歴史から経済の本質を理解する
茂木 誠「経済は世界史から学べ!」、ダイヤモンド社(2013)
お奨め度:★★★★
今起こっている経済的問題を、歴史をひも解き、類似の事例や根源になるものを紹介することにより、本質を理解するとともに、経済学についての教養も身につく一冊。
問題の本質を見極め、それについて易しく、薀蓄を交えて解説するという手法では池上彰さんが有名だが、比較してもこの本は結構いい線をいっているように思う。
長い間、ビジネスをやっているとこの本で経済的な問題として取り上げられていることは一応、理解している。その意味でこの本の対象読者の範囲外なのだが、読んでみると意外と面白かった。史実に知らないことがたくさんあってそれ自体が興味深いものが多かったからだ。
ということは、おそらく、経済問題に疎い人には、経済学の勉強になるとともに、史実の薀蓄が読めて一冊で二度おいしい本ということになる。
取り挙げているのは
・そもそも、お金とは何かといった話
・国際経済と通貨の話
・自由貿易の話
・金融の話
・財政の話
であるが、中でも金融の章が面白かった。歴史的に金融業とはどのような目的で、どのように生まれたのかから始まり、バブルの歴史(これは何冊か本を読んだことがある)や日本のバブルの崩壊、リーマンショックの勃発などについて説明している。
物事の本質を見るのに、歴史を手繰るというのは有力な方法である。たとえば、今、起こっているTPPという問題をどう解釈するかは、具体的にどのような問題が生じるかという視点と同時に、本質的にどのような意味があるかをしっかりと考えないことには答えがでない。
こ の本では、19世紀のイギリスがナポレオンが敗北後に穀物令という輸入制限法を作り、国内の地主を保護したために飢饉により餓死が起こるという事件があっ たことを取り上げている。そして、政権はついに穀物令を廃止するという流れがあるそうだが、この史実は何を意味しているか。そして、我々はここから何を学 ぶべきかといったことが解説されている。
考える習慣を身につけるにも役立つよい本である。
コメント