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2013年9月16日 (月)

自分で考える作法

4534050909狩野 みき「世界のエリートが学んできた 「自分で考える力」の授業」、日本実業出版社(2013)

お奨め度:★★★★★

大学で英語教育に携わる一方で、グローバルレベルの考える力、プレゼン力、作文力を身につけるスクール「Wonderful Kids」を主宰し、最近では、TED×Tokyoでプレゼンテーションを行い、注目されている狩野みゆきさんが、ハーバードが提唱する「考え方のツボ」をメソッド化した本。

キャリアの浅いビジネスパースンはもちろんだが、それなりのキャリアで考えながら仕事をできると思っている人にもお奨めの1冊。

日本のビジネスパースンは自分で考える力が弱いとよく言われるが、考えるというのがどういうことかすらよく理解していない人が少なくない。考えるためのフ レームワークをいくつか知っていている人は多いと思うが、考えることって具体的に何をすることですかと聞かれると、おそらく多くの人は答えに窮するのでは ないかと思う。

この本で紹介されているハーバードの「考え方のツボ」の特徴は、まず、この点にある。考えるとはどういうことかを体系的に、かつ、シンプルに教えてくれる。本書では、考えることを4つにして説明している。

(1)「自分の意見」を作る
(2)理解を深める
(3)視点を増やして発想を広げる
(4)未来のシナリオで現実的な選択肢を手に入れる

それぞれについて、教室での光景でイメージを作り、解説やTipsを示した上で、エクスサイズをするという構成になっている。

自分の意見を作る方法はシンプルですぐに実践できる。

ステップ1:<あることに>ついて自分はどれだけ理解しているかを確認する
ステップ2:<あることに>ついて理解できていないことを調べる
ステップ3:<あること>について自分の意見を持つ

の3ステップ。このステップを踏むと想定外の事態にも対応できる。あることは想定していようと想定していまいと関係ないからだ。想定していないことは理解てきていないことが多くなる。

次は理解を深めること。これは自分の意見を作る3ステップの応用になっており、4つのステップを踏めばいいとしている。

1.情報を本当に理解できているかどうかをチェックする
2.理解できていないことは何か、きちんと挙げてみる
3.「理解できていないこと」をなくすための、効果的な質問を考える
4.実際に質問するクセをつける

さらに、1.のチェックとして、以下のような方法(Tips)を進めている。

(1)5歳児に説明するつもりで話してみる
(2)カタカナ語を掘り下げる
(3)英語に訳してみる
(4)理解できていないことを知るための理解度チェックシートを使う
(5)5W1Hでツッコミを入れる
(6)「信号色のマーカー」で吟味する
(7)急に意見を求められたらよい質問をする

また、理解のさまたげになっているのが、事実と意見の混同であることを指摘し、区別の方法を示している。

三番目は視点を増やして発想を広げる方法。このために、4つの方法を示している。

(1)「スルーできない人」になりきって考える
(2)部外者の視点で違った角度の見え方を手にいれる
(3)一人弁証法
(4)ツッコミリスト

いずれも本の中ではすぐに使えるレベルまで具体的に説明している。

最後は未来視点。これについては、先の予測をする4つの手順を示している。それは

(1)「現実のものになったら何が起こるか」シナリオを作る
(2)シナリオに対して、「手を打つべきことはないか」を考える
(3)その行動が実行可能かどうかを考える
(4)その行動は今しておく必要があるかどうかを考える

の4ステップである。

以上に基づいて、この本のエッセンスを集めた意思決定の方法を紹介している。それは、以下のようなものである。

(1)決断しかねている行動を肯定文で書く
(2)なぜ、その行動を起こしたいのか、目的を明確にする
(3)その目的を達成するためにはどういう方法があるかを書きだす
(4)それぞれの手段がもたらし得る未来を予測し、シナリオを書く
(5)「ポリシーにあわない」、「非現実的なもの」を除く

これらを一通り説明したあとで、最後に上手に意見交換をするために欧米人が持っているルールを紹介している。

最初にも述べたが、書かれていることが非常にシンプルで、実践しやすい。ただ、ここに書かれていることが本当にできるには練習が要る。仕事や生活の中で意識して繰り返していくと、だんだんうまくできるようになるという類のものだろう。

そう考えると、内容がシンプルであることは自然にできるということでもあるので、とてもよい方法だと思う。まずは、自分の意見を持つことから始めてみてはどうだろうか。

考 えることができるようになるために僕がもっとも重要だと思っていることは、この本でも触れられているが、理解したつもりにならないことだ。この本を読んで もそんなことは分かっていると思う人がいると思うが、それはおそらく勘違いだ。考えることを仕事にしている僕でも学ぶことがたくさんあったからだ。謙虚さ を持って読んで欲しい。

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