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2012年11月18日 (日)

リーダーとしての「あり方」を問う

4532171164池井戸 潤「七つの会議」、日本経済新聞出版社(2012)

お奨め度:★★★★1/2

パナソニックだと思われる企業ソニック社と、そのグループ会社である中堅メーカー「東京建電」を舞台にし、組織で働くというのはどういうことかを描いた小説。


話はトップセールスマンだったエリート課長・坂戸を歳上の万年係長・八角が“パワハラ"で社内委員会に訴えたところから始まる。



その背後には、大きな闇があった。坂戸は厳しいのノルマの中、自らの業績を上げるためのコストカット手段として強度の不足しているネジの調達に手を染める。このネジは、航空機や鉄道車両の座席や、家具などに使われている。その不正に気付いた八角が止めさせるためにパワハラで訴えたのだ。

この不正を指示したのは、実は社長だったのだが、社内でも気づく人間が出てくる。リコールをしなくては、とんでもない事故が起こる可能性もあるという訴えが社長まで行ったときに、社長の判断は、リコールではなく、内々の対応だった。

やがてその中の一人が内部告発をし、不正は世間の知れ渡るところとなる。そして、問題は「東京建電」内では納まらず、親会社であるソニックまでいく。ソニックでは、調査をし、リコールした場合の影響を見積もったところ、1500億という見積もりになる。ソニックの担当役員は、リコールはしないという判断をし、「東京建電」から当該事業以外を行う新会社を設立、「東京建電」は問題処理の会社となる。

実は、「東京建電」が品質の粉飾をしたのはこれが初めてではなかった。かつて列車座席の品質をごまかし、受注。「東京建電」の成長をもたらした事業になった。そのときに、担当が当時出向していた本件の担当役員だったのだ。

池井戸 潤の代表作の一つに「空飛ぶタイヤ」があるが、同じような問題が描かれている。品質をごまかすという問題はコスト、業績などの視点から禁断の果実なのだ。これだけ大掛かりではないにしろ、コンプライアンス意識の高まるなか、この問題はいまだに新しい問題である。

この小説では、そのような社会的な側面に加えて、それに関わる人たちの人生を描いている。

坂戸は自分の業績のために不正に手を染め、危うく個人責任を負わされそうになるわけだが、その背景には兄弟同士の意地の張り合いという人間模様があった。などなど、詳しくは読んでのお楽しみだが、何のために不正をしてまで会社で働いているのか、改めて考えさせられる小説だ。

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