生産性を上げ、目覚ましい成果を得るシンプルな方法
ゲアリー・ケラー、ジェイ・パパザン(門田 美鈴訳)「ワン・シング 一点集中がもたらす驚きの効果」、SBクリエイティブ(2014)
お奨め度:★★★★★+α
バランスを取らずに、一点集中を行うことのご利益と、一点集中の方法について述べた一冊。
個人の仕事の方法にも、チーム(組織)としての仕事のやり方にも通用する方法であり、読んでいる限り、バックボーンとなるロジックがあり、「私はこういうやり方でうまく行っています」式の啓蒙書とは一味違う良書。
この本でいっているワン・シングはシンプルである。すべての仕事に優先順位をつけ、すべきことを絞る。そこで残った仕事にさらに優先順位をつけ、一つになるまで絞り込む。そして、その仕事を実施する。
すると何が起こるか。ドミノのメタファで説明している。ドミノのように最初の駒(仕事)を倒せば、連鎖的にすべてが倒れる。
では、ドミノ効果を実現するのにはどうすればよいか。この本のテーマはこれだ。
まず、前半はなぜ、複数の仕事をやろうとするのかについて考察している。それは6つの嘘に騙されているからだという。6つの嘘とは
(1)すべてのことは等しく重要
(2)マルチタスクは効率的
(3)規律正しい生活が必要
(4)意志の力は常に万全
(5)バランスのとれた生活が肝心
(6)大きいことは悪いこと
の6つだ。この中でなるほどと思ったのは、(3)と(6)。生産性を上げるためには、規律が重要だと言われるが、実際には規律だけで常に動いているわけではなく、途中で習慣に変わる。つまり、規律が習慣に変わるまでの間、規律があればよいという。目からウロコだ。
ま た、(6)は物事を大きく考えずに、地道にやるのが成功につながると言われるが、これは嘘だという指摘。ハリーポッターを書いたJ.K.ローリングは、最 初に全体の詳細な構想を作り、そして全7冊の第1巻の1章から書き始めたという。このように、目標よりはるかに大きな目標をたて、どうすればできるかを考 えることによって最初の目標を確実にできるようになる。
次に、このような嘘に騙される、確実に1つを絞り込む方法について述べている。方法は至ってシンプルで
・的をしぼりこむ質問をする
・優れた答えを見つける
の2つである。質問は
要素1「それをすることで」
要素2「他のすべてがもっと容易になるか、不要になるような」
要素3「私ができる「ひとつのこと」は何か」
の3つである。優れた答えを見つけるには
・すぐにできるもの
・背伸びしなければできないもの
・可能性があるもの
の3つの答えのレベルの中で、すぐにできるものにはないことを心得ておくとよい。つまり、自己変革が必要だったり、新しい行動が求められたりするものだ。
このようにして得られた答えで、素晴らしい成果を得るためには3つの要素を考える必要がある。
目的、優先事項、生産性
の3つだ。生産性の高い人は、まず目的を持ち、それを羅針盤として使う。そして、目的を優先事項を決める指針にする。この3つを関係づけて考えることによって目覚ましい効果を上げることができる。
そのためには3つの誓いが必要である。それは
(1)熟達を目指すこと
(2)目的に即した方法を追求すること
(3)一つを成し遂げるために必要なことに全力を尽くすこと
の3つである。
この本で提案していることは、戦略的行動そのものであり、それは個人の生産性を上げると同時に、組織にとって大きな成果をもたらす。
このような考え方の背景にはシステム理論がある。つまり、全体はシステムで連動しており、レバレッジを探してそこに集中して働きかけることで、合理的に全体を動かすことができるという発想である。
このように本書で述べられていることはバックグランドがあることだが、見せ方が分かりやすく、実践しやすい。その意味で、まず、この本のやり方をマスターすれば、いろいろな活動に応用が効くだろう。
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