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2007年12月31日 (月)

「品格」ブームについて考える

◆「品格」ブーム

2005年に出版された藤原正彦さんの「国家の品格」がベストセラーになって以来、「品格」がブームになっている。

4106101416_3 藤原 正彦「国家の品格」、新潮新書(2005)

その中で、昨年から今年にかけては、坂東 眞理子さんの「女性の品格」が大ベストセラーになっている。

4569657052_3 4569697070_3 坂東 眞理子「女性の品格」、PHP新書(2006)

坂東さんは、今年、新たに

坂東 眞理子「親の品格」、PHP新書(2007)

という本を出された。本屋さんで平積みされているところを見ると、減っており、こちらも順調に売れているようだ。

また、2006年には、川北 義則さんが、坂東さんより一歩早く、

4569652115_2 4478001383_2 川北義則「男の品格―気高く、そして潔く」、PHP研究所(2006)

を出版されており、これもかなり売れたらしい。この本が坂東さんの大ベストセラーを生み出したともいえるかもしれない。ちなみに、坂東さんの「親の品格」に先立つ形で、

川北 義則「父親の品格」、ダイヤモンド社(2007)

という本も出版されている。僕は「男の品格」よりこの本の方が良いと思うのだが、あまり、売れていないようだ。

さらに今年は、ビジネスの分野での品格論が出てきた。

4344980530 小笹 芳央「会社の品格」、幻冬舎新書(2007)

4569692346 4569668313 皆木 和義「企業の品格」、PHP研究所(2007)

B000piszrm 今泉 正顕「上司の品格―人の上に立つ者の心得」、PHP文庫(2007)

ハケンの品格(2007) 

などがある。

そもそも、品とはなんだろうか?広辞苑によると

 人や物にそなわる(好ましい)様子、風格、くらい、人がら

とある。したがって、これらの本はそれぞれの著者の考える好ましいあり方を示したものということになるのだろう。

たとえば、川北義則さんは「男の品格」の中で

品格とは何か? 美学である。
美学とは何か? やせ我慢である。
やせ我慢とは何か? 遊び心、ゆとり心である。

と展開している。つまり、遊び心、ゆとり心だと言っているわけだ。この言葉で思い出すのは、柳沢きみおの大市民。

4063530280 柳沢きみお「大市民」、双葉社(1992) 

◆品格=コンピテンシー?

僕はさまざまなビジネス分野でのコンピテンシーマネジメントの仕事を手掛けているので、代表的な品格本はおおよそ読んでいる。その限りでは、品格という議論はコンピテンシーの議論である。

では、コンピテンシーではなく、何ゆえに品格なのか?品格の持つ言霊だと思われる。

問題はどんな言霊かだ。今年は政治の世界もいろいろなことがあったが、ここにきて、小泉政権のときの市場原理資本主義推進が一挙に締め出されるような気配が出てきた。なぜか?もともと、竹中平蔵大臣の弁舌に納得しながらも、釈然としない人が多かった。この根源にあるのが品格ではないかと思う。つまり、多くの人は米国型の市場原理資本主義は品がないと感じていたのではないかと思う。これに比べると欧州型の資本主義は品があると感じる人が多かったのではないだろうか。

このように書くと、規制型資本主義を肯定しているように取れれかねないが、日本の規制というのはもともと、品格として事業家のイメージにあったものを徹底するために法制化していただけだ。その後、官僚の逆機能があって、今のような本末転倒になっているだけである。その意味では現在の規制資本主義を肯定しているわけではない。欧州型の資本主義が日本人の感覚にあうのは、さまざまな意味での共生の思想があることだと思う。

つまり、日本人は「品」の言霊、つまり、「好ましさ」として共生というのが強いように感じる。

◆なぜ、今、品格なのか?

これが、なぜ今品格なのか?ということの答えではないだろうか?多くの人がグローバル化の中で、生活、仕事、人生などさまざまな場面での価値観(アイデンティティ)喪失の危機を感じているのではないだろうか?品格という言葉に託して、抵抗しているように思える。

最近、日本人というのは品格が大切だなと思う出来事があった。あるダイバーシティマネジメントの専門とする組織コンサルタントと話をする機会があった。いろいろとよいことを言われているのだが、最後に出てきた言葉は

「日本人も変わらなくては」

なのだ。

「日本人は日本人のやり方がある。ダイバーシティマネジメントを推進するのに、それを否定してかかるというのはナンセンスだ」

といったら、怒り出してしまった。これでは、米国流市場絶対主義資本主義を押し付けているのとなんら変わらない。ダイバーシティマネジメントは、多様性を認めないという個性があることを理解し、認めない限り絶対に進まない。今、ダイバーシティを推進しようとしている企業の共通の悩みだ。ダイバーシティがユニバーサルな概念だと思うのは勘違いであり、ある意味で傲慢だ。人を否定するようなダイバーシティなどあり得ない。

このような状況で真っ先に頭に浮かぶのが品格という言葉なのだではないだろうか?

この問題は来年も考えてみたい。

この記事で、2007年の投稿は終わりです。本年、本当にたくさんの方にお読みいただき、感謝の念に堪えません。ありがとうございました。

来年もよろしくお願いいたします。

2007年12月30日 (日)

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