◆演繹と帰納という論理の構造
ロジカルシンキングの基本になるのは論理である。まず、論理の基本を思い出しておこう。中学校で習った話である。
論理的に正しいことを主張する方法として、論理の「基本構造」を発見したのはアリストテレスである。アリストテレスは、論理的に正しい主張をするための方法として、演繹(deduce)と帰納(induce)の2つがあることを示した。演繹は、
演繹:正しい「前提」から「推論」して正しい結論を導く方法
である。帰納は
帰納:「複数の事象」から「結論」を導く方法
である。違う言い方をすれば、
演繹:「一般」から「個別」へ
帰納:「個別」から「一般」へ
という構造を持っている。
アリストテレスが演繹の証明の例にあげたのは「ソクラテスは死ぬ」という命題(メッセージ)だった。ここではよく知られているようにアリストテレスは
人は死ぬ(一般論)→ソクラテスは人間である→ソクラテスは死ぬ(個別論)
という演繹構造により承継した。この構造は、前提が
人は死ぬ(大前提)→ソクラテスは人間である(小前提)→ソクラテスは死ぬ(結論)
という構造になっている。
これに対して、帰納にも構造がある。個別論から、法則を導く構造だ。たとえば、
ギリシア人はみんな死んでいる/ローマ人もみんな死んでいる/カルタゴ人もみんな
死んでいる(個別論)
→人は死ぬ(一般論)
という帰納構造で、共通項を取り出すと、再現性が高く、法則化できる。帰納とは言い換えると、この法則化のプロセスのことである。
論理的に正しいことを言おうとすれば、演繹か、帰納を構成する必要がある。