

今回はちょっと重めのテーマです。「組織力」という言葉があります。組織力の定義というのは意外と少ないのですが、たとえば、慶応大学の清水勝彦先生は「組織の目的をより効果的、または効率的に達成する力」だと定義されています。そして、組織力を高めるとは「目的達成のためにそこに集まる個人の力を結集し、個人の力を総和以上の力を発揮すること」だと述べています。

ちょっと固苦しい定義だと思う人は、もっと単純に、個人が一生懸命仕事をしたときに、それが組織としては人数以上の成果になると考えてください。逆に、個人が一生懸命仕事をしているのに、組織としては成果が出ていないケースがあります。これは、組織力がない組織です。

では、組織力を高めるためには、何をすればいいのでしょうか?清水先生の定義に従うと、まず、組織の目的が共有されなくてはなりません。その上で個々人の役割が明確に認識され、その役割が果たされる必要があります。

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2012年12月11日 (火)

【PM養成マガジン10周年】これまでの活動報告とゴールへ向けて

SinkaPM養成マガジン10周年だった今年、いくつかの活動をしてきました。その中で力を入れたのが以下の2つの活動でした。

・10周年記念セミナー
・持論作成アクティビティ

両方とも終わり、活動としてもラストスパートに入りますので、このあたりで報告をしておきたいと思います。

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2012年11月30日 (金)

【PMスタイル考】第58話:イノベーションの視座

Life◆技術ライフサイクル

フューチャーセンターのムーブメントを見ていると、イノベーションの立ち位置がどんどん変わってきていることを実感させられます。

一昔前はイノベーションというと、技術イノベーションを意味していました。もちろん、今でも技術のイノベーションというのはあるわけですが、ビジネスチャンスとして注目されるのが技術のイノベーションからほかに移っています。

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2012年11月 9日 (金)

【PMスタイル考】第57話:感情労働としてのマネジメント

Emotion◆感情労働とは

感情労働が注目を浴びるようになってきました。「感情労働シンドローム」を書いたエッセイストの岸本裕紀子さんは、感情労働を

人を相手にしたシチュエーションで、業務上適切な感情を演出することが求められる仕事

だと定義されています。このような仕事では、気持ちの管理・抑制にポイントを置いた精神的な労働が求められます。感情労働に関する研究は、1970年代に米国で始まり、その対象になったのは、キャビンアテンダントでした。その後、看護師などに対象が広がりました。また、サービス業も感情労働の対象だと考えられるようになってきました。

このような定義をすると、多くの仕事は感情労働とみなすことができます。実際に、この本では、教師とか、営業、NPOなどの仕事を感情労働として、その特性を分析しています。

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2012年11月 5日 (月)

【コラム】ドライブには目的地と目的がある。プロジェクトにも、、、

Driveよくプロジェクトはドライブに例えられます。

目的地(ゴール)を決めて、目的地までの道順を決めて、その道順通りに目的地まで行くことに共通点があるからでしょう。そして、プロジェクトがドライブなら、ゴールまでの道順を決めて間違わないように行くのがプロジェクトマネジメントです。

ところが、ドライブは単に目的地にたどり着けばよいというものではありません。

ドライブには「目的」があるからです。たとえば、車の運転を楽しむこと、観光すること、荷物を運ぶこと、人を運ぶこと、行った先でのレジャーなどさまざまです。そして、目的によって、通る道も違えば、運転の仕方も違うのが普通です。

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2012年10月23日 (火)

【PMスタイル考】第56話:コントロールを手放す

◆オープンリーダーシップとは

Open_leadership周囲にもfacebookを使う人が増えてきて、ソーシャルネットワーク花盛りという感じですが、ソーシャルネットワーク時代に注目されているリーダーシップに「オープンリーダーシップ」があります。

オープンリーダーシップという概念そのものは、そんなに新しいものではないと思われます。リーダーシップの原典の一つであるマクレガーのいうY理論「人間は本来進んで働きたがる生き物で、自己実現のために自ら行動し、進んで問題解決をする」にきわめて近いものです。

もう少し正確にいえば、現実の世界では、「人間は本来なまけたがる生き物で、責任をとりたがらず、放っておくと仕事をしなくなる」というX理論とY理論をケースバイケースで使い分けています。ところが、インターネットやソーシャルネットワークの発達でX理論による統制はだんだん難しくなってきており、Y理論が常に求められるような世界になっています。このような世界に求められるリーダーシップを、改めてシャーリーン・リーが「オープンリーダーシップ」と呼んだのが注目されるようになったようです。

その意味で、オープンリーダーシップはY理論に基づくリーダーシップの再定義であるといえます。

さて、シャーリーン・リーはオープンリーダーシップを以下のように定義しています。

「オープンリーダーシップとは、謙虚に、かつ自信を持ってコントロールを手放すと同時に、相手から献身と責任感を引き出す能力を持つリーダーのあり方」

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2012年10月 9日 (火)

【PMスタイル考】第55話:スタイルについて考える

Style1◆プロジェクトマネジメントとスキル

PMスタイルは、プロジェクトマネジメントのスタイルという意味です。プロジェクトマネジメントと一般的なマネジメントの違いの一つは、プロジェクトマネジメントはかなり体系的に手法が確立されている点です。

現代のプロジェクトマネジメント(モダンプロジェクトマネジメント)が拠り所にしているのは、オペレーションズリサーチです。オペレーションズリサーチは、数学的・統計的モデル、アルゴリズムの利用などによって、さまざまな計画に際して最も効率的になるよう決定する科学的技法です。たとえば、スケジュール作成で使われているPERT手法はオペレーションズリサーチの代表的な手法です。

PMBOK(R)のツールと技法を見てみると、このようなOR手法が多く取り入れられており、それらの手法を使ったマネジメントプロセスを体系化し、プロジェクトマネジメントの体系としています。

このような背景があり、プロジェクトマネジメントは、一連のプロセス、あるいは、スキルの集合体のようなイメージを持つ人が多いようです。まず、この点について考えてみましょう。

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2012年9月25日 (火)

【PMスタイル考】第54話:フューチャーセンターとプロジェクト

◆さまざまな対話手法
Mirai1
「フューチャーセンター」なるものがブームになりつつあります。

この5年くらいで見ると、ファシリテーションのブームで対話に対する関心が高まり、より大規模な対話をしたいというニーズが強くなり、ホールシステムアプローチが注目されるようになりました。ホールシステムアプローチの代表はワールドカフェで、そのほかにもオープンスペーステクノロジー(OST)、AI、フューチャーサーチなど、続々と新しい手法が活用されるようになってきました。

これらの手法が組織開発を主たる目的にしているのに対して、イノベーションを目的とする対話手法も登場してきました。それが、フューチャーセンターです。

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