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2012年2月23日 (木)

量の経営から質の経営へ(ファンが選ぶビジネス書2012-3)

415209267Xジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン(黒沢 健二、松永 肇一、美谷 広海、祐佳 ヤング)「小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則」、早川書房(2012)

お奨め度:★★★★★

facebook記事:リワークする

SOHO向けのソフトウエア開発企業として世界的に有名な「37シグナルズ」の創業者ジェイソン・フリードと共同経営者のデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソンが自らの企業のポリティーをまとめた一冊。会社は大きい方がよいという前提を捨て、どうすればやりがいのある仕事をしながら収益を上げることができるかをメインテーマにしている。



一般的に経営の前提は、企業にはスケールメリットがあり、大きくなれば「何かいいことがある」というものだ。しかし、今の先進国のように社会が成熟し、多様性が増してくると、「何かいいこと」があるとは限らない。

そこで、企業の取る戦略は2つある。一つは、新興国で従来のビジネスモデルを展開してあくまでも企業の規模を追求していくこと、もう一つは規模の追求をやめることだ。37シグナルズは後者の戦略で成功して代表的な企業である。

今、ビジネスにおいて常識だと思われていることは、規模を追求することをやめると大きく変わってくる。もっとも本質的な話は、自分たちが売るべきだと思っているものを売ることができることだ。つまり、質の経営ができる。量を求めて、微妙なラインナップを増やしたり、宣伝や広告にコストをかけたりする必要がない。今の事業を行うために必要な人がいればいい。ワークホリックになる必要もない。起業家としてベンチャーキャピタルから金を借り、不本意な事業を行う必要もない。

だが、社会にはなにか貢献したい。そのためには、自分の必要なものを作ることだ。37シグナルズの最初のソフトウエアである「ベースキャンプ」は、自分たちが始めたデザインのコンサルティングの中で、適したプロジェクト管理のソフトウエアがないから作ったものだ。そして、それを販売した。販売する中で、さまざまなソフトウエアがあればいいと思った。それを開発し、商品ラインナップに加えていった。そうして、37シグナルズは成長していった。

重要なことは作り始めることだ。イーベイをみて、同じことを考えていたんだけどなあという人はたくさんいる。だけど、考えることと実行することは全く違う。

そうしてビジネスを始めるときに重要なことは、「視点」を持つことだ。視点とは、なぜそれを行っているのか、何を信じているのかということだ。製品やサービスではない。視点を持ってビジネスをすれば、必要なものがそんなに多くない。人、モノ、カネはすべて、製品やサービスの拡張に付随するからだ。視点を持ち、じっくりを取り組んでいけばよい。

そのためには、身軽でいることが大切だ。長期契約、過剰人員、会議、在庫、長期ロードマップなどを持ってしまうと身軽さが失われる。

身軽さを持ちながら、商品を展開していくにあたっては、制約を受け入れ、制約の中で自分たちができることは何かをしっかりと考える必要がある。その方向性は、中途半端な一つの製品よりは、よくできた半分の製品にすることだ。そのためには、キュレーターになり、何を取り除くかを意識することが必要である。

同時に、芯が必要である。芯を見つけるには、新しいものではなく、変わらないものに注意を向けることが大切だ。

製品をつくり、ビジネスを進めていくには、生産性が問題になる。もっとも生産性を害するのは、やらなくてよいことをやっていることだ。つまり、生産性を上げるには、やめるべきことを探す。そのために、自分にこんな問いかけをしてみよう。

・なぜ、行うのか
・どんな問題を解決するのか
・これは本当に役に立つのか
・何か価値を加えているか
・それは行動を変えるのか
・もっと簡単な方法をないか
・代わりに何をすることができるのか
・本当に価値があるのか

他の何よりも生産性を邪魔するのは会議である。会議は極力、行わない。どうしても、行わざるをえない場合には、会議の生産性を上げる工夫が必要だ。また、会議で話しあわれる問題解決の方法については、そこそこのものでよい。極めようなどと思わないことだ。むしろ、柔道のように最小の力で最大の効果を求めることが望ましい。

そのためには、小さな勝利を手にいれ、モチベーションを高めていくことが重要である。

ビジネスの中で競合の存在は無視できないものだが、大いに影響を受けるとよい。ただし、模倣してはならない。もし、競合が最低だと思ったらそのように言おう。それによって、あなたに同意する人が集まってくる。ダンキンドーナッツ、アップル、アウディ、セブンナップなど、みんなそういう戦略をとっている。

ただし、競合に必要以上に関心を寄せる必要はない。その代わりに、自分自身に焦点を当てるのがよい。

製品やビジネスを進化させるには、ノーということが大切だ。特に顧客との関係で、ノーということは大切だ。顧客との関係においては、顧客を成長させるより、自分を成長させよう。顧客よりは、顧客になっていない企業の方が圧倒的に多い。特定の顧客にノーを言わないことは、顧客になっていない企業を排除していることになる。

プロモーションにおいては、無名であることを受け入れることから始めなくてはならない。そして、顧客を作るのではなく、観客を作ることが大切だ。観客は、自分たちの活動に関心を持ち、常に注意を向けてくれる人たちである。

観客を増やすには、料理人を見習うのがよい。彼らは料理本ですべてをさらけ出している。しかし、本当のところ、他が模倣をできない。また、舞台裏を見せることも効果的である。

そのようにビジネスが大きくなってくると、人を雇う必要がある。ここが分岐点になる。人は限界まで雇わない。自分自身でできる限りやる。これには意味がある。自分が経験をした業務のための人を雇うときに、どのような人がよいかがはっきりと分かるからだ。

人を雇うときには、履歴書も経験年数も学歴も意味がないと思うとよい。雇った人は自分で働いてくれなくてはならない。そのためには、自分マネジャーであることが重要だ。

人が増えると不祥事が起こる可能性が増える。ダメージを受けたときに、いかにコントロールをするかが大切だ。ダメージコントロールでは、スピードがすべてを変えると思うべきだ。

このように、会社を大きくするという前提を外してしまうと、いま、多くの企業で行われているマネジメントとはまったく異質のマネジメントが必要になる。多くのマネジメントの方向性を見ていると、チームマネジメントのように見えるかもしれない。確かに、一部はチームのマネジメントであるが、それだけではなく、行っていることは経営である。

つまり、量を追求せず、質を追求するマネジメントの形がこの本にある。その意味で、リワークが必要である。

 

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