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2019年12月 2日 (月)

問題の定義から解決方法まですべてが分かる一冊

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永井 恒男、齋藤 健太「会社の問題発見、課題設定、問題解決」、クロスメディア・パブリッシング(インプレス)(2019)
 
 
 
お薦め度:★★★★1/2
 
 
 
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パーパスマネジメントで知られるIdeal Leaders社の代表取締役の永井恒男さんと、データ分析のプロであるクロスメディア・コンサルティング社の齋藤健太さんの共著。構成的には前半が永井さんによる将来像(ビジョン)を掲げることの重要性とその構築方法を示し、後半ではそれを実行するためのデータ分析や実行計画のつくり方や実行方法を示している。つまり、問題の定義から問題解決について解説する一冊になっている。
 
本書では、問題発見から解決に至るスタイルを
 
・ビジョンアプローチ
・ギャップアプローチ
 
に分け、それをベースにした議論をしている。
 
ビジョンアプローチは、理想とする将来像を描き、それの実現に向けてメンバーが主体的に前向きに推進するスタイル。これに対して、ギャップアプローチは、定量的な目標を設定し、メンバーをプレッシャーによって駆り立てていくスタイル。
 
両者では発想法が異なる。ビジョンアプローチは未来のビジョンを考えてから、5年後はどうなっているのか、3年後はどうなっている、1年後はどうなっているのかと逆算していくことにより、高い目標を設定して、それを実現していこうとする。具体的な例としてかなりのスペースを割いて、ソフトバンク、パナソニック、サイボウズ、太陽ホールディングスなどの例を紹介している。
 
これに対して、ギャップアプローチは、多くの企業が取り入れている目標管理システムを取り上げ月々の目標の達成が仕事における大きな関心事になり、目標への到達度合を気にしながら進めていくアプローチだ。
 

本書では、ビジョンアプローチを好意的に捉え、ギャップアプローチは一種の必要悪のようなスタンスで見ている。執筆分担をしているので多少表現が厳しくなっているが、このスタンス自体はよくある。本書が興味深いのは、その関係づけで、両方とも不可欠だとしている点だ。
 
ギャップアプローチにおいては、ビジョンアプローチにより目指すべきゴールである「理想の姿」を起点とするとし、従来のギャップアプローチのように現状を起点としたアプローチとは異なるとしている。つまり、積み上げ方式ではなく、あくまでも理想の姿を実現するための目標やアクションプランを作るのがギャップアプローチだとしているのだ。
 
そしてアクションを実行するためにPDCAサイクルを回していくが、振返りでは定量的な分析ではなく、定性的な分析もすべきだとしているのだ。説明も事例を使って詳しい方法を具体的に説明しており、非常に分かりやすかった。これも非常に興味深い。
 
問題解決的に言い換えると、この本で述べているアプローチは、問題発見から始まるというより、ビジョンの策定により、問題の創造から始まっている。その背景になるのがその組織のパーパス、つまり、存在意義である。
 
パーパスを決め。パーパスに知らしてビジョンを創り、そのビジョンを達成するために解決すべき問題ができる。その問題がギャップとなり、解決すべき問題となるのだ。
 
本書でもう少し、突き詰めてほしいのは、後半の問題発見、問題解決の中で使われている目的という言葉の概念と、前半の将来像を描く中で使われているパーパスという概念の関係である。パーパスは目的というよりは存在意義だというのが通説になっているが、そもそも目的とは何かという議論があまり明確になっていない。一冊の本の中で、こういう使い分けをされると気になってしまう。
 
あるいは、目的とビジョンの関係かもしれない。ここが接点になって、定量的アプローチと定性的アプローチをハイブリッドに行うことができるのだと推測される。
 
ここを詰めていくともっと素晴らしい本になるだろう。
 
なお、パーパスマネジメントについては、Ideal Leaders社の丹羽 真理さんの著書
 
「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング、2018)
 
が参考になる。また、データ分析については、井上さん自身が別途執筆されている
 
「新装版 問題解決のためのデータ分析」
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4295402702/opc-22/ref=nosim
が参考になる。
 

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