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2013年6月16日 (日)

覚悟を磨く176の教え

4861139929 池田貴将「覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰 (Sanctuary books)」、サンクチュアリ出版(2013)

お奨め度:★★★★★

明治維新に大きな影響を与えた天才思想家・吉田松陰の教えに素晴らしい解釈をつけて紹介した一冊。非常にインパクトがある教えばかりで心を打たれる。また、各章の最初にある松陰からの学びも深い。

松陰の教えは以下の6つに整理されている。

Mind(心)
Leadership(士)
Vision(志)
Wisdom(知)
Fellow(友)
Spirit(死)

これらについて、松陰からの学びといいなと思った教えを紹介していこう。

ま ず、マインド。ここでは、「動きながら準備をする」ことを学びとしている。折しも今、「いつやるか? 今でしょ!」という予備校の先生の言葉が流行語になっているが、これだ。人は準備をしてからやろうと考えがちであるが、それではいつまでもできないという のが松陰からの学びなのだ。

マインドでは41の教えが紹介されているが、中でもいい言葉だと思ったのはこれ。「失敗の定義は無数」

すぐに成功だとか失敗だとかいう。成功したことは明確に分かるが、失敗したことははっきりと分からないことが多い。慌てず、失敗の本質を見極め、対処に動けというのは素晴らしい示唆。

次はリーダーシップ。この点での学びは「無駄と削ぎ落とす」こと。無駄を削ぎ落とし、精神を研ぎ澄ます。そして、目の前の安心よりも、正しいと思う困難を取る。これがリーダーのあるべき姿だ。士の発想だ。

ここでいいなと思ったのはこれ。先駆者の思想で「なにが得られるかは後」で、「自分たちがやる意味が先」だと言う指摘。いま、イノベーションが必要とされながら、なかなか実際には動けない。その原因がここにある。維新のためには、ここはこの発想が欠かせない。

もう一つは、「使える部下がいないというのは勘違い」で、部下の能力が引き出せていないだけだという教え。

三つ目はビジョン、志。志は、今のシステム、考え方、ルールを否定する。そういうものを飛び越えないと実現しないものに目を向けるという学び。

ここでは35の教えが紹介されているが、役割が人を作るという教え。よく言われている地位が人を作るような話ではない。何がおきても自分の仕事に責任を持つ。逃げない。その仕事をすることが自分の生物としての役割だと考えられたときに命が宿るという教え。

四つ目はウィズダム、知。松陰からの学びは、知とは知識を増やすことではなく、志のために、行動することで、それが学問の理解だという。そして、行動力の源泉は負けん気だという。

こ こでは28の教えが紹介されているが、「勝つ人と勝ち続ける人」という教え。個人での学習、組織での学習、いろいろと学ぶことが重視されているが、その理 由は、勝つことではなく、勝ち続けることだろう。そのためには、勘や経験に頼らず、本質を学び続けることを怠ってはならないと教える。

では、本質とは何か。松陰は、語らずともそれに触れただけで、分かってしまうもの。シンプルで、分かりやすく、身近なものとして感じられるものだという。

五つ目はフェロー、友。ここでの学びは、まず、自ら熱くなり、自分から動きだすこと。そこに友が現れる。そうして、維新は実現された。

ここでは22の教えが紹介されている。この中で、集団で生きることは、清廉と協調のバランスをとることだと教える。清廉はどんな人といても、自分を失わないことであり、協調はどんな人といても、その人に調子を合わせて楽しめることである。

最後はスピリット、死。死を意識することは、わずかな残り時間で何ができるかを考えることに似ているという。そして、やり残していることを臆せずにやればよいと教える。

ここでの教えは11。ここでの教えの中で印象的なのは、「自分はどこからやってきたのか」という教え。自分の原点を考えているうちに、感激の心が起こり、よしやってやろうと決意するという。

吉 田松陰は僕の出身地である山口県の萩の出身である。山口では吉田松陰については詳しく学ぶ機会がある。なんとなく、吉田松陰に持っていたイメージと、この 本で描かれているイメージはよく合っている。松陰は30歳で生を絶たれる。その短い人生において、語られる数々のエピソードは常に生死を賭けたものであ り、まさに覚悟を決めた生き方であったのだろう。そして、その覚悟が明治以降の国家に大きな影響を与えた人材を輩出した。

このような人物とビジネスの世界で考えると、真っ先に思い浮かぶのがジャック・ウェルチである。ウェルチにはリーダーシップのよる薫陶で多くの人材を生み出したとされるが、リーダーシップだけではなく、覚悟があったのだと思う。

日本にはどの分野でも人材が生まれなくなっているという指摘がある。それは人材を育てる人の覚悟の問題だろう。

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